乃木坂46、東京ドーム初単独公演特別配信での“ライブ感の共有” コロナ禍で変化みせるアイドルの発信

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、エンターテインメント界はジャンルを問わずライブ型パフォーマンスやイベント、あるいは従来の作品制作をストップせざるを得ない状況が続いている。さまざまなアーティストや団体がこの事態に適応しながら現在可能なスタイルで発信方法を模索し、リモートで制作した映像コンテンツや過去公演等アーカイブがインターネット上で公開される流れも定着してきた。

 もとより、女性アイドルはグループ単位のみならず個別メンバーのレベルでも、SNSを中心にして室内にカメラを据えての収録あるいはライブでの配信コンテンツを日常的に、無数に生成してきたジャンルである。そのため、従前から使用していたSNS、ストリーミングサービス等は引き続き、グループやメンバー個々が現在の状況下でアウトプットを行なう場所になっている。もちろん、他者と密接に関わることが大きく抑制される現在、視覚的なバリエーションには限界がある。それでも、すでに4月上旬に制作されYou Tubeで公開されていたlyrical schoolの「REMOTE FREE LIVE vol.1」のように、フレッシュな見せ方を実現する事例も早くから登場していた。

lyrical school REMOTE FREE LIVE vol.1

 2010年代を通じて女性アイドルシーンの巨大組織であり、SNSやストリーミングサービスを多数駆使してきたAKB48グループでも、「OUC48」と銘打ったプロジェクトをはじめとして、動画配信を中心に発信を続けている。

OUC48プロジェクト おうちでストレッチ 20200516

 もっとも、とりわけメンバー個々人が自由度の高いアウトプットをする可能性に開かれているのが、48グループの特性である。その点について言えば、48グループのなかでも強い発信力を保ってきた人物が、この時期に相次いで個人としての新しい発言の場を用意したことはひとつのトピックである。

 AKB48の柏木由紀と、昨年48グループを卒業したのちもアイドルシーンにおいて強い影響力をもつ指原莉乃の二人は、いずれも4月にnoteのアカウントを公開した。柏木や指原はこれまで、マスメディア上ではもちろんのこと、ライブパフォーマンスの場においても、それぞれのスタイルで知性をみせてきた。そうした立ち回りの秀逸さはTwitter等でも発揮されていたが、その二人がまとまったテキストを発信するメディアとして認知されているnoteに新たな場を持ったことは注目に値する。

 ライブで言葉を発する局面やSNS上のような、流れが速く言語表現に制限のある場に最適化したアウトプットとは異なるテンション、スピード感で文章を紡ぐことのできるメディアは、両者の思考をより整理されたかたちで垣間見せるフィールドになりうる。柏木は「アイドル」あるいは「見られる」職能の者としての自己認識やコミュニケーションについて、指原はよりカジュアルでパーソナルなものごとについて、noteに投稿を続けている。それら投稿のうちにはすでに、アイドルのパブリックイメージや受容される際のステレオタイプについて、意義深い示唆が少なからず含まれている。彼女たちがnoteをどのような発信の場にしてゆくのか、活動が限定された現在においてのみならず、長期的にも重要な作用を果たすものになるかもしれない。

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