sumikaが初のオンラインライブで示した2つの“諦めない心” 剥き出しのサウンドを全方位に届けた『Little Crown 2020』レポート

sumikaが初のオンラインライブで示した2つの“諦めない心” 剥き出しのサウンドを全方位に届けた『Little Crown 2020』レポート

 sumikaが初のオンラインライブ『Little Crown 2020』を9月25日に開催した。『Little Crown』とは、“普段はできないちょっと贅沢なことをやる”という趣旨で不定期開催されているライブシリーズの名称。元々、MVやアートワーク、ライブにおけるステージセットなど、曲自体のみならず、クリエイティブ全般にこだわりを持っていたsumikaとそのチーム。また、制作の過程で生じる人と人との想いの交わし合い、化学反応に楽しさを見出してきた人たちだ。有観客ライブをあたり前のように開催するのがまだまだ難しい今は、裏を返すと、これまでのルールが一旦なしになった状況。ここでsumikaが面白いライブをしないわけがなかった。

 まず画面に映ったのは、アコースティックギターで哀愁あるコードを爪弾く大人のピエロと、絵本を読む子供のピエロ。ピエロたちがいるのは円形のスペースで、彼らを囲むようにメンバーらが定位置についた。スタンバイする片岡健太(Vo/Gt)、荒井智之(Dr/Cho)、黒田隼之介(Gt/Cho)、小川貴之(Key/Cho)の姿をカメラが捉えたあと、ライブロゴが大きく表示され、アコギの音が止む。

 ここからの走り出し――もっと言うと、最初の13秒がめちゃくちゃすごかった。始まりの合図は片岡のブレス。歌声のハーモニーで風を吹かせると、星が弾けるようにシンバルが鳴り、キーボードのグリッサンドを機に全方位からカラフルな光が集まってくる。溢れるバンドサウンドは、ベース、弦楽カルテット、トランペット/トロンボーン/サックスから成るブラス隊、コーラス3名を加えた総勢15名によるもの。「sumika、始めまーす!」と片岡がおなじみの挨拶をするまでの間に、一気に別世界へ連れていかれた。衝動的に上がった、マイクには乗らなかった叫び。演奏しながらもついつい弾んでしまう足取り。口ずさまれるリズムや歌詞。メンバーが心底楽しそうに、気持ちよさそうに音を鳴らしていることが早々に伝わってくる。まるで画面なんて隔てていないみたいに。

sumika

 メンバーのいる場所は私たちがよく訪れるライブ会場ではなさそうで、どこかと思えば、後のMCで、木下サーカスに場所を借りたことが明かされる(戦後の焼け野原にサーカステントが1つ、という写真にメンバーが感銘を受けたことから)。かつては、サーカステントを思わせる舞台セットとともにツアーをまわったsumika。思いもよらない(もしかしたら、コロナがなければ実現しなかったかもしれない)伏線回収に笑っていると、片岡が「sumikaの理想が詰まったライブ、それを現実にするのが今日の『Little Crown 2020』です」と宣言し、そこに〈描いた理想と/現在(いま)を繋ぐよ/イコールで〉と歌う「イコール」が続いた。不老不死の魔法使いではなく、時間を費やし、頭を捻った人たちが作り出すエンタメの魔法。彼らの信じる“人肌のマジック”とは、おそらくそういうものを指している。

 キーボードとブラス隊の掛け合い、からのギターソロ、という間奏の展開が熱かった「ふっかつのじゅもん」。荒井渾身のドラムロールがバンドをさらに疾走させた「ファンファーレ」終盤。ランプだけを灯して片岡と小川の二重奏で届けた「ゴーストライター」では、一定ではないテンポによるわずかな揺らぎを感じた。そして転調を重ねるほどやわらかくなっていく「エンドロール」の表情。サックスソロもあり、艶っぽさが増した「Summer Vacation」。「絶叫セレナーデ」と「MAGIC」がもたらす幸福感。バンドの息遣いは画面越しでも確かに感じられる。

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