TOSHI-LOW×ILL-BOSSTINOが語る、今を生きる人たちへのメッセージ「俺らは生まれて死ぬ間にどれくらい楽しむか」

TOSHI-LOW×ILL-BOSSTINOが語る、今を生きる人たちへのメッセージ「俺らは生まれて死ぬ間にどれくらい楽しむか」

 BRAHMANとILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)による『CLUSTER BLASTER / BACK TO LIFE』が、9月30日にリリースされる。両者によるコラボレートは、2017年4月にリリースしたシングル『不倶戴天 – フグタイテン -』に収められた「ラストダンス」以来(参考)。 「ラストダンス」以降も次の楽曲のステップをお互い模索していた中、このコロナ禍でのリリースとなった。

 5月末頃に制作に入ったという今作。今回のインタビューでは、「ラストダンス」以降今作でより明確になった、両者の音楽におけるスタンス、コロナ禍にTOSHI-LOW、ILL-BOSSTINOが考える生き方について石井恵梨子が聞いた。(編集部)

今回はBOSSとBRAHMANが一対一でいたかった

ーーすごいシングルができましたね。

ILL-BOSSTINO(以下、BOSS):ありがとうございます。

TOSHI-LOW:あんま言わないけど、自信作。自信あります。

ーー今回、最初は「ラストダンス」(「ラストダンス featuring ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)」)の映像を作ろうという話から始まったそうですね。

BOSS:そうだね。俺が「動くならこのタイミングじゃない?」みたいなメールを投げたのが、久しぶりのやり取りの始まりで。

TOSHI-LOW:「いいよ、具体的にじゃあどういうふうにやっていこうか」って進めていく、そのメールの最後にBOSSは「でも俺は新しい弾を撃つ準備できてっけどね」って書いてきて。なんかちょっと悔しくなって「俺らもいつでも迎え撃つ準備あるけど?」って、ねぇくせに言っちゃって(笑)。

BOSS:こっちからすれば「よし来た!」みたいな(笑)。

ーーそれが何月くらいですか?

BOSS:全然最近だよ。ここまでの早さで出るとは思わなかった。あれ5月末?

ーーTHA BLUE HERBの『2020』のレコーディングが終わってすぐ。

BOSS:ぐらいです。ただ、TOSHI-LOWたちとまた曲作りたいなっていう思いはずっとあって、リリックはその前から何気に書いてたの。「俺に弾はあるけどね」って言ったのはそのことで。「ラストダンス」でライブに参加させてもらってる時から、次のステップに行きたい、次の曲を絶対作りたいって、それは昔から思ってた。

ーー次のステップというのは、どんなイメージなんですか?

TOSHI-LOW:言ったら自分たちらしい曲ってあるじゃん。緩急があったり、静と動があったり。今回の2曲、初めはもっとそれぞれのらしさを意識してたの。ウチらのパートは速くしたり。でもBOSSに「いや、ここテンポ変えなくてもよくない?」って言われて。俺らは良かれと思って分けてたんだけど、もっと平らにしても感情の起伏は乗せられるし、ちゃんとお互い一緒にいられる。それはBOSSからのアイデア。「変えなくていいじゃん?」って言われたのは俺たちにとってすごく新しかった。

TOSHI-LOW(BRAHMAN)
TOSHI-LOW(BRAHMAN)

ーー「CLUSTER BLASTER」を聴いた後、コラボレーションって何だろうと考えちゃいましたね。辞書には「異なる分野の人や団体が協力して制作すること」とあって。この意味でいえば、もはやこれはコラボじゃないなと。

BOSS:気づけばもう長い付き合いを続けてるし、確かに、異なる、って感じではまったくないね。

ーーTHA BLUE HERBでここまで大声で叫ぶこともないだろうし、ラップの後に歌が来るのかと思いきやTOSHI-LOWくんも言葉を叩きつけてる。ベクトルがまったく同じで。

TOSHI-LOW:BRAHMANという器の中にBOSSが来て歌ってもらう、っていう感覚じゃなかった。「ラストダンス」はどっちかと言えばそれに近いと思うんだけど、今回はBOSSとBRAHMANが一対一でいたかった。っていうのも、俺らはもともと4人じゃん? どうやっても4人対1人になっちゃうから、なんかズルいんだよ。

ーーズルくはないと思うけど(笑)。

TOSHI-LOW:でも多勢に無勢っていうのは一番好きじゃないから。どうしたらいい一対一になれるかなって。それは4人全員がBOSSのことを考えることだった。バンドとしてゲストを迎えるんじゃなくて、メンバー全員がBOSSのリリックを読み込んで、「ここ、BOSSはこう言ってんじゃないのか?」って考えながら楽曲を作り出したから、もう見えてるものが違ったの。それが、コラボなのか何なのかわからない一体感を作り出してるんだと思う。ある種の気持ち悪さもイビツさも全部入ってるというか。

