JO1「OH-EH-OH」も手掛けたPENTAGON フイ、“作曲ドル”としての実力と功績 カラーを考えて制作するスタイルが魅力に
「その人のカラーを考えて作る」フイの作曲スタイル
フイの作曲家としての強みは「どんなスタイルの曲も作れること」だろう。実際、PENTAGONの楽曲の中でも「You Are」「When I Was In Love」のようなエモーショナルバラード曲から、「SHINE」「Naughty boy」のようなコミカルでキュートな曲、叙情的な切なさが漂う「Like This」「RUNAWAY」、そしてハードでアグレッシブな「Dr.BeBe」「Basquiat」まで、彼が作り上げてきた楽曲のスタイルは多種多様だ。しかし、そのどの曲にも一貫してしっかりしたフイのカラーがある。それは他のアーティストに提供した曲も同様だ。
「他のアーティストの曲は、その人だけのために書いているので、もったいないと思ったことはない」(参照:news1KOREA)と韓国のインタビューで語っているフイ。「誰かが曲を依頼したら、その人に似合いそうなストーリーやドラマを描く」(参照:ARENA)という彼のスタイルは、曲のストーリーを大切にするのだという。例えば、『PRODUCE X 101』のコンセプト評価で披露された「少年美」では、「幼いけどセクシーになれる」にポイントを置き、純粋だがどこか色気のあるイメージの少年に合わせてストーリーを作っていった。
そして作曲の過程では「その人をよく知る作業」を行うという。アルバムジャケットや、雑誌の写真を見たりしながら、「その人に合うテーマ」を探る。この作業により、ぴったり合う楽曲が生まれてくるのだ。
たとえば、結成22年を迎える神話(SHINHWA)には、彼らの持つアダルトな雰囲気を生かすバラード曲「Don’t Leave Me」、Wanna One出身のオン・ソンウには彼のキャラクターに合わせた爽やかな楽曲「Heart Sign」を、独特な世界観を持つガールズグループ・BVNDITにはガールクラッシュを感じさせるパワフルな曲「Dramatic」を、といった具合だ。
フイと多くの共作を行ってきたロデュースチーム・Flow Blowのメンバーは以前「彼の作るガイド音源(歌を録音をする際にガイドに流す音源)が素晴らしい」と語っていた(参照:NAVER)。フイはV LIVEなどで度々ガイド音源を披露しているが、主にフイ本人が仮歌を入れたその音源は、アレンジやボーカルディレクションを含め、ほぼ世界観が仕上がったものだ。このガイド音源を元に録音作業が進むため、フイが作り上げた世界観はほぼそのまま生かされ、音源が仕上がるのだろう。
フイの楽曲の一番の特徴は「2つあるサビ」だ。彼が手掛けてきたほとんどの曲にサビになりうるメロディが2つ存在している。曲のメインとなるメロディが2つあることで曲を一層盛り上げていくのだ。
そして、彼の作る曲はその時の流行だけを意識したものではないこともポイントだ。もちろん流行のサウンドは取り入れている部分もあるが、あまり意識しているわけではないようだ。流行のサウンドにとらわれるあまり、毎シーズン似たような楽曲に偏りがちなK-POPシーンにおいて、トレンドに流されることなく独自の世界観を作れているのは貴重だろう。
JO1らしさを引き出した「OH-EH-OH」
JO1の「OH-EH-OH」は、耳に残るイントロのコーラスが印象的だ。多くのファンは、PENTAGONの「SHA-LA-LA」のようにサビに向かって一気に盛り上がる特徴的な曲展開と、PENTAGONを彷彿させるラップパートで「これはフイが作曲したのかも」と感じたようだ。聴いただけでわかるフイの世界観があるのだろう。
「提供する相手に合わせて曲を作るスタイル」であるフイが提供したこの曲は、K-POP要素がありながらもメロディを重視しているJ-POPらしさをしっかり感じられる曲になっている。歌詞も力強く夢に向かう姿や友情をテーマにしており、JO1の今回のコンセプトに合わせた楽曲に仕上がっている。
「Never」から始まり、“プデュ”には何度か関わりヒット曲を生み出してきた彼だが、今回の「OH-EH-OH」で日本版“プデュ”から生まれたJO1にも曲提供をしたことは、多くのファンを喜ばせた。それに加えてメンバーの川尻蓮がPENTAGONの日本ツアーでバックダンサーを務めた経験があるというドラマティックな展開に多くのファンが心をときめかせた。
川尻は先日行われたショーケースで、フイが「OH-EH-OH」の作曲手掛けたことついて「こんなご褒美が待ってるとは思わなかった」と語っていたが、この曲でJO1もフイに新たなシナジー効果を生み、また違った形の「ご褒美」に繋がるかもしれない。
今、フイは彼にとっての初のミュージカル『狂炎ソナタ』に挑戦している。9月まで公演が続き、9月公演は日本でのオンライン配信を行う。「自分と似ている部分がある」という悲運の天才作曲家・Jを演じることで、新たな世界を広げるだろう。そして、また素晴らしい楽曲を作り上げてくれることを期待したい。
※記事初出時、一部情報に誤りがございました。訂正の上、お詫びいたします。
■西門香央里
東京在住のフォトライター。K-POP、韓国トレンド、旅行、グルメ、カルチャーなどを中心にWebメディアなどで活動中。年3~4回の渡韓でエネルギーを蓄えている。いつまでも年齢不詳でありたい通年おかっぱの人。座右の銘は「努力は裏切らない」。
寄稿媒体:いまトピ、エキサイト、TABIZINE、SHELBEE…等