パノラマパナマタウン、新宿ロフトでの無観客ライブをレポート スリリングなロックンロールに垣間見えた“タフな成長”
今のパノラマパナマタウンをどう思うか、このライブで判断してもらって構わないーー気負いや覚悟じゃなく、清々しいほど真っ直ぐにそう宣言されたような、いい重みのあるライブ。それが初の無観客配信ライブ『PPT Online Live「On the Road」』の核心だったように思う。
今年1月の恵比寿リキッドルームを最後に岩渕想太(Vo/Gt)の声帯ポリープ摘出のためしばしの活動休止。さらに2月1日には田村夢希(Dr)の脱退が発表されたが、バンドは前向きで同月8日には日比谷野外大音楽堂で過去最大キャパでの『パナフェス2020 TOKYO』の開催を発表。フレデリック、PELICAN FANCLUB、夜の本気ダンス、マカロニえんぴつを迎えて盛大に開催される予定だったが、直前に中止を余儀なくされた。それ以降もライブハウスや主催者の事情で出演予定のライブが延期・中止になったが、それは他のバンド・アーティストも同じ状況だ。ただ、再出発をライブという場で果たせないことを含め、この半年パノパナに起こったことは相当な試練であったことは間違いない。しかしこの日、半年ぶりに配信という形で目の前に現れたパノパナ、特に岩渕の表情は何か吹っ切れた凄みすら感じさせた。
21時のライブスタートまでのアイドルタイムに過去のライブ映像や楽曲を流し、今回のライブタイトルである「On the Road」が流れ、本編へ。暗い照明の中に浮かび上がったのはメンバーが向かい合う陣形のフロアライブ。岩渕の「やろかい」の一言から「SHINKAICHI」がスタートし、出自である神戸・新開地というルーツを示唆する。噛みしめるように歌う岩渕と冒頭から気合入りまくりの浪越康平(Gt)、タノアキヒコ(Ba)が対照的だ。
ガレージパンク、ノーザンソウル......手持ちの楽器と魂だけで世界は変えられる、60年代のブリティッシュビートや70年代のパンクから綿々と続くメンタリティ。いやー、めちゃくちゃバンドっぽいバンドだなとバカみたいな感想が浮かぶ。この日は岩渕がほぼギター&ボーカルだったこともその印象を強めたのかもしれない。ダンサブルな「Top of the Head」も落ち着いたカメラワークでどこかフィルムノワールな印象すらある。ロフトの青い壁とボタンダウンシャツの浪越は一枚の写真のような収まりの良さで、相対して金髪が伸び、髭を剃ったタノはキュートな印象で、アクティブに動く。キャラクターのバラバラさはステージを正面から見るより際立って映る。
岩渕は向かい合うスタイルとカメラ位置に「やりにくっ! どこ見たらええんやね」と言いつつ、「もういやっちゅうほど新曲やるんで」と、サポートドラマーの大見隼人が合図を出したその曲のリズムと音像がまるでイギー・ポップの「Lust for Life」のようでひっくり返ってしまった。ちなみに曲名は「C’mon Future」。生きる欲望という意味では通底しているのでは。ガレージパンクなバイブスはそのまま「いい趣味してるね」につながり、浪越はフロアに転がりつつリフを弾き倒し、照明があまり当たっていない分、演奏の熱量が増し、カオティックになっていく様子に感覚を集中する。イヤホンを装着し、一人鑑賞する部屋で思わず「カッケー!」と大声を発してしまった。ライブハウスのローの体感こそないものの、「ラプチャー」も曲が持つシリアスなテーマをぐっと重心の低い音像で表現しており、ここ1年のライブ以上に染み込む演奏へ進化していた。さらに〈君は暴れ馬〉というフレーズやサイコビリー調のリズムとスリリングなリフを持つ新曲「Rodeo」もパノパナがロックンロールバンドであることを再認識させるものだった。あえて言えば今、こんなにTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやBLANKEY JET CITYを想起させる曲をやるバンドはいない。だが確実に自分たちのモノにしている。