ーー全員のコーラスから始まるのも、全員が一対一っていうこと。

ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)

BOSS:そうだね。この曲に関しては初動の熱量っていうか。THA BLUE HERBで俺がひとりでマイク持ってゆっくり説き伏せていくのとは全然違うんで。完全に臨戦態勢の人間が5人一緒になってやる、それは俺らにない世界だから。初っ端から全開で行くのはマストだった。〈狂ってる〉っていうワードの強さ、その言葉自体の危うさも含めて、クリアするならあれぐらい一気に押して行かなきゃって思ったし。イントロが終わる頃には〈狂ってる〉って言葉に対する迷いなんてどこにもなくなってる。悪びれる気持ちも、後ろめたさもまったくないし。

TOSHI-LOW:なかなかね、今のJ-POPシーンで〈狂ってる〉と〈皆殺し〉から始まる曲ってないでしょ。

ーーははは。一応聞くと、レコ倫には引っかからないんですか?

TOSHI-LOW:使い方次第なんだって。誰かを殺してるわけではないから大丈夫みたい。でも俺らが作るならね、今さら「え、原発って言っちゃうの?」なんて確認もいらないでしょ。

BOSS:世の中ではもう過去のことかもしれないけど、あの原発事故を今も歌うべきものとして据えてるグループって今となってはそんなにいなくなったと思う。原発事故は俺らが生きてるうちは終わんないから、常にそこに対する思いはあって、同時にそれは10年後、20年後も問題はまだあって、それに対する世の中の受け止め方も変化してるんで、これはずーっと歌っていくテーマだなって思う。

ーーこの数年、原発、あと国家に対しての気持ちはどう変化してます?

TOSHI-LOW:言ったら、ほんとは絶望しかないくらい酷い国だなって。でもみんなもわかってるじゃん。毎日ニュースも「コントなのかな?」っていうことばっかりでしょ。でも、わかってるのにみんな言わない。で、社会なんていうのは自分の頭の中で作り上げたものであって、逆にいうと、一人ひとりの頭の中に社会があるわけ。だから社会を良くするためには一人ひとりが変わる、自分が変わるしかない。結局「お前がやるしかない」「自分でやるしかない」っていう発想なんだけど。そういうふうに俺は見てるから、社会をシニカルにも見れるし小馬鹿にもできる。それがより強くなったとは思うかな。

BOSS:そうだね。前回「ラストダンス」で歌ったのは原発に関するこの国の取り組み方、それに対するクエスチョンだったけど。今は世の中のぶっ壊れ具合がさらに進行してるから、もう突っ込みどころが多すぎて。俺らは生まれて死ぬ間にどれくらい楽しむか、っていうことだけで、あんな政治にいちいち付き合っていらんないとも思うんだけど。それでもやっぱり黙ってられないことがここんとことても多くて。「政治家とはその国の国民の平均レベル」ってよく言われるんだけど、今の政治が存在してるのは結局この国の人たちがあれをチョイスして、あれを多数派にしてるわけで。僕らはずっとマイノリティとして生きてて。歌うべきことが世の中がぶっ壊れてると思う点にあるというのは皮肉なことだけどね。今も歌うことたくさんあるな、相変わらず、って感じですね。

ーー今回は、福島の人の声を代弁するとかじゃなく、もう全方位に向けた感じですよね。

BOSS:福島でも沖縄でもどこでも、こういった言葉の基になるインスピレーションはあらゆる不条理や不公平から受けるけど、最後は俺は俺の主観でしか言えない。大きな意味ではもちろん当事者の1人だけど、やっぱどこまで言ってもその人にはなれない。同情することはできるし、募金したり物資を送ることもできるんだけど、背負ってる苦しみと逆境を跳ね返すことができるのかってなると、俺にできるのは言葉を投げかけることしかない。福島に限らず、今を生きてる人たち皆に投げかけるよね。「それでいいの?」っていう姿勢は常にある。

ーーそれは、怒りとは違う感情ですか。

TOSHI-LOW:むしろ怒りじゃない気がする。「立ち上がれ! デモしようぜ」みたいなものでもないし。怒りじゃなくて「見て? このサマを」みたいな。どっちかと言うと絶望コントをみんなで見ようとしてる感じ。「でも見にいこうよ、ちゃんと目を見開いて」みたいな。

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