NiziU、「Make you happy」JYP先輩グループへの目配せとオリジナリティ それぞれの個性が表れた歌声も必聴

 特筆すべきは、音源を一聴しただけでも各パートがどのメンバーであるかごく自然に認識されるほど、それぞれの持つ個性が歌声に表れているように感じたことである。

 これまで番組内の審査過程を通じ彼女たちの歌声を聴き続けてきたこともあるが、(最終審査以外は)基本的に既存曲を披露してきた9人が、プレデビューにして自分達だけのオリジナリティを打ち出してきたのには、『Nizi Project』いち視聴者としても感慨深く思った。その背景には、オーディションにおいてパク・ジニョン氏が常に強調して求めていた「自分の声・表情・個性で歌って踊ること」を彼女たちが真摯に習得し、体現していることがあるように思える。

 特に感動させられたのは、オーディションにおいてパク・ジニョン氏から「1つだけ直さなければいけないことがあります。(あなたは)ラップや歌の時、既存の歌手を真似しています。(中略)典型的な表現はしないで下さい」という指摘を受けていたメンバーのRIMAが、この「Make you happy」のラップパートを、彼女らしいキュートなSWAGさによって力強く牽引することで輝きを放っていた点だ。

 また審査毎に芯の通った爽やかなボーカルの伸びしろをみせたRIKU、「見る人の気分を良くして一緒に笑わせる力がある」と評されながら、幅広い楽曲コンセプトに挑戦することで多様な一面を披露したMIIHI、初披露より視聴者の耳を惹き付けた華やかで伸びのある歌声に磨きをかけたNINA、誰もが認める確かな実力を持ちつつも実直にパフォーマンスを追求し続けるMAKO、圧倒的かつ繊細な表現力で深みある存在感を発揮してきたMAYA、元々備わっていたダンスの実力に加えパフォーマーとしての魅力を身に付けたRIO、地方予選では「実力不足」と評されながらもひたむきに鍛練し急成長を遂げたAYAKA、そして東京合宿の最終審査から驚きの飛躍をみせ見事デビューを勝ち取ったMAYUKAといった各メンバーの持つカラーとオーディションにおけるそれぞれの道のりが、歌声やパフォーマンスにそのまま表されていることにより“K-POPらしさ”、“J-POPらしさ”、“JYPらしさ”が盛り込まれたこの曲にオリジナリティという彩りを添えているように感じた。これから彼女たちの手によって築かれていくであろうNiziUらしさに期待を寄せたい。

■菅原 史稀
編集者、ライター。1990年生まれ。webメディア等で執筆。映画、ポップカルチャーを文化人類学的観点から考察する。Twitter

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