シングル『灰色のサーガ』インタビュー
ChouChoが語る、『灰色のサーガ』に込めた前向きな気持ち 「今まで以上に寄り添える楽曲を作っていけたら」
インスタライブはニコニコ動画時代を思い出した
ーーファンの反応も楽しみですね。
ChouCho:けっこう苦労して作ったので、たくさん聴いてほしいです。声をサンプリングして楽器のひとつのように使っていて、それも初めての試みだったので、自分でも面白いものができたなって。それに、歌詞もすごく悩んで書いたので。自粛期間中にファンのみなさんとなかなか会えなくて、物理的に距離が離れてしまったことに対しての思いが強かったから、それを歌詞にしようと思って。
ーー自粛期間でいちばん辛かったのは、ファンの人と会えなかったこと?
ChouCho:やっぱり心のなかをいちばん占めていた思いだったので、そういう言葉が自然と歌詞に表れて。〈会えなかったら 生きる意味も無いし〉とか〈自分のためには歌えない〉とか。ファンの方には、そういう私の思いが伝わったらうれしいですし、フラットに聴いた場合でもいろいろな意味に受け取れるように書いていて、恋愛の歌詞にも見えますし。偏り過ぎないように心がけて書いています。
ーー歌詞に時間がかかったのは、いちばんはどういう部分ですか?
ChouCho:いろいろな意味を含ませられる言葉を選んだのもそうですし、普段作る曲とはメロディのリズム感がちょっと違って、音数も多いので。なおかつ音とのハマりがすごく重要な曲かなと思って。リズムにしっかり乗っているメロディなので、歌詞でそのリズムを崩したくなくて。だから言いたいことはたくさんあるんだけど、リズムにハマっていないと意味がないので、そこがいちばん苦労しました。この独特のメロディが生きて、なおかつ言いたいことも言えるようにする。語感が重要で、いちばん良い言葉を探すのに苦労しました。
ーー自粛期間に作ったということで、自粛期間に入っていちばん最初はどう思いましたか?
ChouCho:今までの世界って、なんて幸せだったんだろうって思いました。普通にライブができて友達と会うとか、当たり前にやっていたことが、急に当たり前ではなくなって。なんて幸せな世界で、私たちは生きていたんだろうって。怖くも感じたし、不安も渦巻いていました。
ーーどういう部分で不安や怖さを?
ChouCho:見えない恐怖という感じで、それがすごく怖かったです。情報も最初のころはすごく曖昧で、どれくらい危険なのかもわからなかったし。それに東京はすごく危ないという話だったから、外に出ることが本当に怖かった。マスクの効果も最初はいろんな意見があって、買い占めもあったし。
ーーそういうなかで、どうやって平静を保っていましたか?
ChouCho:コロナ禍になるちょっと前に、猫を飼い始めたので、猫に癒やしてもらっていました(笑)。マンチカンという足が短い種類で、ほたるちゃんという名前の女の子です。人と会えなかったぶん、生き物と触れ合うだけでも、かなりの癒やしをもらっていたと思います。あとは、ゲームが好きなのでゲームをやっていました。これも動物なんですけど、『あつまれ どうぶつの森』にも癒やされました。自粛期間中にすごく流行っていたじゃないですか。リアルでは外に出られなかったので、『どうぶつの森』でほかの人の島を見に行ったり、お出かけしていました。でもそのあと、すぐ飽きちゃったんですけど(笑)。
ーー2〜3カ月しか、もたなかったんですか(笑)
ChouCho:でも自粛期間中は毎日の日課になっていて、木を揺すって果物をゲットしたり魚を釣って売ったりするのが、毎日の楽しみでした。外に出られない不安やストレスがあったなかで、そのなかの世界はすごく平和で。私はゲームでしたけど、人によってはアニメだったりドラマや映画などをネットでたくさん見たという話も聞きますし、その一瞬だけは平和な日常へと気持ちを引き戻してくれるのが、こういうエンタメ作品の力だなって。
ーーゲームやアニメは非日常を楽しむものだったけど、リアルの日常が非日常になったことで、ゲームやアニメが日常を取り戻させてくれるものになったのは、面白い現象だなと思いました。
ChouCho:そうですね。その時は幸せな世界を取り戻せるというか。『どうぶつの森』のなかで結婚式をあげたカップルもいたとニュースで聞きましたし。どっちが現実でどっちがリアルなのかわからない、そういう不思議な感覚の時期でした。
ーーそういう時期を乗り越えた今、ChouChoさんが携わるアニソンやアニメの世界、音楽の存在意義についてどう思いますか?
ChouCho:リモートでの仕事のスタイルが一般的になったことで、おうちにいる時間がすごく増えて。そういう時に、心に寄り添ってくれるアニメやアニメソングって、今まで以上にみんなのなかで大きな存在になっているんじゃないかって思います。だからこそ作る側の意識の持ち方も大切で、今まで以上に聴いてくれる方の心に寄り添える楽曲を作っていけたらと思います。先ほどお話ししたように、当たり前のことが当たり前じゃないと気づいたのは音楽に対してもそうで、CDをリリースさせてもらえることや聴いてもらえることが、当たり前という時代ではなくなっている。そのことで、自分のなかで音楽の存在が、今まで以上に大きなものになったと感じています。聴いてくれる人、応援してくれる人に、会いたいという気持ちがもっともっと強くなりました。だからライブで、前みたいに会えるようになる日がくることを楽しみに待っています。
ーーChouChoさんはインスタライブもやっていましたが、ネットを介してのファンとの交流はどう感じていますか?
ChouCho:技術が進歩していて本当に良かったと思います。ネットがなければ何も発信することができなかったから、発信できる場があったのは救いでしたね。それに私はデビュー前にニコニコ動画で活動していた時代があって、インスタライブは新鮮さもありましたけど、ニコニコ生放送をやっていた時の経験とリンクする部分がたくさんあって、少し懐かしい感覚もありました。リアルタイムでコメントをいただけると目の前にみんながいて直接会話しているようで楽しかったですし、配信したあとはとても幸せな気持ちになりました。猫がいてゲームも楽しいけど、やっぱり直接の会話は孤独を忘れさせてくれます。
ーーいずれは配信ライブも考えていますか?
ChouCho:普通のアコースティックライブを生配信したことはありますけど、無観客ライブを配信するのはやったことがないので、ちょっと想像が付かないですけど……。このまま普通のライブができない状況が続けば、それも考えたいと思います。でも、できればお客さんと直接顔を合わせる、普通のライブをやりたいのが本音です。
■リリース情報
「灰色のサーガ」
発売:2020年10月28日(水)
TVアニメ『魔女の旅々』エンディングテーマ
価 格:¥1,200(税抜)