ヤバイTシャツ屋さん、打首獄門同好会、岡崎体育……ヒットの理由は“楽曲以外”にもあり? 2020年の活動に迫る
普段何気なく我々が楽しんでいる音楽だが、音楽だけを聴いて楽しんでいるわけではない。その音楽の届け方、メディアとの距離感、キャラクターなどの「音楽以外の活動」も無意識のうちに含めながら、我々は「音楽」を楽しんでいる。
今、アイロニカルなミュージシャンたちがシーンに旋風を巻き起こしている。その他に類を見ない視座や切り口が若者を中心に人気を集めているのだ。彼らの革新性は音楽に留まらない。本稿ではそんなアイロニカルなミュージシャンたちのこの1年間の活動からヒットの理由を考察したい。
最新作『You need the Tank-top』がオリコン週間アルバムランキングで1位を獲得したことでも話題のヤバイTシャツ屋さん(以下、ヤバT)。楽曲だけでない様々な要素で大きな話題を呼んでいる。前述したニューアルバムの早期予約者には彼らの直筆サイン色紙が付属。計4万枚以上の色紙にサインする模様を各メンバーがSNSで随時更新する姿も話題となった。ストリーミングサービス全盛の中、CDにサインと聞くと、少し前時代的と思う人も多いだろう。しかしこれは、 アルバム発売を心待ちにするファンへの嬉しいプレゼントであると共に、CDという形で音楽を届けたいというヤバTの「ロックキッズっぷり」が表れた施策と言える。
新曲「げんきもりもり!モーリーファンタジー」では、アミューズメント施設「モーリーファンタジー」とのタイアップが実現。バンドとアミューズメント施設という異色のタイアップながら、MVの撮影やモーリーファンタジーの景品にヤバTメンバーが登場するなど、多岐に渡る展開を見せた。これまでのタイアップである対メディアではない新しい企業タイアップに親近感を覚えた人も多いことだろう。ヤバTというバンドが持つ破天荒かつ愛のあるキャラクターだからこそ出来るタイアップだ。
そして同じく『You need the Tank-top』に収録された新曲「NO MONEY DANCE」のMVも大きな話題を呼んだ。360ピクセル、いわゆる「低画質」で意図的に作られたこのMVは、全編通して“平成12年風”のテレビ番組のオマージュとなっている。特にバンドメンバーと同世代のファンや、ファンならずともこのMVには度肝を抜かれ、思わず笑ってしまったのではないだろうか。目一杯の愛と尊敬が込められたMVは必見だ。
アナログな手法を取り入れていくヤバT。しかしこれがデジタル時代のカウンターとなり、デジタルネイティブな層には新鮮に感じるのかもしれない。最新のデジタル技術に頼らず、斬新なアイデアや熱い思いで良い作品を生み出し、送り出しているのだ。