豆柴の大群が初の全国ツアーで遂げたパフォーマンスの進化 『実力をしっかりとつけるツアー』東京公演を振り返る

 その一方で、初めてラップを取り入れた「I need you」に、EDM調の「TO THE FUTURE」、その歌詞からは想像もつかないようなおどろおどろしい「まめのうた」と楽曲の振り幅をあらゆる方向に広げているのだ。もちろん、それに伴うナオ・オブ・ナオとハナエモンスターの新たな振付の考案、曲調の大きく異なる歌い回しのレッスン……といったあらゆる課題をこの短期間で実現していること自体が、彼女らにとっての試練であり、名実ともに『実力をしっかりとつけるツアー』なのだろう。

 筆者が観た第3部は、まさにその完成形。「豆柴の大群-お送りするのは人生劇場-」「FLASH」「そばにいてよ Baby angel」と同じブロックに仲間入りしたゴリゴリのレーザービームが飛ぶ「MOTiON」に、発声が禁止された環境下においてもキャッチーなサビの(メンバーによる)掛け声で一体感を生んだ「LUCKY!!」、「今」「さよならしなきゃ」といったナンバーとともに終盤のセンチメンタルな空気を作り出した「I need you」と、堂々としたそのパフォーマンスからは怒涛のスケジュールの中で培ってきた実力をひしひしと感じさせた。

 『豆柴の大群のりりスタート』ぶりに、彼女たちのパフォーマンスを生で観て、最も成長したと感じたのは、その自信に満ちた表情だった。アンコールのラストでミユキエンジェルは涙ながらにこう話す。

「去年の10月に1stワンマンライブができたとき、豆柴の大群を好きでいてくれる人がたくさんいることを知り、私たちはこの人たちを幸せにするために豆柴の大群になったんだって気付かされました」

 今回の全国ツアーには、実力をつけるとともに、各地で待っている豆粒(ファンの総称)に会いに行くという目的もあった。画面を通じてでしか知らなかったファンが目の前にいる喜び。拠点とする東京だけではなく、大阪、福岡……と全国で豆粒が待ってくれているという安心感は、彼女たちにとって大きな自信にも繋がったはずだ(さらに、12月25日には『まめジャー!』が数量限定先行販売された全国各所のDAISOをメンバーが巡り、ツアーで回れなかった都府県のファンと会っている)。当然、その自信はパフォーマンスにもはっきりと生きてくる。ダンスのキレやボーカルの伸びといった細かなポイントよりも、今回のツアーで豆柴が手に入れた実力は大きな自信だった。ナオ・オブ・ナオとカエデフェニックスのホームグラウンドでもある札幌公演では、さらなる自信を持ってツアーが完結するはずだ。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

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