Serphが語る『Skylapse』で追い求めた“音楽の安らぎと赦し” 「現実を超えた世界をシェアすることが文化や芸術の一つの本質」

Serphが求める“音楽の安らぎと赦し”

「強烈に救われたと感じるのはポップなもの」

ーー最後の表題曲では、冒頭にジャズの影響を感じます。

Serph:イントロだけジャズっぽく、その後は王道クラシックみたいな感じなので、大団円に相応しいなと思って最後にしました。赦しがあるというか、癒しや許容を感じる曲で、入学式や卒業式、結婚式でかかる曲というイメージもあります。

ーーSerphの音楽における“赦し”とはなんですか?

Serph:生きている限り悩みは尽きないですけど、生きているだけで祝福されているんだっていうこと......許された存在なんだって、そういう感覚ですかね。

Serph - Skylapse (Official Audio)

ーーこれはディスコグラフィ全体に言えることですが、Serphの音楽からは宗教性を感じます。作り手としてそうした意識はありますか。

Serph:それは毎回モロに意識しています。そもそも音楽を始めたのは神秘体験や宗教体験のような音楽を作りたいという気持ちからで、それをポップなもので表現したかったんですよね。エンタメであってほしいとも思うし、それと同時に個人的な救いであるとか、癒しになってほしいとも思っています。

ーーそれはリスナーにとってはもちろん、Serphさんにとっても音楽がそういうものであってほしかった?

Serph:そうですね。デビュー前やデビューしたばかりの頃に抑圧を感じていたというか、とにかく自分が許せなかった。そうやって苦しんでいた時、音楽に救われたし、最も強烈に救われたと感じるものがポップなものだったから。ゴスペルを聴いているのも、その辺に関係があるのかもしれないなって思います。

ーー最後に活動面のお話も聞けたらと思います。コロナ禍の影響で今はストップしていますが、昨年あたりからライブで顔を出したことや、本数自体が増えていったことは大きな転換点だったと思います。何かきっかけがあったんでしょうか。

Serph:デビュー前にかなり大きくメンタルを崩して、一生治らないメンタルの病を抱えることになったので、ここ10年くらいはずっと体調が悪かったんですよね。感覚が過敏すぎて通常の社会生活を送るのも難しくて、外に出るのも辛かった。パラノイアというか、被害妄想もありまして、それで人前に出るどころではなかったんです。ただ、病気になってから10年くらい経って、ひとつ区切りがついて収まってきたんですよね。そうやって改善されてきたタイミングで、ライブでの顔出しを決めました。

ーー解放感はありましたか?

Serph:みんないい人だなって思いました(笑)。劣等感とかパラノイアがあった頃じゃできなかったことをやってみて、リスナーも音楽関係者もみんないい人なんだなって気づきましたね。なので安心感を持てたというか、『Skylapse』も人はいいものなんだっていう認識が生まれた上で作った作品という感じがあります。

ーーちなみに、当初のスクリーンの裏にいながらのライブでは、お客さんの顔は見えていたんでしょうか。

Serph:いや、あんまり見えていなかったですね。で、ライブが終わったら引っ込む感じだったので、実際にお客さんに触れることもなかったです。それが顔出ししてからは物販に立ったりするようになって、お客さんと話した時には、やってきてよかったなって心から思えました。

ーーお客さんを煽るようなこともされていましたね。

Serph:パリピにはなれないけど、どうせならビートが激しい曲では踊ってほしいという気持ちはあって。でも、そんなにノッてくれないですね(笑)。みんな真剣に聴いている感じです。

Serph - vitt (LIVE) / from “Joaquin Skywalker” 2020.01.24 @ WWW X

ーーSerphさんの音楽は、確かに集中して聴きたくなる音楽かもしれないですね。ちなみに、来年以降の予定はありますか?

Serph:ライブをやれれば嬉しいですね。安全な範囲で増やしていきたいとは思います。

ーーそこには、リスナーとコミュニケーションを取りたいという気持ちがありますか?

Serph:そうですね。今まで十分に籠ったので、音楽を通じて社会と触れ合う時間を試したいと思っています。

ーーSerphさんの作る音楽は絵本のようでもありますし、バーチャル空間に新しい世界を作るような作品をずっと作られてきていると思います。そうした作品を通して社会と繋がりたいというのは、どんな願望の表れだと思いますか。

Serph:音楽だけでなく、文化や芸術はすべてがそうだと思うんですけど、非現実なものというか、ブッ飛ぶことを誰かとシェアしたいというのが根源的な気持ちだと思うんですよね。神聖なものというか、現実を超えた世界をシェアすること......それが文化、芸術におけるひとつの本質だと思うので、アーティストはある意味カルトの教祖みたいな感じもあると思います。なので、イニシエーションじゃないですけど、儀式としてのライブはやってみたいと思います。

Serph
Serph『Skylapse』

■リリース情報
Serph『Skylapse』
2020年12月2日(水)リリース
CD販売価格:¥2,300(税抜)
ダウンロードはこちら

<トラックリスト>
01. Tasogare Smoothie
02. Aerofloat
03. Satellite
04. Wintermute
05. Strange Days
06. Spirit Circle
07. North Star
08. Melt Flux
09. Funfair
10. Cloud Nine
11. Skylapse

※nobleオンラインショップからの購入者に限り、Serphの未発表曲を収録した購入者特典CDが付属。詳細はこちら

■関連リンク
Serph noble アーティストページ
Serph Twitter

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