DEPAPEPE、最新作『Seek』に込めた15周年の“今” デビュー時から変わらないインストへの思いも明かす

DEPAPEPE、最新作に込めた“今”

 それは2005年5月のこと。「インストミュージックをポピュラーに!」を合言葉にメジャーデビューしたDEPAPEPEは、アコースティックギター2本をスタート地点に、バンドサウンドや他ジャンルへのクロスオーバーへとチャレンジを重ねながら、多くのリスナーと後続のミュージシャンに新しい音楽の喜びを伝えてきた。その集大成にしてターニングポイント、新しい未来を切り拓くのが15周年のフルアルバム『Seek』だ。これまでで最も悩んだという制作過程、会心の1曲「GUILTY」の完成まで、そして15年間の思いについて、徳岡慶也と三浦拓也にリモート取材でたっぷりと語ってもらった。(宮本英夫)

“インスト”を意識しないで聴いてほしい(三浦)

ーー15周年、おめでとうございます。長く感じるか、短く感じるか、実感としてはどうですか。

徳岡慶也(以下、徳岡):どっちもですね。長くもあるし短くもあるし、ただデビューして5年ぐらいは本当に大変で、活動のペースについていくのに5年ぐらいかかったという思い出は、いまだに残っています。それ以降は早かったなという気はします。

三浦拓也(以下、三浦):僕はけっこう、あっという間でしたね。活動が止まることなく、毎年コンスタントに夏に野外ライブをやってとか、1年の中でルーティンが決まっている中で、「ああもう15年か」と。それは歳を取ったからなのかもしれないですけど、1年がどんどん短くなってきていますね。「この前10周年と言ってたのにもう15周年か」という感じですけど、それだけ充実してるのかな? と思うと、ありがたいです。

ーー僕、2005年にお二人に最初にお会いしてるんですよ。

三浦:じゃあほんまにデビューの時ですね。

ーー当時のインタビューがここにあるんですけど、アコギのインストというスタイルについて、「自分たちがかっこいいと思うものをやってるだけです」「メッセージ性はないです」と言っていて。

徳岡:ああ、それはいまだにそうですね。メッセージ性はないですから。より心地よく聴いてほしいなというのはありますけどね。

ーー「今後の目標は」という質問に三浦さんが、「いろんなジャンルをやりつつ、DEDAPEPEという大きな円を作りたい」と言っていますよ。

三浦:ああ、僕らというジャンルを、みたいな。いいこと言いますね。

ーー15年経って大きい円は描けてますか。

三浦:その当時思い描いていたことができてるか? というと、まだ志半ばという感じなんですけど。ただ「DEPAPEPEってこういうサウンドだよね」と言ってもらえるようになったのは、ちょっとはその時の思いが叶ってきたのかな、とは思いますね。DEPAPEPEサウンドというものをある種確立できて、だからこそ悩む時もあるんですけど、デビュー当時に思い描いていた一端は担えてるのかな、と思います。

ーー徳岡さんは「ずっと聴いてもらえるスタンダードを作りたい」と抱負を語っていました。

徳岡:それもいまだに変わってないですね。それを言い続けて15年目を迎えられてるというのは、ある意味幸せかなと思います。そう考えると、15年って意外と長いかもしれない。でも周りの先輩たちがもっと長く続けているから、まだまだペーペーやなと思いますよ。

ーーそうですか? もしギターインスト協会というものがあったら、部長ぐらいいってるんじゃないか? と。

徳岡:いってないです(笑)。まだまだでしょ、三浦くん。

三浦:まだまだですね。協会の役職にはつけないかもしれないけど(笑)、自分たちがデビューした時よりも協会の人数はたくさん増えたんじゃないかな? って、思いますね。ギター以外のインストも増えましたし、協会はもっと大きくなってる気はします。

