小野島大の新譜キュレーション
Nathan Fake、Four Tet、Tornado Wallace、田中知之……小野島大が選ぶエレクトロニックな新譜11選
UKのベテラン、ルーク・スレイターの『Berghain Fünfzehn』(Ostgut Ton)。この名義ではなんと15年ぶりのアルバムですが、変わらぬストイックでクールで硬質なビートがたまらないハードミニマルの最高峰。もう50歳は超えているはずですが、相変わらず微塵も丸くなることなくカッティングエッジでエクスペリメンタルな姿勢を貫いているのは本当にカッコイイ。
UKテクノ/エレクトロニカのダニエル・エイヴリーと、Nine Inch Nailsのメンバーとして知られるアレッサンドロ・コルティニの共作『Illusion Of Time』(Phantasy Sound / Big Nothing)。数年の歳月を費やしたという、静謐で夢幻的でサイケデリックでドラッギーで、だがどこかざらりとした異物感の残るエレクトロニックアンビエント。時代状況だのトレンドだの関係なく、コツコツと自己の内面を深耕して作り上げた哲学的な匂いすらする作品です。
最後に。Fantastic Plastic Machineの田中知之が、本人名義で初めて発表した楽曲が「Alone」。たぶん人類史的にも重大な転換期にある今、ひとりのミュージシャンからの誠実なメッセージと受け取りました。
ではまた次回。なんとか生き延びて、ここでお会いしましょう。
■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebook/Twitter