Shuta Sueyoshi、DISH//らの過去曲に集まる再注目 ネット時代が生み出すヒットの新法則

Shuta Sueyoshi、DISH//らの過去曲に集まる再注目 ネット時代が生み出すヒットの新法則

 6月5日に放送された『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)では、TikTokで人気の楽曲が特集され、TikTok国内月間楽曲ランキング1位を獲得した「HACK」を歌うShuta Sueyoshiが、ソロでは初の『Mステ』出演を果たした。番組では「HACK」の現象に触れ、「1年以上前に制作した曲なのに、今いろんな方に聴いていただけてとても嬉しい」とコメント。『Mステ』放送終了後もTikTokで生放送された特別番組に出演して話題となり、Twitterトレンドランキングの上位に入った。そんな「HACK」がバズった要因とは? また、ユーザー主導で生まれるヒットの根っこにあるユーザー心理とは?

本人を巻き込んだ「HACK」のバズ

Shuta Sueyoshi / HACK

 Shuta Sueyoshiの「HACK」は、『Mステ』の番組内で話していたとおり、昨年1月にリリースされたShuta Sueyoshiのアルバム『WONDER HACK』に収録された1曲。それまでのクールなイメージからは一転、同アルバムの中でも群を抜いたキュートなサウンドと振り付けがファンの間で話題を集め、その後のライブでも観客がジャンプしながら振り付けを楽しむライブの鉄板曲として浸透している。もともと聴く人の心をハッキングしたいとしてタイトルが付けられた「HACK」が1年以上を経た今、多くの人の心をハックしているという形だ。

 TikTokにおける「HACK」の現象が始まったのは、4月中旬から。単純に口パクで踊る動画だけでなく、アニメの映像をコラージュしたものや、『鬼滅の刃』のコスプレで踊るもの、曲に合わせてベッドの上でジャンプするものなど実に多彩な動画がアップされ、それと並行して楽曲への注目度もアップ。Spotify急上昇チャートやApple Musicのトレンド検索ワードにランクインした他、LINE MUSICの邦楽ROCKランキングで1位を獲得。「HACK」のMVも300万回再生突破を記録するなど、わずか2カ月足らずの間に楽曲の人気と話題はTikTokの枠を越え、音楽シーン全体に広がりを見せている。

 『Mステ』のTikTok生特別番組に出演したShuta Sueyoshiは、ゲストのEXITに「HACK」がバズっていることについて聞かれると、「TokTokって1つ動画を見たら関連動画がたくさん出てくるから、どこからがバズったことになるのかがわからなくて。でもファンの方から教えてもらって……」とコメント。自身のSNSで「HACK」の現象に触れたコメントを上げたり、自らダンス動画をTikTokにアップするなど、本人がファンと一緒に「HACK」のバズり現象を楽しんだことが、さらなる広がりに拍車をかけたと言える。

ユーザー主導のヒットが音楽シーンを形成

Shuta Sueyoshi / HACK ( Shuta Sueyoshi LIVE TOUR 2019 – WONDER HACK – LIVE映像 )

 TikTokの魅力は15秒という短さだ。1曲丸ごとやれと言われたら難しいが、15秒ならさほどの練習時間もいらないため気軽にチャレンジできる。TikTok発のヒットとして思い出される米ラッパーのリル・ナズ・Xの「Old Town Road」は、カウボーイやカウガールの扮装に着替えるだけ、DA PUMPの「U.S.A」は「いいねダンス」を繰り返すだけ。手間をかけず、誰でも楽しい動画が投稿出来るという点は、時短クッキングの流行とも似ているかもしれない。

 特に「HACK」は、ピコピコとした軽快なデジタルサウンドが非常に心地良く、同じ言葉やメロディをちょっと早口で繰り返す作りがキャッチーで、聴いているうちにどんどんハマってしまう魅力を持っている。歯切れの良いビート、約15秒のサビ、サビの最後にブレイクがあるという点は、TikTokでループ再生されることを前提にしていたのかと思うほど。またサビの歌詞は〈jumping jumping on跳ねて〉〈リズム合わせKNOCK KNOCK KNOCK〉というもので、TokTokユーザーは、この歌詞の通りにジャンプしたりノックしたりするだけで、曲にぴったり合ったテンポ感のいい動画が作れてしまうわけで、非常にTikTokに適した楽曲だと言えるだろう。

 現在はTikTokに限らずYouTubeなど様々なコンテンツから自然発生的にムーブメントが生まれ、それが他のストリーミングへと波及するケースが増えている。TikTokで話題を集める瑛人の「香水」や、YouTubeコンテンツ「First Take」にアップされたDISH//の「猫」などもそうだ。1つポイントとなるのは、これらの曲は決して最新の曲ではないということ。「香水」は約1年前にリリースされた曲で、「猫」は2017年の曲で、「マリーゴールド」がヒットする以前のあいみょんが作詞作曲した。

 時代やジャンルに関係なくネットで様々な曲が聴けるようになったことで、新曲も過去曲も並列に聴かれるようになった現在。タイアップや宣伝に左右されずファンであるとかないとかも関係なく、自分が良いと思う曲を容易く探すことが出来るようになった。インフルエンスの原点は、それを見つけた時の喜びと、これをもっと多くの人と分かち合いたいというピュアな衝動だ。かつてのニコニコ動画やYouTuberのシーンで起きていたことが、今メジャーの音楽シーンでも起きていると言える。ネットやスマホと対峙する時間が増えたことでこうした発掘はますます盛んに行われ、すでに新たなムーブメントがあちこちで生まれ始めているはず。今後はこうしたユーザー主導のヒットを中心に、音楽シーンが形成されていくだろう。

■榑林 史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。

Shuta Sueyoshi『WONDER HACK』

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