Ezoshika Gourmet Club、多彩な楽曲で聴かせる“新世代のオルタナ” 『モミジノススメ』から紐解く早耳リスナーに話題の理由
さらに、バンド仲間であるドアノブロックのボーカリスト、セックスフラペチーノ(注目の逸材)をデュエットシンガーに迎えたキャンディーポップチューン「弾ける炭酸」が超絶キャッチーな楽曲で驚かされた。これは本当にCMタイアップやアニメタイアップなどで、ガンガン結果を出せるバンドなのかもしれない。たぶんメンバー本人も狙ってポップチューンを書けるタイプだろうから書き記しておこう。コロナ禍において、ライブ活動やフェス出演が制限されるなか、作曲能力やレコーディングでのバンド表現力の高さは大きな武器となるのだから。このバンド、実はイントロの作り方も今の時代に即した方法論で、ストリーミングサービスで入り込みやすいように練りに練られている。
彼らがすごいのはバンドキーワードである“オルタナ”という軸はブレることなく、楽曲によってカラーを変えられること。4曲目に収録した「青山通り」はバンドにとっても新境地といえる都会派ポップ感覚ある軽妙な雰囲気を持つナンバーだ。さらに同じタイプのイントロダクションからスタートする、渋谷系センスで洒落た透明感あるギターポップを楽しませてくれる5曲目「スカート」も秀逸だ。そして、9月に先行配信した「六畳間のヒーロー。」ではギター、キーボード、ベース、ドラム、ボーカルの全てのパートがスターとなる笑顔ほとばしるバンドサウンドを届けてくれた。たぶんこの曲は、夏のリリースがギリギリになったタイプの“熱帯夜ソング”なのかもしれない。いい曲なので来年の夏まで覚えておこう。
演奏による各プレイヤーの決め所の気持ちよさ、バンドが構築するロックサウンドの楽しさを絶妙な足し算で魅せるのがEzoshika Gourmet Clubの“らしさ”かもしれない。ぶつかることなく、熱すぎることなく、絶妙なバランスで時代の鏡となる気分をポップミュージックとして昇華してくれる。ライブを日常でフルで楽しむのは難しい環境がまだ続くかもしれないが、チャンスがあったらぜひ風変わりなバンド名、Ezoshika Gourmet Clubを覚えておいてほしい。バンドが持つ、ヒットの予感漂う楽曲パワーの可能性。2021年はギターロックシーンが面白くなりそうな気がする。
■ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
Yahoo!ニュース、J-WAVE、NHK、Spotify、LINE MUSIC、AWA、ミュージックマガジンなどで書いたり喋ったり選曲したり考えたり。Spotifyで公式プレイリスト『キラキラポップ:ジャパン』を毎週火曜日更新で選曲中。Twitter
■リリース情報
Ezoshika Gourmet Club『モミジノススメ』
10月21日(水)リリース ¥1,800+税
<収録楽曲>
1.東京
2.猫と占いと家具屋
3.弾ける炭酸
4.青山通り
5.スカート
6.昨日の月にさまよえば
7.六畳間のヒーロー。