ヒトリエが語る、3人体制初アルバム『REAMP』完成までの歩み 「音楽は一緒に過ごした月日から得たものでできている」

ヒトリエ、新体制初アルバムまでの歩み

「俺たちが音楽を提示することで辛さに寄り添えたらいい」(シノダ)

ーーうん、そういう作品だと思います。歌詞については全曲シノダくんが書いていますけど、このアルバムの歌詞って大きく分けると2つのことを歌っている気がして。ひとつは「バンドやっていくぜ」ということ、あとは「でもやっぱり孤独なんだぜ」「悲しいんだぜ」という裏側の気持ち。

シノダ:そうですね。基本的にはその軸2本でこれだけ書いた部分はあります。状況が悲しいと、やっぱり言葉っていっぱい出てくるんです。テーマは基本的に悲しいだの辛いだのそういうことばっかりで、僕らもそうだけど、世の中全体も今そういう感じになってきてるじゃないですか。そういう悲しみをシェアできないかなって。「お互い辛ぇな」みたいな。その辛さに、俺たちが音楽を提示することで寄り添えたらいいなとか、逆にそれを聴いてもらうことで寄り添ってもらえたらいいなとか。あと、とにかく歌詞なので曲にフィットしなければいけない。やっぱりビートにはまらないといけないんですよね。割とそこを重視した部分もあります。いかにして言葉で曲をカッコよくするか、曲に質量を出すかっていう。

ーーそういう意味だと「bouquet」とかは素晴らしいですよね。

イガラシ:これはすごい曲ですね。

シノダ:この曲も生まれた過程が面白くて。ゆーまおが4つ打ちのビートにピアノのコードだけ乗せた、まったく何にもなってないデモをぽんって投げてきたんです。そのビートとピアノのフレーズをDAWソフトで刻んで編集しまくって、そしたらイントロができたんですよ。何かカッコいいビートができたと思って、ここから膨らませられないかなと思って作っていったら、全体像がバッと仕上がったんです。

ゆーまお:すげえ嬉しかったですよ。とりあえずやってみたけど何にもならなくて、すぐ終わっちゃった曲でもない何かが、投げたら曲になってバーンと返ってきて。一応自分が考えたコードではあるから、自分が好きな感じに仕上がってて、本当に幸せだなと思いました。僕は何もしてないんだけど。

ーーいや、きっかけという意味ですごく重要ですよ。サウンド的には全然違うけど、すごくバンド的な成り立ちの曲なんですね。

イガラシ:そうですね。逆に一番そうかも知れない、作業的には。

ーー2人は今作のシノダくんの歌詞についてはどんなことを思います?

イガラシ:俺ら、時間とか思いを一番共有してるじゃないですか。例えば「うつつ」は、2019年にツアーを回っている段階でなんとなく書いていたと聞いて。たぶん3人とも同じことを思っていたし、この歌詞とか雰囲気が共有できないわけないなっていう内容で。これが出発点というか、3人で続いている今に繋がる最初の地点だとしたら、やっぱりすごく大事な曲なんですよね。だからこそ、アプローチとして絶対に「ヒトリエの曲だな」というところに昇華したい気持ちも強くあったんです。その思いを歌詞から汲み取って、ベースの内容までちゃんと突き詰められたという意味で、この曲はすごく大きかったです。

ーードリーミーな感じの曲だけど、実はものすごくリアルなことを歌っているんですよね。リアルだから伝わるんだと思う。

シノダ:そうなんですよ。基本的にはやっぱり嫌なことを言いたいんだろうなって思うんですよ、僕。でも、その嫌なことをなんとかコーティングして、綺麗なものにできないかなって。だから悲しみに関しても、惜しみなく出した方がいいぞと思ったんですよね。だって、スッと出てくる言葉の方が絶対いいはずだし、間にノイズが乗ってないほうが綺麗に出力できるっていうことだと思うんです。

