「コロナ以降」のカルチャー 音楽の将来のためにできること
m-flo ☆Taku Takahashi×VERBALが語る、コロナ以降の発想の転換「様々なファクターを見直してエンタメの届け方を考えたい」
バーチャルの盛り上がりに期待
ーーm−floは、これまで日本のみならず、海外も視野に入れてグローバルな活動を行ってきました。現状、コロナで海外への渡航も行えない中、海外との繋がりについてはどう感じていますか?
☆Taku Takahashi:今の状況下で、m-floとしてアメリカのオンラインフェスに3回出演しています。あと、僕の知り合いのアーティストは自粛期間は曲作りに専念しているらしいんですけど、海外のアーティストからどんどんトラックを送ってもらって曲を作っていると聞きました。当たり前ですが、リアルに繋がることは難しくなる分、インターネットを介しての繋がりは強くなっていくとは思います。
VERBAL:僕は、これを機にバーチャルの世界での盛り上がりが表面化されていくことに期待しています。直近だとトラヴィス・スコットが「フォートナイト」でバーチャルライブを開催したことが象徴的ですが、実は先んじてMarshmelloなども同じことを去年やっていましたし、m−floとしてもバーチャルの分野でのエンターテインメントを進めていきたいと考えています。これからはバーチャルの世界だけで成立するカルチャーがもっと発展していくだろうし、テクノロジーに付随するエンターテインメントも徐々に市民権を得ていくと思います。
それに、視力が極端に弱い方がVRのヘッドセットをつけることで、バーチャルでDJ活動をしている事例もあります。今は目先のビジネスに集中しなければいけない状況かもしれませんが、テクノロジーをうまく活用すれば、かつてないエンターテインメントを生み出すことができるので、今後はより未来志向にシフトしていくのではないでしょうか。実際、eコマースの関連会社の株価が跳ね上がっているように、市場はどんどん変わっていきます。オンラインへの移行が加速する中、リテラシーの高い人たちは人種や国の枠を超えて繋がっていくと思います。ワクワクする反面、どう変わっていくのか予想ができなくて、少し怖い部分もあります。
ーーm−floもバーチャル分野での活動を考えているということですが、そこにはどんな課題がありますか?
VERBAL:バーチャル環境でライブを行うシステムはもちろんありますが、それをマニュピレーションできるエンジニアが少ないという課題があります。モーションキャプチャやCGをはじめ、バーチャルライブは特殊な技術の集合体みたいなものです。それを全部連動できる知識やノウハウがあって、かつ音楽への理解が深い人材となるとなかなかいないので、日本で実現するのは現時点では少し難しいと思っています。ただ、これからエンジニアは増えていくと思いますし、普通のライブができない以上、バーチャルの需要が増えて新たに手を上げてくれる方々も出てくると期待しています。
ーーバーチャルライブとは異なりますが、先日SMエンターテインメントのアーティストが、オンラインライブ配信サービス『V LIVE』で開催した『Beyond LIVE』も話題を呼びました。
VERBAL:オンラインライブに関して言えば、デジタルチケットは通常よりも価格が低く設定されているので、本来のライブで稼ぐ分のチケットを売るとしたらおそらく倍以上の枚数を売らないといけなくなるし、デジタルグッズにも力をいれていなかければなりません。そもそも決まった価格があるようでない分野ですし、ライブとデジタルライブの市場は異なると思うんです。これから需要も増えてくるでしょうし、新規参入しやすいというポジティブな見方もできますが、やはり技術者が少ないので、結局はコストが高くついてしまうと思います。長期的なビジネスにしていくのであれば、それ相応の資金力が必要となりそうです。
ーー今後の日本の音楽シーンに期待することはなんでしょうか?
VERBAL:日本は戦後のエンタメビジネスの風習が、いいものも悪いものも、そのまま残っています。それはエンタメだけではなくて、ファッションにも言えることなんです。例えばファッションウィークはなぜ1月と6月にパリで行う必要があるのか、ずっとそういう慣習だったらしいのですが、コロナ禍の今、ファッションウィークの開催が中止になれば、次にファッションカレンダーが不要になるのではないか、みたいにどんどん疑問が生まれてくるんです。
つまり、そのイベントが担っていたキャッシュポイントが新たに作れるのであれば、かつての慣習はなくなっても構わないケースが多い。エンタメも同じで、ビジネスがちゃんと成り立てば、どういう方法だろうが問題ないですし、実際に今はいろんな方法でビジネスを成立するチャンスはあるわけです。何を優先すべきかは個人のプライオリティの問題だとは思うんですけど、新しいマインドを持って、既存にはない発想を提案してくれる次世代の活躍に期待しています。
☆Taku Takahashi:こういう状況下ではありますが、日本のクリエイターは面白い作品をどんどん作っています。そもそも『BLOCK.FESTIVAL』を開催した理由のひとつが、そういう日本のアーティストを紹介していくためでもあるんです。今、素晴らしいアーティストがどんどん輩出されているタイミングなのに、コロナショックによってリスナーとアーティストの間に壁ができたら、それはとてももったいないことです。結局のところ、新しい世代がいかにして面白いムーブメントを生み出せるか否かが、音楽シーンの興隆の鍵であって、それはコロナ以前から変わらないことです。僕らとしては、次世代のアーティストたちがちゃんと暮らしていけるような仕組みづくりにも貢献していきたいと考えています。