高橋美穂の「ライブシーン狙い撃ち」第14回

[Alexandros]、back number、RADWIMPS……ライブ映像作品から改めて感じる音楽の力

 最後は、3月18日にリリースされた、RADWIMPSの『ANTI ANTI GENERATION TOUR 2019』。ツアーの中から、2019年8月29日に行われた横浜アリーナ公演の模様が収録されている。観ていると、RADWIMPSの音楽が、今、多くの人の心を支えていることが伝わってくる。そして逆に、RADWIMPSが多くの人に支えられていることも伝わってくる。というのも、オーディエンスがRADWIMPSの楽曲を自らの歌のように歌い、リズムにのる姿は、単なる“受け手”には思えないほどしっくりはまっているのだ。その“メンバー”が加わることで、RADWIMPSの楽曲は、さらにスケールを増している。これぞ、ライブでしか味わえない化学反応だ。その極みが、アンコールで披露された「正解」のシンガロング。楽曲の本領を発揮するがごとく盛大に響いてくる。〈答え合わせの 時に私はもういない/だから 採点基準は あなたのこれからの人生/「よーい、はじめ」〉――この春に聴いても、整理がつかないまま友達との別れを迎えた学生から、未曽有の事態の中で子どもを新生活に送り出した親世代までもが、よりいっそう“自分の歌”と思えるはずだ。

ANTI ANTI GENERATION TOUR 2019 「正解」

 また、ゲストであるタイタン・ゾンビーズやあいみょん、Taka(ONE OK ROCK)、三浦透子とのコラボレーションも収録。アーティスト同士が、ファンとアーティストが、音楽を通して、垣根なくフレンドリーに、それでいてプロフェッショナルに繋がり合う様が、今作には感動的に映し出されている。

「ANTI ANTI GENERATION TOUR 2019」Trailer

 ここで紹介した3バンド、すべてがライブの中止や延期を余儀なくされている。映像作品を観ると、改めて彼らのライブを生で観たい思いも募るが、それぞれ生の熱狂が可能な限りパッケージされており、それでいて生では気付きにくい一歩引いた視点で新たな魅力に気付けるところもあると思う。これらの作品を観て、改めてそれぞれのバンドの魅力、そして音楽が持つ大きな力を感じてほしい。

■高橋美穂
仙台市出身のライター。㈱ロッキング・オンにて、ロッキング・オン・ジャパンやロック・イン・ジャパン・フェスティバルに携わった後、独立。音楽誌、音楽サイトを中心に、ライヴハウス育ちのアンテナを生かしてバンドを追い掛け続けている。一児の母。

関連記事