ハロプロ、坂道、WACK……アイドル三大勢力、人気の秘密は映像面にあり? 特性異なるアプローチ術に迫る
テレビからライブ主義へ移行したハロプロ系
21世紀の日本アイドルシーンの夜明けとなったのは、間違いなくモーニング娘。をはじめとするハロプロ系の登場である。Berryz工房、℃-ute、カントリー・ガールズ(カントリー娘。)などレジェンド級のグループを次々と輩出。アンジュルム(スマイレージ)は結成から10年をこえ、Juice=Juice、つばきファクトリーも活躍中。BEYOOOOONDSは最注目株だ。
2000年代中盤からAKB系が台頭し、さらにももいろクローバーZ(旧・ももいろクローバー)や私立恵比寿中学などのスタダ系(スターダストプロモーション)も追随してアイドル戦国時代が形成されたときも、モー娘。は揺るがないポジションにいた。現在もアイドルシーンの不動のトップである。
モー娘。は映像を使ったアプローチの成功例といえる。1990年代、バラエティ番組『ASAYAN』(テレビ東京系)のなかでメンバーを選抜し、さらに強化合宿などの模様をすべて番組内でアナウンスしていくスタイルで人気をあげていった。
また、1990年代や2000年代は連日のように音楽番組が放送されていたことから、新曲リリースの有無に関わらず多数出演。『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)、『うたばん』(TBS系)、『COUNT DOWN TV』(TBS系)、『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』(フジテレビ系)などゴールデンタイムの番組で爪痕を残し続け、幅広い年齢層にその名が知れ渡った。
ただ、時代とともに音楽番組が減少したことにより、モー娘。らハロプロ系のグループはテレビ出演に頼らず、より徹底的なライブ主義へと移行していく。ライブでは生歌は当たり前。メンバーの歌のパートも非常に細かく担当を配分。スキルを磨き上げ、例えメンバーが入れ替わっても一切、ネガティブにならないグループ作りがなされていった。
モー娘。のパフォーマンスはライブビューイングでも立体的に見える
ハロプロ系の鍛え上げられた実力は、ライブビューイングなどの映像配信においても、魅力と迫力が一切損なわれることはない。すべてのパワーが画面から伝わってくる。印象に残っているのは、2019年6月におこなわれたモーニング娘。’19の日本武道館でのライブ『'19コンサートツアー春 ~BEST WISHES!~FINAL』だ。
筆者は映画館で同ライブを観覧していたが、統制がとれた完成度の高いダンスは、スクリーン越しでも圧巻だった。さらに驚異的だったのは、メンバー全員がいつどの瞬間、どの角度でカメラに抜かれても一切の油断と隙のないパフォーマンスを見せていたところ。特に小田さくらは、自分のボーカルパートでのギアの入れ方が凄まじく、グッと引き込まれた。メンバー全員の大汗も、3Dのように立体的に見えたほど。配信映像であっても臨場感抜群だった。
もちろん、ハロプロ系はMVなどの映像面も秀逸。米津玄師作詞作曲「パプリカ」などのMVを担当した映像作家・渡邉直によるBEYOOOOONDS「アツイ!」は最高だ。それでも、ここはあえてライブ主義であることをハロプロ系のアプローチとして強調したい。