『恋落ちフラグ』インタビュー

松井珠理奈がSKE48として残すラストメッセージ 11歳デビュー、青春捧げたアイドル人生の成功と挫折を語る

 SKE48が、2月3日に27thシングル『恋落ちフラグ』をリリースする。

 約1年ぶりのリリースとなる本作は、絶対的エース・松井珠理奈のラストシングル。表題曲は現メンバー全員で歌唱しているほか、珠理奈がプロデュースした楽曲や卒業を記念したソロ曲も収録され、アイドル・松井珠理奈の最後を飾るにふさわしい1枚となっている。

 リアルサウンドでは、珠理奈本人にインタビュー。楽曲のことはもちろん、人生の半分以上を捧げたアイドルへの思い、さらに後輩たちへ伝えたいことなどを語ってもらった。(松本まゆげ)【最終ページに読者プレゼント有り】

「頑張ってくれた10期生に感謝を伝えました」

SKE48 松井珠理奈

ーー「恋落ちフラグ」の振り入れは、12周年の特別ライブ(2020年10月3日から3日間)が開催された数日後に行われたそうですね。

松井珠理奈(以下、松井):そうなんです! 振り入れの前日くらいに、「みんなで歌えて嬉しいです」とわざわざLINEを送ってくれるメンバーがたくさんいて嬉しかったです。あと、振り付けのs**t kingzのshojiさんがかなり熱い方で。「完璧に踊るのも大事だけど、気持ちもすごく大事だよ」とか、「先輩たちの背中を見られる機会も残り少ないと思ってやってほしい」とか、いろんな言葉をかけてくださったんですよ。その言葉にみんなも刺激を受けていたので、すごく良い雰囲気のなかで振り入れができました。

ーー珠理奈さん自身は、どんな言葉をかけましたか?

松井:「MVの振り入れに挑む姿勢を近くで見てもらえたらいいなと思って、今回全員で表題曲を歌うことになりました」と、経緯などを全員に話しましたね。あとはもちろん、個々にも。抜擢されているメンバーのなかには「先輩が大勢いる中で私がここに立つのはちょっと……ドキドキします……」と振り入れのときから言っている子がいたんですよ。とくに青海(ひな乃)ちゃんは、(センターの)私がいて、熊ちゃん(熊崎晴香)、青海ちゃんっていう順番なので。

ーーセンター横を担う重要な立ち位置ですね。青海さんと言えば、2020年に正規メンバーに昇格したばかりの9期生ですし、緊張するでしょう。

松井:しかも、公演でセンターに立つことが多くて同期の中では早い段階でフロントにいたから、ファンの方や周りのメンバーの目が余計に気になっていたみたいです。だけど、そういう経験は私にもあるので! 「大丈夫だよ。これはチャンスだと思って楽しんでほしいな」と声をかけました。

SKE48 / SKE48 「恋落ちフラグ」Music Video/2021年2月3日発売

ーーちなみに、全員で歌うということは10期生もいますよね。さらに緊張していそうです。

松井:そう、10期生にとってははじめてのMVだったので、先輩と同じペースで振り入れできるかなと心配していたんです。誰しも最初はそんなにすぐに覚えられないし。だからスタッフさんと「10期生は簡単な振りにしようか?」という話もしていたんですけど、みんな最後まで残ったりしてすごく一生懸命覚えてくれたんです。それが嬉しくて……みんなに「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えました。そうしたら、次の日のレッスンで10期生が先生にめちゃくちゃ褒められていたんです! 「すごく良くなってるよ。」って。そこで他メンバーも頑張っていい感じのバチバチが起きていたのも、SKE48らしくていいなって思っていました。

ーーそうして挑んだMV。歴代の衣装を着るシーンもあったそうですね。

松井:今回のMVでは、全体で踊るシーンのほかに、6チームに分かれて踊るシーンとソロシーンがあるんですけど、チームのときは「Escape」の衣装で、ソロのときは「神々の領域」の衣装を着ています。「神々の領域」は1期生の曲なので、ふさわしいと思って。ただ、それを着たときは「もう1期生は誰もいなくなるんだな」と実感が湧いてしまいました。あと、「Escape」の衣装は、私は大矢真那(卒業生)の衣装、私の衣装はどんちゃん(福士奈央)が着ているんですよ。

