櫻井孝宏、中村悠一、神谷浩史、福山潤、小野大輔、入野自由……『おそ松さん』で技の限りを尽くす、声優たちの演出力
一松の“普通”という軸、十四松のピュアネス、トド松の絶妙な“いけ好かなさ”
松野家四男・一松は6人のなかでは一番見た目が“ヤバそうな人”。つねに半目&猫背、髪の毛はボサボサで笑った顔をほとんど見ない。普段は口数が少なく、ボソボソと喋る一松を福山潤が演じるというのは意外だったが、彼自身、最初の数話はキャラクターづくりに試行錯誤していたようだ。その方向性が決まったのが、第1期5話『エスパーニャンコ』だろう。一松の本音や十四松との絆が明らかとなった『おそ松さん』屈指の人気エピソードだが、これをきっかけに“狂人を装った普通の人”という軸を掴んだ福山は、さまざまなアプローチで一松の魅力を表現するのだった。
松野家五男・十四松は、小野大輔が演じたことで最もハネたキャラクターではないだろうか。「マッスルマッスル、ハッスルハッスル」に代表される独特な抑揚がついた十四松の口癖は、小野にしか生み出せない“十四松=明るい狂人”像をつくりあげ、視聴者に強烈なインパクトを与えた。その効果は、例えば第1期9話の『恋する十四松』や先述した『エスパーニャンコ』といった、十四松の根幹にある優しさやピュアネスが垣間見える際に最大限に発揮される。狂人と純真のコントラストを、普段のイケボを封印し演じきる小野の技術に脱帽する。
『おそ松さん』のキャスト取材の際にもうひとつよく聞くのが、「トド松を演じる入野(自由)くんのアプローチが面白い」という話。黒目が大きめでアヒル口が特徴の“あざと可愛い”松野家の末っ子・トド松を演じる入野は、中村いわく「ぶりっ子をしながらも、人がイラつく絶妙なところを突いてくる」。たしかに、入野が演じるトド松を観るたびに「いけ好かないけど、やっぱり可愛い」と思ってしまうのは筆者も同様だ。そんなトド松が可愛さを忘れてキレる第1期7話『トド松と5人の悪魔』、兄たちを虫けらのように扱う“ドライモンスター”時の入野の芝居も見事だ。
以上、これまでにそれぞれが演じてきた6つ子の魅力を紹介したが、第3期は「かつてない新展開が待ち受ける!?」とのこと。先日公開されたPVに映る、謎の双子らしきキャラクターはいったい!? 第3期の『おそ松さん』は一波乱も二波乱もありそうだ。6兄弟の合いの手が入る、第3期EDテーマ「Max Charm Faces ~彼女は最高♡♡!!!!!!~」にも期待したい。
■とみたまい
フリーライター。主に声優、アニメ、特撮などのジャンルにおいて、インタビュー取材を
中心に活動中。
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