cadodeが表す“虚無と情動”を織り交ぜた音楽性と時代感 「生きづらさを熱量に変えたい」

cadodeが表す音楽性と時代感

 半歩先の時代感を鏡のように表現する3人組、cadodeが気になってしょうがない。自らを“誰かの生きづらさを熱量に変える廃墟系ポップユニット”と定義する謎めいた彼ら。ロゴやイラストのデザイン性の高さ、ドット絵を駆使したクリエイティブなど、カオスな2020年の時代感をエモーショナルに表現している。

 cadodeは、ボーカルと作詞を手掛けるkoshi、ミュージックプロデューサーのeba、ジェネラルマネージャーの谷原亮という、今の時代に即した亜種スタイルで2017年8月に活動をスタート。ストリーミング時代のサイクルの早い音楽シーンの波を、インパクトのある配信シングルや配信EPを立て続けにリリースすることによってインディペンデントかつノンプロモーションながら、アンテナの早いミュージックラバーや「Early Noise」などSpotify公式プレイリストに発見されてきた。

 10月14日にリリースした最新曲「誰かが夜を描いたとして」では、よりメインストリームを駆け上がる気概を感じるキャッチーさと、オリジナリティである“虚無と情動”を織り交ぜた煌めいた作品性によって、またひとつステップを駆け上がろうとしている。2021年へ向けて、要注目の新しい才能にはじめて話を聞いてみた。(ふくりゅう / 音楽コンシェルジュ)

“誰かの門出になれれば” 

ーーcadodeは、頻繁にリリースされる作品のクオリティの高さはもちろん、メンバー内にマネージャーがいるという編成もユニークですよね。なぜこの3人が出会い結成することになったのでしょうか?

koshi:最初に、ebaさんと僕が友達の友達の友達を通じて出会って。

ーーけっこう遠い(苦笑)。

koshi:ははは(笑)。お互い友達を連れてくるみたいな集まりがあったんです。そこでebaさんと仲良くなって。その頃僕は音楽をやっていなかったんですけど、“廃墟好き”という共通の趣味で盛り上がって。

eba:一緒に遊ぶようになって、なんかのきっかけでkoshiとカラオケに行って。そうしたら、急に才能の原石が目の前にあらわれたぞって(驚)。普段僕は、作家として音楽をやっていまして。作家ってオーダーに合わせて楽曲を作る仕事じゃないですか。自分で自由な表現をいつかやってみたいなと思っていたんです。koshiという原石と一緒に作品を作りたいと思ったんですよ。聞いたら本人もやりたいって言ってくれて。

koshi:僕も二つ返事で。当時は、普通に働いていた頃だったんです。渋谷のIT企業で。

ーーへえ、思い切りましたよね。

koshi:仕事はまた別の理由で辞めているんですけどね。迷いもなく。音楽の方が天職というか、人生で一番楽しいです。

eba:僕も、サラリーマン経験があったので気持ちがわかりましたね。そして、谷原は事務所のマネージャーで。僕とは作家とマネージャーという関係だったんです。普通はkoshiと僕がメンバー、そして、谷原はマネージャーというのが一般的なユニットだと思うんですけど、谷原には“メンバーとして関わってほしい”と話して。音楽を作る側にきてほしいなと思って。

谷原:仕事としてか、自分ごととしてやるのかって全然違うなって思うんです。やっていることはマネージャーなんですけどね。連絡の窓口やお金関係など。あ、ステージには立っています。

koshi:コーラスもやってるからね。

ーーそうか。ライブのステージにも立つんですね。

eba:こうして3人組になりました。

ーーおもしろいなあ。そんな風変わりなポップユニットcadodeは、毎回楽曲コンセプトが明快というかジャンル的には振れ幅が大きそうですが、しっかりとしたメロディを持ち、歌ものである軸がしっかりしているんですよね。あと、キーワードとなるのは“青春期の葛藤”。cadodeとして表現したい音楽性を3人はどのように共有されているのでしょうか? cadodeを表すキーワードがあった?