ーー福士さんは、昔も今も珠理奈さんの大ファンなんですよね。その衣装交換はなんだかエモいです。

松井:そう(笑)。そういうのも見せたいなと思って衣装を変えてみました。今回のMVはそんなふうに「あ!」と思うところがたくさんあると思うので、何度も観てもらいたいです。

「努力だけではどうにもならないモヤモヤをぶつけた」

ーーカップリングでは、ソロ曲「Memories 〜いつの日か会えるまで〜」とユニット曲「Change Your World」を歌唱していますね。「Memories 〜いつの日か会えるまで〜」では、作詞をされたそうですが、ファンのみなさんが読んだら「これはあのときのことだ」と分かるフレーズが多いなと。

松井:これまでに自分で何曲か作詞してきたけれど、今までは「なるべく色んな人が共感できる内容にしたい」と思って書いてきたんです。でもこの曲に関しては、自分のことを語る曲にしました。

ーー共感ではなく、主観を大切にした。

松井:〈無邪気に登ったあの階段〉は「大声ダイヤモンド」のMVのことだし、〈オレンジ色〉はSKE48だし。そういう言葉をたくさん入れています。やっぱりSKE48のシングルに入る最後のソロ曲ですからね。

2021/2/3 on sale SKE48 27th Single c/w 松井珠理奈「Memories 〜いつの日か会えるまで〜」MV(special edit ver.)

ーー聴いているこちらは目頭が熱くなりますが……レコーディングしたときはいかがでしたか?

松井:レコーディングはまだ大丈夫でした(笑)! でも、MVの撮影は……。私が参加した過去のMVが映し出されるなかで歌うっていう内容だったので、いろんな思い出が蘇ってくるんですよ。それに、SKE48の結成メンバーになった2008年から現在までのラインが引いてあってその上を歩くっていう演出だったんです。歴史をたどる感じがじんときましたね。……あ、でもレコーディングでひとつ感情がこもりすぎたところはありました。

ーーあら。それはどこですか?

松井:Dメロの〈サヨナラしたあとも好きでいてほしい〉という部分です。アイドルはみんな思うことだと思うんですけど、卒業したら応援してくれないんじゃないかって 不安に思うものなんですよ。それを思って書いたから、歌うときも感情がこもりすぎてすごく強くなっちゃって、通して聴いてみたら「やっぱりここだけ強すぎるよ」って(笑)。なので、柔らかい切ない感じに歌い直しました。レコーディングの裏側は、私のYouTubeチャンネルにも投稿する予定なので、それを観たらどれくらい強かったか分かるかもしれないです。

2021/2/3 on sale SKE48 27th.Single c/w Black Pearl「Change Your World」Music Video

ーーでは次に、「Change Your World」についても。これは、新ユニットBlack Pearlの楽曲で、珠理奈さんがほぼ全てプロデュースされたそうですね。

松井:はい。歌詞を書いたし曲を選んだし、振り付けもしたし歌唱メンバーもスタッフさんと相談して決めたし、衣装もメイクもMVのイメージも全部関わらせていただきました!

ーーそこまで!

松井:もともとSKE48の未来を感じるような、わくわくする感じをこのユニットで出したいなと思っていて、「歌詞を書きたい」という話はしていたんです。それに、ずっとメンバーとしてやってきた私だからこそわかるSKE48の良さ、メンバーの良さってあると思うし。それを出せたらいいなとイメージを膨らませていたら、全部やらせていただけることになりました。

ーー歌詞もメッセージ性が強いですよね。

松井:私が卒業したあとには誰かがセンターになって、若手メンバーも今以上に活躍するようになると思うんですけど、そうすると嬉しい声だけじゃなくて聞きたくない声も聞こえてきたりすることもあるんです。私も、SKE48なのにAKB48の「大声ダイヤモンド」選抜になったときはそういう経験をしたけれど、それを力に変えて、はねのけてやって来たので、みんなにもそうやって進んでほしいなと思って歌詞に込めました。ユニット名にしたBlack Pearl(黒真珠)自体も、批判や反対をはねのけて信念を貫きたいときに持っていると良い石らしいので、ぴったりですよね。メンバーだけではなく、生きづらい今の世の中を生きる人たちへのメッセージになったらいいなと思います。

ーー特に思いを込めたフレーズってありますか?

