句潤が語る、GREEN ASSASSIN DOLLARとのタッグ “ラップが入ってこそ完成されるトラック”を基準にした最新作へのこだわり

句潤が語る、GREEN ASSASSIN DOLLARとのタッグ “ラップが入ってこそ完成されるトラック”を基準にした最新作へのこだわり

 横浜の異端児こと句潤(クール)の新作アルバム『風呼ぶカモメ』がリリースされた。バトルMCとしても馴染みがある句潤だが、音源制作にも力を入れており、2016年に1stアルバム『秋雨の宴』を発売。呼煙魔やNEZUMIなど精鋭のトラックメーカーで固めた『秋雨の宴』はヒップホップアルバムとして完成度の高い作品で、バトルで開拓したファンを唸らせていた。

 そして、彼が新たにタッグを組んだ相手はなんと日本のHIPHOP界の中でも最も勢いのあるトラックメイカーの一人、GREEN ASSASSIN DOLLAR(以下、GAD)だ。胸を打つメランコリックなジャジーサウンドが特徴的で、舐達麻に提供した「FLOATIN’」で一躍注目を浴びたGAD。その他にも多くのアーティストに楽曲提供しており、owls、JNKMN、ANARCHY & BADSAIKUSHなどそれぞれ注目を集めている。『風呼ぶカモメ』はそんなGAD全面プロデュースによる作品だ。

 いざその蓋を開けてみると、心に深く染み込む完成度の高いジャジーなトラックが印象的な「INTROLL」が冒頭を飾り、時にG-Funk、時にアンビエントに、各楽曲様々な表情を見せた作品になっていた。そして何より、記名性が強いGADのトラックと合わさることで、句潤のラップスキルがより際立っているところが面白い。派手な演出はないが、どの曲もフックはとてもメロディアス。もはや楽器の一部になっている彼のラップは、GADのトラックと上手く融合している。リスナーは、GADの繊細な音色と句潤のスキルフルなラップが織り成す世界を楽しむことができるだろう。

 句潤とGADはどのようにして出会い、本作を制作したのか。リアルサウンドでは、句潤にインタビューを行い、彼の現在の音楽スタイルが形成された背景や、GADとの出会い、そして『風呼ぶカモメ』の制作背景まで話を聞いた。(鼎)

音楽スタイルに影響を与えた“あるクルー”との出会い

ーー句潤さんに対してバトルMCの印象が強い方もいると思うのですが、ラップを始めたきっかけは何だったんですか?

句潤:小6か、中1の時に見た『さんピンCAMP』に衝撃を受けたんですよね。それから、高校時代の先輩が学園祭でクラブを模した出し物をやってたんですけど、次の年の学園祭で、自分もそれを真似して学園祭でクラブみたいなことをやったんです。そこで初めてラップをしました。

ーーライブに出始めたのもその頃?

句潤:ライブ自体は18歳の時からですね。当時はリリックを書くのも好きだったんですが、自分の名前を広めていくためにバトルに出始めたらそれも楽しくて。でもやっぱり音源制作をしたいって気持ちが強くなって、制作により専念することにしました。住んでいたマンションの地下の部屋を借りてスタジオにしていたこともありましたね。

ーーそうだったんですね。当時影響を受けたアーティストや作品は?

句潤:OZROSAURUS(以下、オジロ)の1stアルバム『ROLLIN’045』、あとNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの存在は外せないですね。洋楽だと、ボンサグ(Bone Thugs-N-Harmony)とAZにハマって、それからビギー(The Notorious B.I.G.)や2PACを聴くようになりました。ハーモニーが好きなんでしょうね。『Rap City』という海外番組のボンサグ回を見たとき、本当にビジー・ボーンがかっこよくて。フリースタイルをしていてもメロディをつけることが多いのですが、それはボンサグとAZからの影響だと思います。あと自分のスタイルとは違いますが、横浜ということもあってオジロには若いころから憧れていました。

ーー確かに句潤さんは、「横浜レぺゼン」という立場を取りつつも音楽的には「いかにも横浜」な要素はあまりないですよね。それ故に「横浜の異端児」と言われているんだなと。ご自身の今の音楽スタイルはどのように作られていったのでしょうか?

句潤:以前都内でクルーを組んでいたことが影響していると思います。そのクルーには、沖縄、仙台、東京っていろんなところからきた個性的な面子が集まっていて、今回のアルバムに参加してくれたD.D.Sもいました。PONEYとDAG FORCEとも、そこで活動していくなかで出会ったんです。

 ワンルームに10人以上MCが集まって、7SEEDSが作ったトラックの上でキックしていくみたいなことをずっとやってて。その経験のおかげでMCとしても成長できましたし、彼らといたことで客観的な視点からも自分のリリックをみれるようになりました。「これ他の人が聴いたらどんな風に捉えるんだろう」とか「仲間にも喰らわせたい」とか考えながらラップするようになりましたね。

句潤

ーーそうなんですね。

句潤:あとは、自分が所属するバンド・MEATERSを始めたことも音楽の幅が広がりました。MPCバンドなんですが、MPC、トークボックス、スクラッチの他に、サックス、ベース、ギターがいます。ラップだと一人でも作れるけど、バンドだと皆で「これはどうだろう」と意見を交換し合える。基本的に共同作業だし、バンドとしてのカラーもある。特に楽器をやってる人と音楽のことを話すと視野が広がるし、皆それぞれDJもしていて、所謂Diggerなんです。人気曲の元ネタについても聞けたりするので面白かったです。

ーー『風呼ぶカモメ』は全曲GADさんのプロデュースですが、出会ったきっかけは何でしたか?

句潤:2018年の春に盛岡でのライブに誘われたんですけど、その時にちょうどGADも出演してたんですよ。そこで、自分のライブに喰らったみたいでそこからですね。GADがビートテープを送ってきてくれて、これは良いなと思って「(アルバムを)一緒にやろう」と自分から声を掛けて。今回は“GADと二人で制作する”ことをテーマにしたので、盛岡に通って直接会って作ることを最低限の課題にしました。トラックを選んで、その場でリリックを書いてRECをする、という行程で取り組んでたので制作にかなり時間が掛かりましたね。

INTROLL / 句潤 prod.GREEN ASSASSIN DOLLAR

ーー本作は、句潤さんのラップとGADさんのトラックが非常に上手く混ざり合っていますよね。トラックを選ぶ上で重視した点はありましたか?

句潤:GADが作ったトラックのストックからどの曲をアルバムに入れるか決めたんですけど、選ぶときは「ラップが入ってこそ完成されるトラックなのか」どうかを基準にしました。GADの曲ってインストゥルメンタルの時点で完成されている曲が多くて。そういう曲ではやっぱりラップできないんですよね。隙がないというか。

ーーなるほど。

句潤:今回のアルバムは、何回も繰り返し聴いてもらえるような作品にしたくて。BPMもアルバムを通してほとんど変えずに、ミックスも「音との融合」を目指してラップを控えめにしてもらいました。ラップアルバムってどうしてもラップが前にでるじゃないですか。でも今回はそうならないように、GADの世界と自分の世界の融合を楽しんでもらえるようにしたかったんです。これは1stアルバムから言えることではあるんですけど、曲間にもかなりこだわりました。ライブ感を意識して、曲間を詰めたり、逆に間を空けたり。

ーーそれは、アルバムとしてどうやって聴いてもらうかという点を意識されてのことですか?

句潤:やっぱりアルバムは全曲が主役なので飛ばさせたくなくて。スムースに聴けてBGMにもなるけど内容はしっかりしてる。そういう飽きない作品にしたかったんですよね。

句潤

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