koshi:この3人は、“青春期の葛藤”のイメージが近いところから一緒に音楽を作ることになったかもしれません。曲の作り方としては、今は曲先で詞を書いているような状況で。最初に数曲作って結果的に“虚無と情動”というキーワードが生まれた感じですね。あと、知り合ったきっかけでもある“廃墟”という言葉もあってにじみ出ているのかな。

eba:3人とも青春に悔いがあるんですよ。あがいてもがいて、諦めきれずに青春を取り戻そうとしている感じというか。はたから見るとカッコ悪いかもしれませんけど。

谷原:そうなんですよ。生きづらさを熱量に変えたいんです。

koshi:そうそう、取り戻している感じで。

koshi

ーーそういえば、koshiさんはcadodeが音楽活動はじめてなのに、なんであんなに個性的かつ素敵な歌詞が書けるんですか?

eba:才能の原石なんですよ。ゼロスタートなのにね。はじめに書けたのが才能ある証拠ですね。

koshi:ありがとうございます。言葉は勝手に出てきますね。にじみ出てくるというか。空想ではなく体験をもとにしています。自分の言いたいことを書いています。もともと大学で哲学を専攻していたので、その頃の蓄積がありますね。

ーーebaさんのトラックも情報量もめっちゃ多くて、でも小難しくなくてキャッチーさも持ち合わせているという。

eba:昔、メタルが好きだったりハードコアな音楽が好きだったんですよ。そこを経た上で、作家という求められるポイントに答える仕事をしたミックスされた感じがcadodeなのかな。好きな音楽のルーツはバイキングメタルなんですよ。けっこう、民族楽器とか取り入れられていたりオリエンタルな要素があって、土着的な思想や民謡要素もあるという。

eba

ーーなるほど。cadodeに通じる要素はありますね。なんで作家になろうとしたのですか?

eba:もとは田舎生まれで普通に就職していまして。アニメが好きだったんですよ。きっかけは『けいおん!』が好きで、その音楽を作っていた方が富山にいて。僕は、富山の人が作っているってことに感動したことを伝えたくて、直で電話して(苦笑)。あ、自分こういうヤバイおたくだったんです。

一同:ははは(笑)。

eba:会話の流れで僕も音楽をやっているって話したら“じゃあ聴いてあげる”って。それで、いまの事務所の社長にデモを送ってくれたことから人生が変わりました。棚からぼたもちですよね。ルートを外れてもいいんだよってことを自分で体感できたことが衝撃で。

ーーそういった部分がcadodeの本質であったり音楽性にあらわれてくるんですね。

koshi:そうそう、前向きに“どうとでもなる感”ですね。

ーーある種のパンク的な感覚ですね。ちなみに、koshiさんは幼少の頃バイオリンをやられていたんですか。

koshi:小学生の頃ですね。その後は耳コピで好きな曲を弾いたり。

ーーどんな音楽が好きだったんですか?

koshi:QUEENや宇多田ヒカル、BUMP OF CHICKENですね。そこからは、ボカロや平沢進で。

ーー平沢進はアニメきっかけ?

koshi:映画『パプリカ』ですね。その後、P-MODELへと遡って。

eba:みんな平沢進好きだよね。

koshi:そうだね。その後は、Bon Iverだったり、数年おきに好きなものが変わっていくタイプですね。最初J-POPが好きだったのがだんだん遠回りするようになって。そして今は自分たちで新しいJ-POPを作りたくなったという。

ーーいい流れです。ちなみにマネージャーの谷原さんももともとバンドマンなんですよね。

谷原:学生時代にバンドをやってました。

koshi:実は一番ステージ経験があるっていう(笑)。

eba:頼りになりますね(笑)。

谷原亮

ーーcadodeというバンド名の理由は?

koshi:結果的には“誰かの門出になれたら”って言っているんですけど、実は最初の最初は浅野いにおさんの漫画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』の主人公の名前、小山門出からなんです。

ーーなるほど。

koshi:アニメ化される際には関係者の皆さん、待っていますから(暗黒微笑)。

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