結成10周年の三代目 J SOUL BROTHERS、『RAISE THE FLAG』はグループの進化とこれからの10年を占う作品に

 また三代目JSBの“進化”にフォーカスした場合、特筆するべき曲はやはり「Rat-tat-tat」だろう。コミカルなダンスがTikTokで火がつき、再生回数2億再生を超えた同曲は、近年の鍵にもなっているバイラルヒットを生み出す要素を持っている。J-POPシーンでは昨年のDA PUMP「U. S. A.」がその例に当てはまるが、このバイラルヒットには従来のセールスプロモーションの結果とはまた違ったヒットを生み出す要因がある。

 「Rat-tat-tat」は、先述のとおり、ネット上のバイラルによって億単位の再生数を記録したわけだが、これには音楽自体が従来の“聴くもの”から“遊ぶもの”へと変化してきていることが大いに関係があるだろう。つまり、これまでは三代目JSBの曲をファンが購入して聴くことで、彼らの音楽が広がっていったのだが、今は音楽が“所有”されるよりもいかに”再生”されるかで世の中に拡散されていく時代になっている。そして、それは音楽を所有するだけに止まらず、ファンに音楽で“自由に遊ぶ”という価値観を新たに提唱することにつながる。その意味で三代目JSBはバイラルヒットという“ポップスの今様”を手に入れることで、音楽体験の在り方の進化をファンに示したといえる。

三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE / Rat-tat-tat (Music Video)

 さらにそのことは、ビヨンセ『コーチェラ・フェスティバル2018』で取り入れたマーチングバンドサウンドのダイナミズムにも通じる「RAISE THE FLAG」や世界的な音楽プロデューサーであるAfrojackとの「SCARLET」のような近年の海外音楽トレンドにも通じるスタイルの楽曲を本作で取り揃えて収録していることにも意味を持たせる。つまり、『RAISE THE FLAG』がバイラルヒットに加えて、ポップスにおける様々なワールドクラスの先鋭的な要素を持つ作品であることの証明となり、それが三代目JSBサウンドの進化という結果に結びつく。そう考えると『RAISE THE FLAG』は冒頭で述べたように三代目JSBのこれからの10年を占うという点で大きな意味を持つ作品として捉えることに違和感はないはずだ。

 三代目JSBは、今後、どのような形で新しい音楽の“遊びかた”を提示してくれるのだろうか?  まずは記念すべき10周年イヤーのこれからに注目したい。

三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE / ALBUM『RAISE THE FLAG』Digest Movie

■Jun Fukunaga
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター。DJと音楽制作も少々。
Twitter:@LadyCitizen69

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