松井:いっぱいあるんですけど……選抜総選挙で1位にしていただいてから世界に羽ばたきたいという気持ちが強くなったんです。だから英語は入れたいと思っていて。そこはこだわりましたかね。あとは〈努力したって誰もが上に行けるわけじゃない そんな世界を昔から好きになれやしない〉というところ。普段自分の口からは言いづらいけれど、歌にすると聞こえが良くなるかな? と思って入れてみました。

ーーいつも前向きな言葉をくれる珠理奈さんから出た言葉だと思うと、意外ですね。

松井:「努力は必ず報われる」って、もちろんそれはあると思うんです。努力に無駄なことなんて無いと私も思っています。だけど一方で、この世界って運も大事で。努力だけではどうにもならないことがあると思うんです。運良く上に上がっていく人もいるじゃないですか。

ーー確かに。

松井:そういうのを見てモヤモヤすることもあったので、思い切ってぶつけてみました。メンバーのなかにも、そう思っている子は多いと思うんですよ。江籠(裕奈)ちゃんはずっと真面目に一途に頑張っているけど、そのぶん悔しい思いもたくさん経験していると思うので、共感して歌ってくれるんじゃないかなと。実際に、歌唱メンバーにも話を聞いてそのワードを歌詞に入れ込んだりしているので、感情も込めやすかったと言ってもらえました。振り入れも「イントロのここは、目の前にあるものをはねのけて前に進んでいくという意味だよ」と教えながらすすめました。

ーー過去に1曲丸々振り付けしたことってありました?

松井:コンサートで、次に繋ぐためのダンスを何秒間だけ振り付けする機会はありましたけど、1曲丸々は初めてです! だからすごく大変でしたね。何かと似てしまうと大変だから調べつつやって、5時間くらいかけて考えました。ダンスの先生って大変なんだなって改めて感じましたし、秋元(康)先生も大変なんだなって思ったし、もう、みんなの大変さとありがたみがわかりました! ちなみに、衣装もすごくこだわったんです。やっぱり女の子は、衣装が可愛いとテンション上がりますからね。それぞれのスタイルに合わせてデザインを少しずつ変えていて、その子がより綺麗に可愛く見える衣装にしています。近くで見てきたからこそ、こだわりたかったところです。

ーーまた、メンバー9人をどのように決めたのかも知りたいです。

松井:9人という縛りがなければもっと入れたかったくらい魅力的なメンバーばかりなんですけど、一人ひとりをフィーチャーするとしたらこのくらいの人数がちょうどいいかなということで、スタッフさんと相談して絞らせてもらいました。決め手は、全員努力しているのは当たり前なので、“自分を見つけてもらうために、人と違う努力をしている子たち”。例えば、10期生の林美澪ちゃんは、自分で振り付けを覚えて自分で衣装を用意して、SHOWROOMでライブみたいなことをやっているんです。それ見て私ハマッちゃって(笑)。

ーー視聴者として(笑)。

松井:そうなんです、楽しくて! そういうのって、やれと言われてやっているわけではないですから。自発的にアピールしているところが素敵だし、努力を認めたいなということで選ばれました。あと9期生の平野(百菜)ちゃんは、たまたま握手会でレーンが隣になったとき、入ったばかりなのに握手がすごく上手だったんですよ。若いときって男の人と至近距離で喋ることに慣れていないし、ドキドキしてしまうものだと思うんです。だけどとても楽しそうに話していたんですよ。それを見て「これはかなりの釣り師だな」と。あの魅力にみんな取り憑かれてほしいなと思っています。

ーー過去には、先輩たちに見られていた珠理奈さんも、今は見る側になったのですね。

松井:そうですね。AKB48のときだったら(篠田)麻里子様やたかみなさんが見て、助けてくれていたので。それを今、自分でやっているのが不思議な感じです。