大根仁監督に聞く、映画やドラマにおける“音楽”の重要性 『共演NG』KIRINJI 堀込高樹との劇伴制作も振り返る
芝居と音楽と編集と画が、僕の場合は全部一緒
ーー今おっしゃったような「大根監督ならでは」の劇伴の作り方は、いつ頃からやり始めたのですか?
大根:多分、ゼロ年代にフジテレビの深夜で『演技者。』っていう番組をやっていたときだと思うんですけど、総合演出として関わっていたので、作品全体のクオリティコントロールみたいなことが、自分で全部できたんですよね。だから、自分が好きな音楽をかけたりとか、既存曲の選曲みたいなことをその番組でやっていたんですけど、途中からDVDとして発売されるっていう話が出てきて。その場合、既存曲を使っていると、また改めてお金が掛かるというか、テレビ放送の場合は一括してテレビ局が使用料を払うんですけど、ソフトになるとまた話が変わるじゃないですか。
ーーテレビの場合は、局が包括契約をしているけど、パッケージはまた別というか、それによってソフト化されない作品もあったりして……。
大根:そう。ソフト化を考えるのであれば、既存曲よりもオリジナル曲のほうがいいわけで。で、最初はスチャダラパーのSHINCOくんとか、自分が好きなDJとかトラックメイカーに音楽をお願いしました。で、何でその人たちを選んだかっていうと、さっき言ったように、その人たちの音楽を普段から自分が聴いていて、馴染みもあったから、その人たちが作った曲を自分のドラマで流したいっていう。それは割とスムースな流れなんじゃないかと個人的には思っていて。だから、自分としては、そんなに特別なことをやっているつもりはないんですけど、そういうことをやっている人は、あんまりいないですよね。
ーー確かに、あまりいないと思います。
大根:でもまあ、単純にその人たちが作る音楽が好きだし、好きだからこそ話が速いっていうのもありますし、向こうも求められているものがわかりやすいんじゃないですかね。「あの曲のあんなカンジで」「うっす」みたいな(笑)。あと、さっき言ったように、ゆらゆら帝国もTOKYO No.1 SOUL SET、EGO-WRAPPIN’、サカナクションも、普段から好きで聴いていると同時に、職業意識の中で、それらの曲をちょっと解体して聴く癖があって。「あ、この曲のシンセの音がいいな」とか「このベーストラックいいな」って思いながら、「こういう音を作るっていうことは、多分劇伴も作れるよな」って考えたりして。
ーーそうやって、普段から音楽を解体して聴いてしまうようなところが、大根監督ならではなんでしょうね。
大根:あと、全部が全部そうではないんですけど、割合映画とかドラマって、音楽がいちばん最後にきたりするんですよね。極端な話、編集が終わってから、その編集の上がりを見て、劇伴の作家さんに発注するみたいなこともあって。そういうの、よくできるなあって、個人的にはちょっと思っていたところもあって。で、僕の場合は、最初に音楽を誰にするかを決めて、その人の曲を流しながら脚本を書いたりもするし、撮影中には必ずデモ曲が上がってくるようにして、そのデモ曲を自分の頭の中で鳴らしながら撮影したりするんですよね。このシーンはあの曲が流れるから、そのBPMに合わせると、会話のテンポはこのくらいだなってわかるというか。だから、僕の場合、音楽がないと編集ができないんですよね。音楽によって、会話のテンポとか編集のリズムやカットラインが変わってくるので。
ーーなるほど。そもそも大根監督の場合、映像に音楽を当てていくという発想ではないわけですね。
大根:そうですね。最初から全部一緒というか、芝居と音楽と編集と画が、僕の場合は全部一緒なので。だから、こういうやり方になっているんだと思います。というか、このやり方以外できないっす(笑)。