森山直太朗と山崎育三郎、“歌が主役の朝ドラ”『エール』で活躍 歌と演技の合流地点で自身の表現を追求

 野田洋次郎のことも忘れてはならない。RADWIMPSのフロントマンでソロプロジェクト・illionとしても活動する野田は2015年に映画『トイレのピエタ』で俳優デビュー。同作で第39回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞すると、その後はドラマ『100万円の女たち』(テレビ東京)で主演を飾るなど、出演本数は多くないが着実に俳優としてのキャリアを重ねてきた。

 良い意味で作り込まない野田の演技は感性先行型。『エール』では古賀政男をモデルにした木枯正人を演じている。「古賀メロディ」で知られる古賀は、生涯に数えきれないヒット曲を生み出した昭和歌謡の巨人。プレッシャーのかかる配役に、野田はギターを片手にひょうひょうと臨んでいる。第31話で「ちょいちょい愛してる」という歌詞に曲をつけたのは野田のアドリブ。野田にとって演技と音楽が同一線上にあることを示した。

 RADWIMPSで新海誠監督作『君の名は。』『天気の子』の音楽を担当するなど、映像と音楽に造詣の深い野田は、現行の音楽シーンをリードする存在でもある。『エール』で取り上げる楽曲はJ-POPの源流と呼べるものであり、野田と昭和歌謡の邂逅がどんな新しい表現をもたらすか楽しみだ。

 森山と山崎は『エール』共演を機に意気投合。12月2日リリースの山崎のニューシングル『君に伝えたいこと』は、森山が山崎にインスパイアされて生まれた作品だ。ともに良い意味でジャンルにとらわれない「越境者」であり、歌と演技の合流地点で自身の表現を追求する両者は、深いところで共鳴し合っている。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる