BiSH、CDのみでリリースした初ベストアルバムが首位に 危うさすらも“確固たる居場所”にしてきた活動の軌跡

 そんな彼女たちが初めて1位になったことが、何かの転機を感じさせます。『FOR LiVE -BiSH BEST-』はグループ初のベストアルバムで、収益の全額は新型コロナウイルスのために営業自粛を余儀なくされている全国ライブハウスに寄付されるとのこと。ファン一人ひとりにCDショップへ足を運んでもらうためにも配信は一切ありません。「全国のライブハウス、CDショップに微力ながら力になれないか考えました」。こんなオフィシャルサイトの言葉も誠意に溢れたもので、BiSHらしい/らしくないの判断はさておき、まずは協力しようじゃないか、という気持ちにさせられます。結果セールスは4.9万枚。正攻法で手にした、初の週間アルバムランキング1位なのです。

 こちらが慣れてしまった面もありますが、「PAiNT it BLACK」や「プロミスザスター」など代表曲をまとめて聴くとBiSHは言うほど異端でもない、よくできたロックグループだなと思わされます。パンクとメタルの荒々しさを最大限咀嚼しつつ、ドラマティックな泣きどころに落としていく展開の巧さ。メロディはポップで爽やかだけど、ちょっと投げやりだったり、舌足らずだったり、ハスキーだったり、個々のボーカルが入れ替わることで聴き流せない棘を残していく。現体制になってすでに4年近く。“ハラハラさせる危うさ”も、続けることで板につき、そのまま愛すべき個性になったわけです。

BiSH / PAiNT it BLACK[OFFICIAL VIDEO]
BiSH / プロミスザスター[OFFICIAL VIDEO]

 もちろん、Disc-2に収録された「遂に死」みたいな曲はSlipknotに肉薄するノイズと阿鼻叫喚が溢れていますが、そこも含めて驚かない。むしろ「あぁBiSHだねえ」とフツーに納得できる。時間をかけて、彼女たちが“過激なことをやらされてる感”を“自分たちの確たる居場所”に変換していけたのだと思います。続いて来週に出る3.5枚目のアルバム、そのセールスにも期待しておきます。

BiSH / 遂に死 [OFFiCiAL ViDEO]

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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