SEKAI NO OWARI、『恋あた』主題歌バイラル好調 バンド初のクリスマスソングで際立つしなやかな“歌の強さ”

 歌詞の〈静寂の音が煩くて/今夜はきっと眠れない〉というフレーズにも注目したい。雪が降る夜は、降る雪そのものが周囲の雑踏を吸収するゆえ、非常に静かである。筆者は雪国出身だが、冬の夜、家の中にいても、外の静けさが増すと雪が降り始めたことがわかった。SEKAI NO OWARIのメンバーは、東京都と大阪府出身である。それなのに、雪と静寂を結びつけ歌詞にしてきた。彼らの作り出すファンタジーは、リアルを礎にしていることがわかるフレーズだと思う。

 SEKAI NO OWARIは、冬を大切にしてきたバンドだ。「スターライトパレード」(2011年/トヨタ自動車「ラクティス」CMソング、他タイアップ複数)、「スノーマジックファンタジー」(2013年/JR東日本「JR SKISKIキャンペーン」CMソング)、「イルミネーション」(2018年/テレビ朝日系テレビドラマ『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』主題歌)など、多くの人が知る“SEKAI NO OWARI 冬の曲”がたくさんある。しかし前述したように、クリスマスソングは本作が初となる。毎年クリスマス近くになると、街中に流れるクリスマスソングはあるが、定番が決まっていて毎年サブリミナルのように聴き手の中に刷り込まれているゆえ、巷で言われるクリスマスソングをアップデートするのは難しい。SEKAI NO OWARIは、今回、そのアップデートに切り込んできたのではなかろうか。その気概に大きな拍手を送りたい。コロナ禍の自粛のせいで、春も夏も秋も感じられなかった2020年。せめて、冬まで奪われてしまわないように……そんな彼らの想いが込められた、優しく寄り添うクリスマスソングになっている。

■伊藤亜希
ライター。編集。アーティストサイトの企画・制作。喜んだり、落ち込んだり、切なくなったり、お酒を飲んだりしてると、勝手に脳内BGMが流れ出す幸せな日々。旦那と小さなイタリアンバル(新中野駅から徒歩2分)始めました。
Piccolo 266 インスタグラム

関連記事