三姉妹のHaim、声を失ったジア・マーガレット、女優でも活躍するマヤ・ホーク……個性豊かな女性シンガーの作品5選

 姉妹バンド、声を失ったシンガー、女優……様々な女性たちが聴かせる魅力的な歌声。今回は個性豊かな女性シンガーたちの新作を紹介。

Haim『Women in Music Pt. III』

Haim『Women in Music Pt. III』

 まずは、LAの三姉妹、Haimによる3作目のアルバム『Women in Music Pt. III』。昨年の7月に新曲「Summer Girl」を発表して以来、コンスタントに6曲の新曲を発表。それぞれフォーキーだったり、エレクトニックだったり、ロックだったりとスタイルを変えていたが、アルバムでもバラエティ豊かな曲が並んでいる。それでいて統一感を感じさせるのは、60〜70年代のロックやR&Bを吸収した確かなソングライティングのおかげだろう。クラシカルな骨太さとモダンなアレンジのバランスが絶妙だ。元Vampire Weekendのロスタム・バトマングリやトバイアス・ジェッソ・Jr. の好サポートも手伝って、三姉妹の成長と自信が伝わる充実作。彼女たちの新曲のミュージックビデオを手がけてきた映画監督、ポール・トーマス・アンダーソンがジャケットの撮影も担当していて、音楽との見事なコラボレーションで彼女たちの新しいイメージを作り出している。

Haim - The Steps (Official Video)

Madeline Kenney『Sucker’s Lunch』

Madeline Kenney『Sucker’s Lunch』

 オークランドを拠点に活動するシンガーソングライター。トロ・イ・モアが立ち上げたレーベルからデビューしたことで注目を集めたが、3作目となる新作は前作『Perfect Shapes』(2018年)に参加したWye Oakのジェン・ワスナー(Ba)とアンディ・スタック(Dr)を招いて、3人でセッションしながら曲を作り上げていった。キーボードやサックス、複雑なハーモニーを盛り込んだふくよかなサウンドが浮遊感を生み出していて、そこにタイトなリズムセクションを加えることで、力強い躍動感も感じさせる。ふんわりと柔らかなサウンド。まどろむようなメロディの中にも力強い骨格を感じさせるドリーミーな歌は、一緒にツアーを回ったジェイ・ソムに通じるところも。

Madeline Kenney - "Picture of You" (Official Music Video)

Gia Margaret『Mia Gargaret』

Gia Margaret『Mia Gargaret』

 2018年に1stアルバム『There's Always Glimmer』をリリースしたシカゴのシンガーソングライター、ジア・マーガレット。しかし、ツアー中に病に倒れた彼女は声が出なくなってしまう。その闘病中に制作されたのが本作だ。シンセを中心に、ピアノ、ギター、サンプリングなどを加えたインストゥルメンタルで、アブストラクトなサウンドのなかで断片的なメロディが浮かんでは消える。そこに闘病の苦しさはなく、音楽を作ることで自分を癒しているような安らぎを感じさせる。彼女の繊細なサウンドは「スリープ・ロック」と呼ばれているが、彼女の夢の中をさまようようにアルバムを聴いていくと、最後に回復した彼女の歌声が現れるという演出がドラマティック。

Gia Margaret - Barely There (Official Video)

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