コナン・グレイの歌う“若さ”が胸を打つ理由とは? テイラー・スウィフトを虜にした、若きシンガーソングライターの魅力に迫る

 騒がしいパーティや飲み会の類で「はやく帰りたい」と思ったことがある人は多いだろう。では、片思い相手や好きな人の「死」を願ったことは?

 やや過激な始まりになってしまったが、1998年アメリカ生まれのシンガーソングライター、コナン・グレイはそんなエモーションを歌いつづけている。デビューアルバム『Kid Krow』(2020年3月)に収録された「Wish You Were Sober」は、盛り上がるパーティのなか「ここは最悪だ」と心中で悪態をつきながら、酔っ払った時にだけ優しくしてくれる相手に「君がシラフだったらいいのに」と願うポップソングだ。キャリア中もっとも正直な歌と語られた「Heather」の場合、片思い相手が恋をしているヘザーという女性に対して「天使みたいな子だから嫌えるわけがない、でも死んだらいいのにと願ってしまう」と苦悶する内容になっている。

Conan Gray - Heather (Official Music Video)

 現在21歳のコナンは、幼少期より引っ越しを繰り返したのち、シングルマザーのもとテキサスの町で育った。ティーンエイジャーの頃よりYouTubeを通してハードな家庭環境や学校生活、不安や怒りを表現してきた彼にとって、前述したような、ちょっと面食らう赤裸々な表現はトレードマークと言っていい。好例として、2018年のヒット曲「Crush Culture」はこんな風に始まる。「スマホなんて見るなよ/君に電話なんてこない/音量チェックするのもやめろ」(〈My god don’t look at your phone/No one’s gonna call you/Quit checking your volume (crush)〉)。キスもデートも経験したことがない19歳の視点から同級生の恋愛文化を批判する愚痴のような楽曲で、ミュージックビデオに至っては「うんざりしてる キスしまくりカルト(儀式)に」(〈I’m sick of the kissing cult〉)と歌うコナンが学校中のカップルを邪魔していくコメディになっている(キュートなオチつきだが)。

Conan Gray - Crush Culture

 ドリーミーなインディポップサウンドと高揚感あるコーラス、そして独特でパーソナルな歌詞によって、コナン・グレイはスターダムにかけあがった。人気アーティストからの支持も厚い。同じく不安や憂鬱を歌う若者としては、ビリー・アイリッシュやホールジーの名前が挙がるし、「彼のような音楽スタイルに挑戦したい」と語ったことがあるBTSメンバーのVとはコラボの話も出てきている。また、オルタナティブなバイブスもあるとしてロック系メディアからも注目されており、Panic! At The Discoの前座を任された経験やThe 1975のマシュー・ヒーリーとの交流を持つなど、ポップロック方面のバンド群とも近しい。

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