King & Prince『Mazy Night』カップリング4曲をクロスレビュー 歌とサウンドの充実した個性に迫る
6月10日にニューシングル『Mazy Night』をリリースしたKing & Prince。サウンド、MV、振り付けなど、あらゆる面において鮮烈な印象を与えたダンサブルな表題曲「Mazy Night」については、先日公開された『King & Prince、イメージを刷新する大胆でクールな「Mazy Night」の魅力 楽曲、ダンス、MVから徹底分析』を読んでいただきたいが、今回は充実したカップリング曲たちに注目したい。初回限定盤Aには「Love Paradox」、初回限定盤Bには「今君に伝えたいこと」、通常盤には「Full Time Lover」「ゴールデンアワー」と、パッケージごとに異なる楽曲が収録されており、すでにKing & Princeのライブに欠かせない存在となっている曲から、真っさらな新曲まで様々だ。そんなカップリング4曲の魅力を探るべく、4名のライターそれぞれの視点から、1曲ずつじっくりと紐解いていきたい。(編集部)
青い恋心が滲む「Love Paradox」
作詞作曲を担うMUTEKI DEAD SNAKE(作曲は児山啓介と共作)は、前シングル『koi-wazurai』収録の「君は、綺麗だ。」以来、2作目となるタッグ。軽快なブラスセクション、踊るようなギターのカッティング、場面に応じて役割を変化させるストリングスなど、サウンドはジャニーズらしく豪華で緻密。その編曲を手掛けたのは生田真心だ。長年アレンジャーとしてSexy Zoneにも関わってきた彼の遊び心が伝わってくる。
一方で歌詞は、相手のことが好きなのにその逆の行動をとってしまう心理(曲中の表現によれば〈青い恋心〉)を、ポップで明るくまとめ上げている。〈不器用〉で〈素直になれない〉ある種の“未熟さ”を抱えた主人公像は、まだデビューして間もない若い彼らだからこそ活きる設定だ。〈君に近づきたいのに 距離は遠ざかるばかり/回り回って こんな日々を笑えるかな いつか〉というシンプルかつ爽やかな2サビのフレーズは、図らずもコロナ禍の状況を象徴するような一節でもある。ストレートに男女のほろ苦い恋の歌としても、あるいはアイドルとファンの関係の歌としても、そして2020年を生きる我々を明るく照らす歌としても聴くことができるだろう。(荻原梓)
歌唱の個性を活かした「今君に伝えたいこと」
音楽ユニット、C&KのKEENが作詞作曲を担当した「今君に伝えたいこと」は、C&Kの真骨頂ともいえるミディアムバラードに仕上がっている。ピアノで奏でられるメロウなイントロは、ドラマチックな世界観を演出。聴く人を惹き付けたところで、髙橋海人の甘い歌声がグッと心を掴む。いつも側にいる女性に恋心を伝えることはできないーーそんな不器用な男性の悔しさを、Bメロを担当した永瀬廉が感情を込め見事に表現した。
それぞれの魅力的な歌声が詰まったハーモニーを味わうことができるよう、サビの部分は伴奏を抑えめに。サビ終わりから2番にかけて、女性コーラスを入れることでより繊細な心情を表現している。2番の歌い出しは、優しい高音が特徴の神宮寺勇太。ハスキーボイスの平野紫耀と圧倒的な歌唱力を誇る岸優太が、迫りくる切なさを歌う。特に涙を誘うのが、後ろ向きだった歌詞が最後のサビで〈どうせ愛なんて/二度と思わないから〉という希望的な言葉に変わる瞬間。King & Princeらしい爽やかな要素を残しつつ、愁いを帯びた大人な一面を感じることができる。歌詞で描かれたストーリーが、まるで目に浮かぶような彼らの表現力に驚かされるラブソングだ。(苫とり子)