EXILE、前進の姿勢を体現するダイナミックな『PARADOX』 TAKAHIROの繊細なカバーにも注目
さらに3曲目には、EXILE加入から15周年を迎えるTAKAHIROが継続してEXILEのカバー音源をリリースするシリーズ<EXILE RESPECT>から「Lovers Again」を収録。同曲は2007年1月にシングルとして発売され、TAKAHIROがグループへの加入を決めたEXILE新ボーカルオーディション『EXILE VOCAL BATTLE AUDITION 2006 ~ASIAN DREAM~』2次審査の課題曲だったことでも知られている。
カバーシリーズとしては3作目となるが、今回も原曲を現代的に洗練させたアレンジにまず惹きつけられる。原曲において特徴的だったハープの音色による切ないリフは、クリーンなギターと表情豊かなビートが織りなすクールでスタイリッシュなリフに置き換わり、「Lovers Again」を成熟した大人のラブソングとして新たに印象付ける。グルーブを増幅させるベースラインやCメロの意表をつくような音色の変化なども、過不足なく華を添えつつ歌声を引き立てている。
加えて、TAKAHIROがEXILEに加入したばかりであった当時の原曲と聴き比べると、この15年の積み重ねがありありと実感できる点も注目すべきだろう。まだ素朴さの残る原曲の歌声に対し、同カバーでは安定した深いビブラートや明瞭なファルセット、アレンジに見合った適度な余韻など、確固たる歌唱スタイルが出来上がっている。
また、4月23日には、アーティストの一発撮りによるパフォーマンスを公開するYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』にTAKAHIROが登場し話題を呼んだ。「Lovers Again」を音源とはまたニュアンスの異なる繊細な歌唱で披露しており、4月28日時点で再生回数は200万回を超えている。
TAKAHIROが身ひとつでマイクの前に立ち、自身の原点かつEXILEの代表曲の一つでもある「Lovers Again」を歌う姿は、新生EXILEが「RED PHOENIX」「PARADOX」で一貫して伝えている“ゼロから始めよう”という新たな決意と根底で繋がっているようにも見えた。
大きな変化は時に恐れられ、賛否を生むものである。彼らはそのことをよく知っているはずだが、それでも今のEXILEが“攻め”の姿勢を貫いているのは、彼らが誇りを持って、20年の歴史を背負う存在であるから。と同時に、その姿が誰かにとっての希望となり、エンパワメントになることを確信しているからなのだろう。
■日高 愛
1989年生まれの会社員。