SLOTHREATの“ハイブリッド”な音楽性はいかにして生まれたか 絶妙なバランス感覚を『THEMIS』 から紐解く

SLOTHREATの“ハイブリッド”な音楽性

 もちろん、素材をやみくもにかき集めて鍋の中で一緒に煮ただけでは優れた楽曲は生まれない。SLOTHREATの特徴の一つは、多様なリファレンスをひとつの曲として成立させるバランス感覚だ。例えばアルバムのオープニングトラック「現人」は残響を伴いながら左右のチャンネルのあいだで揺れ動くギターの単音に始まり、高揚感を高めつつも凪いだドラミングに誘われてボーカルが入ってボルテージを上げてゆくかと思えば、一瞬の無音のあとに重低音の上を高音のトレモロフレーズがひっかき傷をつくる。続いて再びボーカルが大きな波を立てるが、高波に乗ることはせず、冒頭を思わせる静謐なパートが訪れる。ギターの音のみまでレイヤーが削がれた次の瞬間、バスドラムの礫とともにフックに入る。初聴のリスナーが簡単に気持ちよくなれる展開への道筋は見えているのに、飄々と想定外のレールに飛び移ってしまう。

現人

 彼らは知っているのだと思う。舗装され尽くした道を駆け抜ける気持ちよさは味気ないということを。だから、先の見えない獣道へと誘うのだ。持ち前のバランス感覚をもってして重心を柔軟に移動させ凹凸をいなす運転に不快感は伴わない。加えて、表層的な聴き方をすればキャッチーな歌ものとして楽しめるときている。人好きのする顔で近づき、そっと皮下に毒を注入する食わせ者のような音楽だ。きっとこれから多くのリスナーを歯牙にかけるだろう。無意識にハイブリッドの中毒者と化した者たちを満足させ続けるのがSLOTHREATの使命なのかもしれない。

■清家咲乃
1996年生まれ。青山学院卒。BURRN!編集部を経て現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。ヘヴィミュージックを中心に、ルーツロックからヒップホップまで幅広く好む。『エクストリーム・メタル ディスク・ガイド』などに寄稿。

■リリース情報
SLOTHREAT
1st FULL ALBUM 『THEMIS』  
2020年9月25日(金)発売
<収録曲>
01.現人
02.ILLUMINATE
03.Deceive & Leave
04.Face It
05.明滅する記憶の代償
06.氷面鏡
07.軀謳
08.Daybreak
09.What are we for?
10.LIVE FREELY

各ストリーミングサービスにて配信中

CD:SLOTHREAT公式通販限定販売 
『THEMIS』(2CD)¥3,500(税込)
[DISC1]THEMIS
[DISC2]THEMIS (Instrumental Edition)

THEMIS(2CD+THEMIS T-Shirt)¥7,000(税込)
[DISC1]THEMIS
[DISC2]THEMIS (Instrumental Edition)
+THEMIS T-Shirt
※数量限定販売
※Tシャツカラー2種類。フリーサイズ
※THEMIS (Instrumental Edition)の配信リリースはございません。

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