Have a Nice Day!がファンと掴んだ不自由の中の自由 音楽に触れる喜びに満ちたO-EASTワンマンをレポート

ハバナイ、喜びに満ちたO-EASTワンマン

 モッシュピットとシンガロングが存在しないHave a Nice Day!(以下、ハバナイ)のライブにオーディエンスはどう反応するのか。そもそもそれはハバナイのライブなのか。そんな思いを抱えながら足を運んだファンも多かったと思う。しかし、この夜、最も感銘を受けたのは不自由の中で見つけた自由を体現するファンの姿だった。

 全国的にイベントの自粛要請が出された今年2月26日。その翌日に開催した恵比寿LIQUIDROOMでのライブ以来となった、今回の『Have a Nice Day!ワンマンライブ C19 Rhapsodies』。ニューアルバム『Rhapsodies 2020』のリリースに伴うタイミングではあるが、本作の歌モノは5曲。セットリストは新作という最もリアルタイム性のあるレパートリーからスタートしつつも、実質、現時点でのハバナイの音楽的かつメッセージを代表する包括的なセットリストが組まれていたように思う。

Have a Nice Day!

 入場に際しては問診票、身分証明、検温、消毒。フロアは1階も2階もソーシャルディスタンスを保つための立ち位置が示され、徹底した感染症対策が講じられていた。300人限定で、20時開演だが18時半から余裕を持った入場を行い、開演前のフロアには最前列を確保するやる気満々なコアファンもいれば、会社帰りで鞄を置き座り込んで待機する人も。ファン層の広さは変わらない。

 バンド初のインスト「BRIGHT HORSE」が入場SE的に流れ、ライティングも派手に明滅する中、メンバーが登場。最初のブロックは新作からシニカルでエッジの効いた3曲、「GET UP KIDS!!!」「LOCK DOWN」「TOO LONG VACATION」を立て続けにプレイ。特に浅見北斗のバックボーンにあるバンドや楽曲が網羅されていく「LOCK DOWN」では、世界がコロナの脅威に晒されようと、我々アンダードッグはパーティーを続けるぜというメッセージに、各々の場所でオーディエンスがユラユラ揺れ始める。前後左右の空間をいいことに、最初から全力で踊るファンも。生え抜きの面々が集合した印象だ。

 感覚としてのディストピアがコロナによって、全人類の現実になった側面もある今、新曲に続いて出し惜しみなく名曲「ファウスト」をセットしたのは効果的だった。〈本当は世界平和なんてどうでもよくて あなたを支配して めちゃくちゃにしたいだけ〉というリリックが、今年の春以前より刺さるし染みる。ソーシャルディスタンスを保っているがゆえに各人の反応がビビッドに伝わってくるのだが、シンガロングで感情を発散できない分、手をあげたり、自由なムーブを行う「僕らの時代」の光景は美しかった。とはいえ、曲が終わるたびに浅見がMCをしようとすれば、いつも通りヤジも飛ぶし、笑いも起こる。モッシュは危険だがマスク越しの大声は確かに危険とは思えない。その判断がフロアとステージに作用して、いつもの汗まみれの多幸感とはまた違う、今ここでハバナイの音楽に触れている喜びに転化されていく。

 「愛こそすべて」「マーベラス」など名曲を連発し、広いステージを動き続ける浅見。新たなドラムのGOTOもタイトな16ビートを堅持し、アンサンブルも安定している。これが7カ月以上ワンマンライブをやってないバンドなのか。むしろ以前よりクオリティは上がっているように感じる。ポップミュージックとして強度を増した演奏が「わたしを離さないで」の切実さを鮮やかなものにしていたのは確かだ。ここにきて、ジャンプする人、踊る人などなど、個々のエモーションがだだ漏れのムーブが加速する。

Have a Nice Day!

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