ーーそこにDEPAPEPEは大貢献してるんじゃないでしょうか。

三浦:そうやったらうれしいですね。

ーーしかもDEPAPEPEは、ジャンルを超えたフットワークの軽さで歌もののアーティストとも積極的に交流しに行きますよね。

三浦:僕らはもともと、歌もののアーティストと同じフィールドでライブをしたいなというのがあったんですね。「インストミュージックをポピュラーに」ということを最初の合言葉みたいにして、ジャンル問わずという意識が常にあったので。自分の中では「インストだから」「歌ものだから」という垣根がないので、「インスト」というところを意識しないで聴いてほしいというのは、デビューの時から変わらず思ってますね。

ーーああ、そうか、「インストミュージックをポピュラーに」というのはそういう意味だったんですね。

三浦:そうなんです。インストというのを言わなくてもいいようになればいいな、というのが一番なんです。クラシックの曲に「インストですよね」って言わないのと同じ感覚で、僕らはポップスをやっているけど、「ギターインストでしょ」と言われなくていいぐらいに、まだ志半ばですけど、なればいいなと思っています。

ーーそろそろアルバムの話に行きましょうか。15周年の記念アルバム『Seek』の、リード曲「GUILTY」が、アルバムの核になる曲ですか。

DEPAPEPE 『GUILTY』

徳岡:そうですね。あの曲があるからこそアルバムを出せたと言ってもいいぐらいです。僕らは、爽やかでスピード感ある曲が多かったんですけど、今回は誰かの背中を押す曲じゃなくて、自分らと向き合う曲を作ろうと。15年目で一つ階段を上がるような、そういう曲にしようかなと思って、「GUILTY」をリード曲にしました。

三浦:「GUILTY」で僕がすごく印象的だなと思うのは、普通、徳岡さんが曲を持ってくる時って、ワンコーラスあって、こんな感じかな? あんな感じかな? ってメロディを変えて、できていくパターンが多いんです。「GUILTY」に関しては、イントロのフレーズだけあって、メロディを「これがいい」と言い切って、「GUILTY」というタイトルにする、という作り方だったんです。僕も一緒に制作していて、この曲は他の曲とは思いや意図が違うんだろうなという感じはすごくしましたね。

ーー「GUILTY」=罪って、相当に重い言葉ですよね。なぜこの言葉を選んだのでしょうか。

徳岡:背中を押す曲じゃないものを、ということだったんですけど、このご時世、みんないろいろ大変じゃないですか。SNSとかで息苦しかったり、他人の目が気になったりとか、そういうことを踏まえて人のことをやいやい言う前に「もうちょっと自分と向き合いません?」みたいな感じですね。聴いてくれた人は「意外と爽やか」という意見も多いですけど、僕らはそういうイメージで最初から作りましたね。

三浦:僕の思う“GUILTY”らしさって、サビのメロディではなくイントロなんですね。人は誰しもすべてきれいな行いだけではないし、“GUILTY”を感じる時もあるかもしれないけど、それでも許すというか、「前を向いて進んで行こう」というのが、サビのメロディの優しい旋律やと思うんですね。だからサビだけ聴くと“GUILTYっぽく”はないかもしれないのかなと思いますけど、イントロの重厚なところに「やろうと思っていなかったけどあんなことしてしまったな……」みたいな反省とかが音として入っていて、サビではそれが昇華されている。そこが伝わればいいかなと思います。

ーー15年前「メッセージ性はないです」と言っていたお二人が、15年経ってこんな曲を作るようになったんだなと思います。

三浦:めっちゃメッセージ性ありますね(笑)。

徳岡:この曲は、あるかもしれない。「自分と向き合う」という曲だと思うんですけど、聴いてくれた人もそう思ってくれたらいいですね。

ーーちなみに、この華麗で重厚なオーケストレーションのアレンジは、最初から頭にあったんですか?

徳岡:いや、重い感じの曲にしたかったので、絶対にベースとドラムはほしいと思ってたんですけど。運がいいことに中村タイチさんという、もともとアレンジとかをやってもらっていた人にまたお願いできたんで、「とにかく広い世界と派手にしてもらっていいですから」と言ったら、求めていた通りのアレンジになって。本当に良かったと思います。たぶんギター2本とドラムだけでもできたんでしょうけど、曲が持つ力をちゃんと形にしてもらえたことに、ほんまにうれしさを感じてますね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる