フレデリック、特大の遊び場を作りあげた初の日本武道館公演 新曲2曲も初披露

フレデリック、初の日本武道館レポート

 終盤の「されどBGM」では、この1年間を振り返るような映像が流された。ライブが軒並み延期・中止になるなか、“今できることをやる”、“できなくなったことを数えるのではなく手元にある材料からできることを考える”というスタンスで活動し続けたフレデリック。今回のライブも同様に、悩みや葛藤、それらを経ての決意によって開催されたものだと実感させられる。エンターテインメントが実現するのは、そこに人間の血と汗があるからなのだと。

 そのあとには新曲「サーチライトランナー」を初披露。この流れで聴くと〈間違ってなかったんだ〉というフレーズは彼らの実感から出てきた言葉に思えてならないが、〈十人十色の覚悟〉というワードが盛り込まれているあたり、自分自身のことだけを歌った曲でもなさそう。また、〈WOWOW〉というコーラス+マーチングドラム的なスネアから始まる間奏には前向きな響きがあり、この1年を生き抜いた人たちを肯定する、人間賛歌としての佇まいを見せた。

 さらっと書いてしまったが、そう、新曲だ。このバンドはツアーファイナルや大会場でのワンマンで新曲を演奏し、“次の一手”を示す傾向にある。今回のライブではもう一つの新曲「名悪役」がラストを飾った。リフを中心に進行すると思えば、流れるようなボーカルのラインで聴かせ、サビでは疾走、しかし後半はしっとり、そして間奏は8分の6拍子......。ブロックごとに大きく印象を変える曲だ(思えばフレデリックの曲でサビで転調するのは珍しい気がする)。

 とめどなく変化していくサウンドのなかで歌われた言葉は、〈思い出にされるくらいなら二度とあなたに歌わないよ〉で始まり〈まだ見ぬノンフィクションを脳に浮かべてその台本を置いた〉で終わるものだった。ロックバンドにとっての武道館公演はメモリアルなライブになるケースが多く、それこそ観る側もバンドの道程を思って勝手に感慨深くなったりする。きっと4人もそういう感慨と覚悟を背負って舞台に立っていたことだろう。しかし「ここが最高到達点だって誰が言った?」と言いたげな幕引きにこの先への期待を煽られる。エンディング映像内で「つよくてニューゲーム」というワードを登場させていたのも同じ意図からだろう。

 ライブ終了後に『FREDERHYTHM TOUR 2021-2022』の開催が発表されたように、ここからまた次の1年が始まる。フレデリックの現在はいつだって未来への序章に過ぎないのかもしれない。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

■セットリスト
『FREDERHYTHM ARENA 2021~ぼくらのASOVIVA~』
2021年2月23日(火・祝)日本武道館
01. Wake Me Up
02. シンセンス
03. 逃避行
04. KITAKU BEATS
05. トウメイニンゲン 
06. リリリピート
07. もう帰る汽船
08. ふしだらフラミンゴ
09. 他所のピラニア
10. 正偽
11. ミッドナイトグライダー(FAB!!)
12. うわさのケムリの女の子(FAB!!)
13. まちがいさがしの国
14. TOGENKYO
15. スキライズム
16. オンリーワンダー
17. されどBGM
18. サーチライトランナー(新曲)
19. オドループ
20. 名悪役(新曲)

フレデリック 公式HP

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