中国でも加速するジャニーズ人気 嵐、KinKi Kids、Snow Manファンに聞く彼らに惹かれた理由

堂本剛、向井康二の虜になった中国ファン

 Yを紹介してくれた1992年山東省臨沂(りんぎ)市生まれの竹子(仮名)もジャニーズのファンだ。ずっと追いかけているのはKinKi Kids。彼女の場合は、まず日本のアニメ、漫画、ドラマに興味を持った。大学では日本語を専攻し、次第にジャニーズのアイドルにはまっていった。

 2016年、偶然、KinKi Kidsのコンサート映像を見る機会があった。とにかく音楽がいいと思った。一瞬にして、彼らのファンになり、その翌年、京セラドームで開催されるコンサートを見るため、ファンクラブに加入し、中国から大阪に飛んだ。それ以来、KinKi Kidsを追いかけている。「キンキは他のジャニーズのアイドルとは違って、アイドルっぽくないというか、自分たちで作詞作曲も手がけますし、アーティストみたいな感じなんです。そこに惹かれました」。

 2017年9月、映画『銀魂』の実写版が中国でも上映された。中国では上映期間中、出演している俳優のファンたちが、中国各地で映画館を貸切り、ファンを集めて鑑賞会を企画したらしい。当時、深圳(しんせん)で生活していた竹子は、深圳では誰も企画していなかったので、「だったら私が」と、映画館を貸し切りにして、出演していた堂本剛ファンと一緒に映画を鑑賞する場をセッティングした。Weiboで呼びかけると100名ほどのファンが集まった。

中国のファンを集めて行われた『銀魂』鑑賞会(写真提供:竹子)

 「2017年は一番キンキにお金をかけたと思います。200万円くらいでしょうか。全て自分で稼いだお金です。両親は追っかけしていることは知りません」。コンサートの度に来日し、グッズも買い、彼らの出演する番組はもちろん見逃さない。KinKi Kidsの応援を続ける過程で、中国、日本、両国のファンとの交流も増えていった。「追っかけで知り合った人とは、本当に分かり合えるんですよね。学歴、性別、年齢も関係なく、好きなアイドルという共通があって、それだけで悩みなどプライベートな話もできるんです」。

 1992年広東省広州市生まれのUmi(仮名)は、現在、上海で会社員をしている。日本での留学経験も生活した経験もないが、日本のアニメやドラマがきっかけで日本に興味を持ち、次第にジャニーズのアイドルを追いかけるようになった。

 そして、日本語も独学で勉強するようになった。「中学生の時、中国でもKAT-TUNや山Pが人気でした。その後、嵐も大人気に。中国では嵐の情報が多かったので、私も自然と嵐の動画を見る機会が増えていきました。嵐のなかでも櫻井翔君のファンになったのがジャニーズの始まりですね。その後はV6のファンになって、今はSnow Manの向井康二君のファンです」。

 話を聞いていると、ジャニーズのアイドルを好きになる前は、特にアイドルや芸能人には興味がなかったらしい。それほどまでに、Umiを虜にしたジャニーズの魅力は何なのだろうか? 「あくまで私自身が感じることなんですが、ジャニーズのアイドルは、歌やダンスだけでなく、バラエティもうまく回していけるし、ドラマや映画での演技も素晴らしい。他のアイドルと比べると突出している部分が多い気がするんです。深みと多面性を感じます」。

 2015年横浜アリーナで開催されたV6の20周年記念ツアーに行ったのが、初めての生ジャニーズ。中国でもコンサートやライブに行ったことがなかったので、今でも印象に残っている。「とにかく感激しました。舞台美術とかライトアップとか全てがかっこよかったし、ライブ感にすっかりハマってしまいました。何回でも見られるなって」。

 その後、『滝沢歌舞伎』を見に行ったり、ジャニーズJr.のコンサートに行ったりもした。コンサートのために来日するたびビザを取得して、航空券、宿泊と費用はかかるけれど、何より元気をもらえることは何にも代えがたい。学生の時は、自分が使えるお金を工面して応援に当てていた。向井康二がSnow Man以前に所属していた関西Jr.のコンサートは、一番前の席で見ることができた。「向井君がJr.時代から頑張っていたのを見てきて思うのは、努力は報われるということ。私自身も生きる糧になります。デビューできて良かったねと思うと同時に、多くの人に知られてしまうという、ちょっとした寂しさみたいなのもあるかな」。

アジア全域アイドル戦国時代に突入?

 「中国のアイドルには興味ないの?」ここ最近、中国のオーディション番組の影響からか、日本でも中国アイドルのファンが増えている。自国のアイドルには興味はないのか、純粋な疑問として3人に聞いてみた。「中国や韓国のアイドルは、どことなく遠い存在って感じがするんです。化粧をバッチリしていて、自分の世界とははるか遠い場所にいる人たちという感じ。でも、ジャニーズのアイドルは、親近感があるんですよね」。それが3人共通の回答だった。また、Umiはこうも語る。「ジャニーズのアイドルは、中国や韓国のアイドルと比べると歌もダンスも飛び抜けてすごい、揃っているというわけではないのかもしれないけれど、それがまたいいんだと思います。それに、個性やキャラを生かしたグループを生み出している。いろんなタイプの男の子が所属しているから、多くの女性が自分のタイプのジャニーズアイドルにハマるんじゃないでしょうか」。

 確かに、中国アイドルは韓国の影響を受けて男性も白塗り、アイシャドーや口紅もバッチリという人が多い。合わせて、服装も髪型も似ていて、誰が誰だか見分けがつかないということもあったりする。その点、ジャニーズのアイドルはメイクもナチュラルだし、髪型や髪色も一人一人個性が出ていて誰が誰だか私でもわかる。また、中国のアイドルオーディション番組を見ていても、ダンスは「揃える」ことが強調されている。

 ジャニーズ事務所は、1962年設立。これまでに数多くのアイドルを輩出してきた。一方の中国は歴史背景もあり、アイドルの歴史はまだまだ浅い。ジャニーズ事務所の運営方法を参考にしている中国の事務所もあると聞く。その事務所からは、独自に育てた男性アイドルグループがデビューしており、今では中国のアイドル界のトップをいく。今後、韓国や日本とは違う中国らしいアイドルがさらに多数生まれるのか、またはその方向に向けて新たな動きが出るのか、その点も興味深い。

 中国は2019年以降、アイドル戦国時代に入ったと書いたが、今はもしかしたら「東アジアアイドル戦国時代」なのかもしれない。ジャニーズからデビューするグループが誕生するだけでなく、去年、日本でも『PRODUCE 101 JAPAN』から新たなアイドルグループが誕生し、『Nizi Project』からもグループが誕生予定だ。いや、中国や日本の若い子の中には、タイのアイドルに夢中な人もいると聞く。こうなったら「アジア全域アイドル戦国時代」か。最後に誰が天下を取るのか?! まだまだ、この戦いは終わりそうにない。

■小山ひとみ
中国のミレニアル世代やユースカルチャーが得意分野のライター、コーディネーター、中国語通訳・翻訳者。『STUDIO VOICE』Vol.413では中国のオンライン番組についてのコラム執筆、Vol.414では中国のファッションページで企画、コーディネート担当。『装苑』で中国のファッションデザイナー、ウェブマガジン『HEAPS』で中国ヒップホップやミレニアル世代の記事を執筆。2017年の「フェスティバル/トーキョー」では中国特集をキュレーション。中国のメディアに日本の情報も提供するなど、日本と中国の「いま」にフォーカスを当てて発信を続ける。2019年12月『中国新世代 チャイナ・ニュージェネレーション』出版。

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