アユニ・D×田渕ひさ子×松隈ケンタが語る、PEDROに起こった変化ーー“音楽“がアユニの居場所になった理由

アユニ・D×田渕×松隈 PEDRO鼎談

「アユニー! 抱きしめたい!」ってなりました(笑)(田渕)

――今回のEP『衝動人間倶楽部』は、どういうきっかけで作りはじめたんでしょうか。

松隈:実は1曲目の「感傷謳歌」は前のアルバムを作ったときに温存していたんです。もっと広い人たちに聴いてもらえるようにという気持ちを持ちながら作りました。

――アユニさんとしてはどういう作品にしたいっていう意思がありましたか?

アユニ:4つの顔を見せられたらいいなって思っていて。だから4曲、全く別の世界観のサウンドの曲になっています。歌詞もサウンドありきで考えているので、曲を聴いて書いていきました。

――1曲目の「感傷謳歌」はどういうイメージでしょうか?

アユニ:これは一番ポップなサウンドのイメージが強いですね。私は、衝動でものを作ってる人、衝動で人生を生きてる人に憧れを持っているんです。怒られるのが嫌いで、なるべく怒られないように、目立たないように生きてきたので。好きなものを貫いて好きなように生きている人、ライブとかでも感情が高ぶっちゃってギターを弾きっぱなしで投げて帰っちゃう人とか、マイクを倒しちゃう人とか、そういう人にすごい憧れを持っているんです。なので、今の自分にある一番大きな気持ちを書きました。PEDROをやる前だったら、一生書かないような歌詞を書いていますね。

――その変化って、ご自身ではどう捉えているんですか?

アユニ:BiSHに入った時に気付いたことなんですけど、周りの環境とか、関わる人とか、生活の時間とか、そういうものが変わるとどうしても自分が変わってしまうんですよね。BiSHに入った時が特にそうで。いい意味でも悪い意味でもすごく自分が変わっていくのを感じました。それでも自分のことはずっと嫌いだったんですけど、PEDROを始めてから、音楽という自分の支えになるものを見つけて。そこからPEDROのお仕事で関わる方も増えたし、そういう風にまた環境が変わったので自分も変わったなと思います。今は、自分のことが嫌いじゃないです。すごく好きです。

――2曲目の「WORLD IS PAIN」はどうでしょうか?

アユニ:世の中の生きづらさを受け入れた曲です。前までの自分だったら、世の中の生きにくさに対して斜に構えたり、反骨精神みたいなものがあったんですけど、そこからだいぶ考え方も変わってきたので、「生きづらい」ことを肯定して生きているという歌詞になっています。

――「無問題」はどうでしょう?

アユニ:「無問題」も、はじめの一歩を踏み出せない人や、不安で、夢があるけど現実的に考えてやめようって思っている人に向けた曲です。せっかくの人生だし、逃げ道をずっと探すより、今置かれている場所で咲かなきゃって思うようになったのでこの歌詞を書けたんだと思います。

――ラストの「生活革命』は?

アユニ:これは、サウンドがすごく儚くて、心がギュッてなるギターの音でした。前作でラブソングを書いたんですが、聴いてくれている方からの反応も多かったので、今回もラブソングを入れたいと思って。

松隈:この曲は「夢などないです」という仮タイトルだったんです。僕がつけたんですけど、要するに、昔のアユニだったらそういう曲を歌いそうだなと思って。でも、そのアユニのイメージをこれだけポジティブな歌詞に変えてきたので、僕はびっくりしましたね。だいぶ今までのアユニと今回は違うなっていうのが、僕の印象です。

――田渕さんは歌詞の制作には当然携わっていないと思うんですが、いちプレイヤーとして曲や歌詞を見て、どんなふうに今作を捉えていますか?

田渕:やっぱり今回の4曲の中だと「生活革命」が一番びっくりしました。聴いてドキドキしました。キュンキュンきました。

――身近でアユニさんを見ているお二人がキュンキュンしているっていうのがいいですね。そこに刺さっているっていう。

田渕:こういう恋愛の歌詞って、自分に重ねたり、共感の仕方は人それぞれだと思うんですけど、私は自分の経験に重ねてっていうのは全くなくて。「アユニー! 抱きしめたい!」ってなりました(笑)。

アユニ:抱きしめられたいです(笑)。

松隈:だって、アユニが、普段から〈おはよう〉とか言わなそうやからいいじゃない。「おはよう」とか「ただいま」って言わんやろ?

アユニ:言わないです(笑)。

田渕:(笑)。

――今の話を聞いてもわかるんですが、今回の作品が『THUMB SUCKER』に比べてある種の聴きやすさ、親しみやすさを持ったものになっているのに、ちゃんとアユニさん主体の発信という裏付けがあるんですよね。簡単に言うと、やらされてる感は全くない。

松隈:そうですね。おっしゃる通り、ある程度はイメージしていたんですけれど、PEDROだとアユニが歌って、田渕さんのギターが鳴ったときに、ドカーン! とそのイメージの上に行くんですよね。いい意味で僕の最初のイメージと全然違うものができてます。

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