藤井風の音楽がもたらした人々への“救い” 日本武道館ライブ、奇跡のようで必然の一夜
ライブ本編は、ピアノの弾き語りとバンド編成の二部構成で行われた(その合間がちょうど換気タイムであった)。これまでの自身の軌跡を辿るようにしてピアノカバーから始め、彼自身のコアな部分が色濃く表れているという「風よ」まで一人で歌い切る。後半はバンドメンバーを迎えて「何なんw」でスタート。「優しさ」や「キリがないから」など渾身のアルバム曲を次々に繰り出し、この時点の新曲「へでもねーよ」と「青春病」を披露。最後は「帰ろう」で美しく幕を閉じた。
制約の多い中でも、客席の拍手を求めたり、光や映像を使った演出で精一杯会場を盛り上げているのが印象的。ダンサーと2人で踊る場面など、ライブならではの取り組みも臨場感の伝わる高画質で堪能できるため、改めて見返すと発見も多い。そして何よりも、藤井風という類い稀な才能の持ち主の、まだどこかに初々しさの残るパフォーマンスが楽しめるというだけで、すでに手に取る価値のある一枚だろう。今この瞬間にしかない彼の貴重な姿に、ぜひ“救われて”ほしい。
■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
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