大橋彩香、伊藤美来、中島由貴、ニノミヤユイ……アーティストとしての個性確立させる“声優ガールズポップ”4作品
すでにソロアーティストとしてのキャリアも十分な前述の二人とは違い、これからその第一歩を踏み出そうとしているのが、『アイドルマスター シンデレラガールズ』の乙倉悠貴役などで人気を集める中島由貴。前述の二人も出演する『BanG Dream!』では、Roseliaの今井リサ役を務め、ライブでは実際にベース演奏もこなす実力派です。かつては声優ユニットのアース・スター ドリームにも所属していましたが、12月23日にリリースされる1stアルバム『Chapter I』で、ソロアーティストとしてデビューを果たします。
アルバムのリード曲「Chapter I」は、y0c1e名義の活動でも知られる佐高陵平が作編曲を手がけた快活なギターロックチューン。これから始まる新しい活動への期待感と、サビの〈最高で 最高な 主人公は私〉という歌詞に象徴されるポジティブなフィーリングが、彼女自身の明るく前向きなパーソナルと結びついた一曲と言えるでしょう。その透き通るようなクリアボイスは、どんなサウンドにも気持ちよく馴染み、K-POPフレイバ—のキュートなエレポップ「Sunny Parade」から、切ない恋模様を描いた青春感溢れるエモーショナルロック「マーブル」まで、いろんなテイストの楽曲を楽しむことができます。彼女の歌声がこれからどんな色に染まっていくのか。その期待と予感が詰まった、ワクワクするような始まりの一枚です。
最後に紹介するニノミヤユイは、声優・二ノ宮ゆいがアーティスト活動を行う際の名義。今年1月にバグベア、カノエラナ、佐藤純一(fhána)らが参加したアルバム『愛とか感情』でデビューし、8月には1stシングル表題曲「つらぬいて憂鬱」で初のアニメタイアップを経験。まだ弱冠19歳ながら、自身のネガティブな要素をクリエイティブに落とし込み、作詞なども含めて自分らしい表現を追求する、新しいタイプの存在です(声優活動とアーティスト活動で名前を使い分けているのは、そこに明確な線を引いているからでしょう)。
このたびリリースされるミニアルバム『哀情解離』(12月23日発売)のテーマは「陰×ロック」。彼女がこれまで作品を通じて見せてきた、感情の「陰」の部分をさらに深く掘り下げ、それを自身の好きなロックサウンドに乗せてアウトプットした、強烈な個性を放つ一枚になっています。リード曲「痛人間讃歌」を提供したのは、彼女が大ファンだというロックバンドのミオヤマザキ(作詞はmio、作曲はtaka)。周囲から期待されたり押し付けられる自分のイメージを跳ねのけるような、切れ味鋭い言葉とサウンドが心に刺さる一曲です。さらにニノミヤが多大な影響を受けたと語るDECO*27の楽曲提供が実現した「サイセンタン・コンフュージョン」(DECO*27は『愛とか感情』にもギター演奏で参加していた)、活動終了を宣言したボカロPの蜂屋ななしによる異色のエレクトロスウィング「No attention」など、アグレッシブなナンバーがずらり。彼女と同じくネガティブな感情を心に抱えた人にこそ聴いてほしい、ありのままの自分を肯定してくれる作品になっています。
■北野 創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ!』『音楽ナタリー』などに寄稿。