米津玄師「感電」MVに収められた新鮮な表情とユーモア 隙の無い洗練から小粋な遊び心へ

 7月10日に公開された米津玄師「感電」のMVが注目を集めている。TBS系金曜ドラマ『MIU404』の主題歌であり、6月26日、同ドラマの第1話で初解禁された曲だ。

米津玄師『STRAY SHEEP』

 米津のMVはいつも注目を集めているが、それでも「感電」の注目度は過去作を上回るレベル。同MVは公開後わずか1時間50分で100万回再生を突破したほか、4日と7分で1000万回再生を突破。いずれも自身最速記録だという。

 “毎週金曜日には新しい情報が公開される”という印象づけに成功していたこと。そのうえで『MIU404』に因んだ“404 NOT FOUND”という記号、羊の絵文字によるモールス信号=“メールス信号”を使用した、ユーモアある方法でメッセージを発信したこと。それをファンが解読し、SNS上で口コミが拡散していったこと。MV公開前の一連の動きを振り返ると、公開時刻の23時にせーので盛り上がるための導線が周到に敷かれていたことが分かる(参照:音楽ナタリー)。

 このように、MVが公開される前から楽しい出来事がたくさんあったが、MV自体もまた、遊び心や親しみやすさを感じさせる内容だった。今回監督を務めたのは、映像監督/写真家の奥山由之。米津と奥山は同い年で、MV公開時の奥山のコメントによると、互いに20代最後であることを意識して制作されたそう(参照:音楽ナタリー)。撮影地のひとつに選ばれたのは、今年8月31日に閉園する歴史ある遊園地・としまえん。確かに、夜の遊園地を貸し切っての撮影とは大人にしかできない“遊び”だ。たくさんの電飾が灯るなか、米津は、歌ったり、リズムに乗ったり、(透明人間ならぬ)金属人間と踊ったり、空を飛んだり(!)している。きらびやかで、温かくて、ほろ苦い、一夜限りのパーティー。ここがとしまえんであることを踏まえると、〈たった一瞬の このきらめきを/食べ尽くそう二人で くたばるまで〉というフレーズの受け取り方がまた変わってくる。

 それにしても、こんなにも表情豊かな米津玄師を見られるMVは、これまでにあっただろうか。MVは、声が聞こえてきそうなほど大きく笑う米津の姿を至近距離で映すところからスタート。それ以降も、猫の手を取ってカメラにアピールしたり、頬に手を当てて舌を出したり、パンダカーに乗ったり、ワイヤーアクションに挑戦したり……と、米津のお茶目さが垣間見える画が続く。

 教会を舞台にした「Lemon」、駐車場や繁華街と思われる場所を徘徊する「Flamingo」、モノクロの「TEENAGE RIOT」、映画『海獣の子供』の本編映像で構成されたアニメMV「海の幽霊」、120名のキャストが出演した「馬と鹿」――と、ここ1、2年の間に発表されたMVは神秘的な作品が多く、その作風から、彼の表情がはっきりと映されているものは少なかった。そのため、今回のMVはファンにとっても新鮮だったのだろう。MV公開時の奥山のツイートには、「今までにない米津の表情を引き出してくれた」と彼に感謝と喜びを伝える米津ファンからのリプライがたくさん寄せられていた。

 「感電」のMVは、全編を通じて運転手目線の映像となっているが(この車は左ハンドル)、この“運転手目線”という設定がかなり効いている。例えば、2番A~Bメロにある“米津がカメラをどけるようなしぐさをする→カメラの向けられる方向が変わる”、“米津が左を指す→カメラがその方向を映す”という場面。ここでも米津はいい表情をしているが、これは、運転手=撮る側、米津=撮られる側というシチュエーションが前提にあるからこそ成り立つ演出だろう。Dメロにおける逃走劇風の展開もそう。このシーンは、起承転結の転にあたるパートで、全体の流れを引き締める役割を果たしている。なお、曲が終わったあとには運転手の男の顔が遠くから映され、意味深な描写でMVが終わる。