indigo la End、Official髭男dism、MY FIRST STORY……相次ぐインストアルバムリリース 各作品の聴きどころは?

 ここまで紹介した2組とは少し毛色の異なるのがMY FIRST STORY。彼らは7月8日、『BGM』『sleeping』を配信リリースした。収録曲はすべて、既存曲からボーカルを抜いたバージョンではなく、今回新たに制作されたインスト用の曲。『BGM』の収録曲は、アコースティックギターによるループコードがおしゃれな「バスタイム」、エレキギターの重なりをメインにした曲調から突如EDMに変わる「散歩中〜ゲリラ豪雨〜」、約3分間の「RAMEN」、オルゴール調の「しんどくなるほど片思い2020」、一転ヘビメタの「殴りたくなる時」など。つまり、曲を聴くのにおすすめのシチュエーションや、演奏が表す日常の光景がそのままタイトルになっている。『sleeping』は就寝前に聴くのに適したヒーリングミュージック集だ。

 2作のコンセプトは“日常に寄り添うMY FIRST STORY”。Hiro(Vo)のコメントによると、この期間中彼らが気にかけていたのは「ライブがあるから仕事が頑張れる」「ライブがあるから学校へ行ける」と言っていたファンであり、ライブのない今、自分たちの音楽を楽しみに待ってくれている人たちに何か届けられないだろうか? と考えた結果、インストアルバムの制作に行き着いたそうだ(参照)。打ち込みを用いた曲や4人全員の音が鳴っていない曲も多く、スタジオに集まって音を合わせることが満足にできない状況のなか、4人それぞれが(バンドメンバーとしてというよりかは)いち音楽家として試行錯誤した跡が見える。この経験は、今後のバンド活動の糧になることだろう。

MY FIRST STORY『BGM』
MY FIRST STORY『sleeping』

 このように、現在、バンドによるインストアルバムの発表が相次いでいる。今紹介した3組はおそらく制作動機がそれぞれ異なるが、いずれも配信限定リリース(ストリーミング配信&ダウンロード販売のみ)という共通点がある。歌詞のない音楽は、デスクワークで集中したいときや運動中でも聴きやすいため、“おうち時間”の増加により、需要がちょうど高まっているところだろう。また、TikTokが勢いを増している今、公式によるカラオケ音源の提供に喜びを感じている人も少なくないのでは(動画をアップロードする際は著作権侵害にならないようご注意を)。

 いずれにしろ、インストアルバムとは、バンドの魅力を再発見するのに最適なアイテムだ。この機会に触れてみることをおすすめしたい。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

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