ーーそんな中で、「YUBIKIRI」だけは聴き手やファンに向けたメッセージになっている気がするんですが。

ヒトリエ『YUBIKIRI』 / HITORIE - YUBIKIRI

シノダ:これはきっかけの一つとして、ゆーまおから「なるべく若い子たちにも伝わるような言葉を書いてくれ」というオーダーをもらったので、なるべく伝わりやすい言葉を選んだんですよ。比喩表現みたいなものはあまり……よくわからない表現、1番のAメロでさんざんしてますけど(笑)、それ以外の部分は本当に難しいことも書かずに。

ゆーまお:ヒトリエらしいか、らしくないかみたいな話は一旦置いといて、とにかくこの曲が良くなる方向で物事を考えてみようとしたときに、歌詞は難しいことを言ってほしくないなって単純に思ったんですよね。こういう曲調もあるから、青くさくてわかりやすいものになったらいいなと。

ーーこのアルバムを通して聴いてきて、最後にこれがあるとちょっと救われる感じがありますよね。

シノダ:レコーディング中も、この曲は絶対最後に入れるとずっと思っていました。タイトルも何か次に繋がるようなものがいいのかなって、すげえ悩んだんですよ。最初は「エンディング」みたいなタイトルにしようかと思ったけど、発表する順番が2曲目だから、2曲目にエンディングって訳わかんないなと思って。「終わっちゃうの?」って(笑)。

ーー「YUBIKIRI」、いい曲名だと思います(笑)。あと、アルバムタイトルの『REAMP』というのは?

シノダ:これはもう最後の最後につけましたね。タイトルはとにかく悩んだんです。「リアンプ」っていう録音技術があるんですよね。今回は、その技術を結構駆使したアルバムなんですよ。それでできているといっても過言ではない。タイトルであれこれ悩んだ結果、話が停滞してきたので、「ここらでいっちょ、違う角度でアイデアをぶつけた方がいいな」と思って、試しにローマ字で『REAMP』と書いたら非常にしっくりきたんですよね。

イガラシ:ここらでいっちょ......(笑)。

シノダ:そもそも「RE(リ)」ってついた言葉、何かないかなと思って。「RELOAD」とか「RESTART」とかいろいろあるわけじゃないですか。その中で「REAMP」って聞いたことがないから、じゃあこれだと。ホワイトボードに書いた瞬間に、「これじゃん」って一致しました。

ーーバンドとして、これまで作り上げてきたものをもう一度アンプに通して新しい形で鳴らすんだとか、そういう深い意味があるんだと思っていました。

シノダ:そういうことだと思ってくれたら、こっちのもんだなって思います(笑)。

ゆーまお:「RE(リ)」に関しては本当にそういう意味があると思っているし、「僕らリアンプで感動してるじゃないか」という意味も含むことができる、いいタイトルになったなと思います。

■リリース情報
ヒトリエ New Album『REAMP』
2021年2月17日(水)リリース
初回生産限定盤(CD+Blu-ray)3,400円(tax out)
通常盤(CD)2,600円(tax out)
CD予約はこちら

<CD>
1.curved edge <作詞・作曲:シノダ 編曲:ヒトリエ>
2.ハイゲイン <作詞・作曲:シノダ 編曲:ヒトリエ>
3.dirty <作詞:シノダ 作曲:イガラシ 編曲:ヒトリエ>
4.faceless enemy <作詞:シノダ 作曲:ゆーまお 編曲:ヒトリエ>
5.tat <作詞・作曲:シノダ 編曲:ヒトリエ>
6.うつつ <作詞・作曲:シノダ 編曲:ヒトリエ>
7.bouquet <作詞・作曲:シノダ 編曲:ヒトリエ>
8.Marshall A <作詞・作曲:シノダ 編曲:ヒトリエ>
9.イメージ <作詞:シノダ 作曲:イガラシ 編曲:ヒトリエ>
10.YUBIKIRI <作詞:シノダ 作曲:ゆーまお 編曲:ヒトリエ>

<Blu-Ray>
1.curved edge -Music Video-
2.ハイゲイン -Music Video-
3.イメージ -Music Video-
4.YUBIKIRI -Music Video-
5.Recording Off Shot Movie

ヒトリエ オフィシャルWEBサイト

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