稲垣吾郎にとって『ベートーベン250』アンバサダーは運命的な“適役”であるーー闇を照らす光を放つ、両者に共通するもの

 稲垣吾郎が、NHK『ベートーベン250』プロジェクトのアンバサダーに就任した。『ベートーベン250』とは、ベートーベン生誕250年を迎えた今年、数々の名曲や彼の人生について触れる特集番組を、年末にかけてほぼ毎週放送するというもの。そのアンバサダーとして、稲垣も様々な番組にゲスト出演を果たしている。

 10月17日には、稲垣が「いつも見ている」と言う『ららら♪クラシック』(NHK Eテレ)に登場。ベートーベンが唯一作曲したというオペラ『フィデリオ』の魅力について、共に紐解いた。稲垣は2015年より舞台『No.9 -不滅の旋律-』でベートーベン役を演じた経験を持つ(この12月から再々演が決定している)。2018年には『稲垣吾郎“運命“に出会う。~ウィーン ベートーヴェンの旅~』(BS-TBS)で、オーストリアのウィーンを訪問。縁の地を尋ね、彼の生涯に思いを馳せた。

 ベートーベンのことを話すときの稲垣は、なんだか他人事とは思えない表情を浮かべる。演じてきたというだけではなく、ベートーベンの人間性そのものにシンパシーを感じているよう。多くの人がベートーベンを知るとき、それはきっと音楽室の肖像画ではないだろうか。他の音楽家に比べて、少しミステリアスな雰囲気を持つベートーベンだが、実際はかなり人間味あふれるところがあると微笑む。そのギャップは、まさに稲垣のそれと近いように感じる。

 『ららら♪クラシック』では、ベートーベンが生きた時代、オペラで成功すると大きな名声と収入が得られたと解説。だが、ベートーベンが残したオペラは『フィデリオ』ただ一つ。それは、ベートーベンの持つこだわりの強さからだというのだ。

 当時のオペラは恋を描く華やかなストーリーが人気だったが、ベートーベンが描きたかったのは、人びとがより良い社会を目指そうと思えるような物語。時はフランス革命の直前。『フィデリオ』は、無実の罪で幽閉された夫を助けるため妻が男装して牢獄に潜入、救い出した彼女をみんなが称えて終幕するというもの。権力や理不尽さに屈することなく、愛と平和のあふれる世界こそ理想だと訴えるのだ。

 「闇から光へ」ーーそれが様々な苦悩を乗り越えてきたベートーベンが、生涯をかけて伝えていこうと決めたメッセージだった。求めていた物語がやっと見つかったベートーベンだが、いざ作曲するとなるとここでもこだわりが炸裂。訴えたい想いが強いがゆえに、長すぎる前奏、さらに器楽的で歌い手が苦労するメロディ……そんな不器用で情熱的なベートーベンの気持ちを代弁するように話す稲垣が印象的だった。

 本当にベートーベンが言った言葉かは定かではないけれど……と、前置きをした上で「“楽器はいいな”というセリフがあるんです」と語りだす。楽器はそのとおりに音を出し、手入れをしたらそれだけ返ってくる。けれど、人間はそう単純ではないから難しい、というセリフに、ベートーベンらしさを見出した稲垣。

 まるで、人に対して押し付けることを嫌い、適度な距離を保つ信念を持つ稲垣自身をも表しているかのようなセリフだ。人との関わり合い方は一見クールだが、自らが願うより良い社会へのメッセージはこだわりが止められないほどエネルギッシュ。そんなベートーベンと稲垣の中にある、共通したものを感じずにはいられない。

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