『CDTV』は、新番組でどう個性を出していくのか ポイントは“ライブの深掘り”?

 また深夜の『CDTV』が『CDTVサタデー』として存続することの効果にも注目したい。本家のほうもそのまま続くことで、両番組の連携が可能になるからである。

 先ほども書いたように、本家の『CDTV』はランキングに特化した番組として独自のポジションを築いてきた。

 番組が始まった1993年のあたりは、新たな平成の音楽番組の潮流が見え始めた頃である。その担い手であった『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』(1994年放送開始/フジテレビ系)はダウンタウンをMCに配し、ゲストアーティストとのフリートークの面白さを前面に出すことで人気を集めた。とんねるずの石橋貴明と中居正広をMCに迎えて1996年に始まった『うたばん』も同様である。

 だが『CDTV』は、いわばその真逆を行くことで個性を出した。MCはオリジナルのCGキャラクターが務め、独自集計に基づいた週間ランキングを順に発表していく。アーティストの歌やインタビューのコーナーなどもあったが、音楽情報番組に徹した点が新鮮だった。そのあたりは、かつて同様のランキング形式で『ザ・ベストテン』(1978年から1989年まで放送)を成功させ、音楽番組の歴史を変えた局ならではでもあっただろう。

 今回、2つの番組の連携についてその詳細はまだ明らかではない。だが本家の『CDTV』が培ってきたデータ力は、出演アーティストへの視聴者の理解度を深めるうえで役立つだろう。そしてそれによってライブステージの楽しみかたの幅も広がるはずだ。 近年、生放送の音楽番組は、ますます企画性重視の傾向を強めつつある。

 『ミュージックステーション』はまだ昭和だった1980年代に始まった音楽番組らしく出演歌手が自分の新曲を披露するスタイルを貫いてきたが、最近はそれだけでなくたとえば「夏うたランキング」や「中島みゆきトリビュート」のような企画ものがかなり目立つようになっている。また一夜限りのコラボ企画なども増えてきた。

 それらの企画が目指しているのは、そこでしか見られないスペシャル感、ひいてはライブ感を演出するためだろう。一方『CDTVライブ!ライブ!』は、そうした傾向を共有しつつも、よりシンプルにライブそのものに活路を見出そうとしているように思える。言い換えれば、直球勝負。どんな深掘りされたライブの魅力を私たちに見せてくれるのか、まずは初回4時間スペシャルに期待したい。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント』(光文社新書)、『ジャニーズの正体 エンターテインメントの戦後史』(双葉社)、『木村拓哉という生き方』(青弓社)、『中居正広という生き方』(青弓社)、『社会は笑う・増補版』(青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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