渋谷すばる、ライブで伝えた自らの音楽に対する決意 『二歳』ツアー幕張公演を振り返る

渋谷すばる『二歳』ツアー幕張公演振り返る

 渋谷すばるが1stアルバム『二歳』を携えた全国ツアー『渋谷すばる LIVE TOUR 2020 「二歳」』を開催した。筆者が観たのはツアーの初日、幕張メッセ公演。ドームツアーを何度も開催しているアイドルグループのメインボーカリストだった彼にとって、2万人規模のライブはお手の物のような気もするし、「アルバム1枚だけでいきなりアリーナ公演とか、普通じゃないだろ」とも思えるが、ステージに登場した渋谷は、文字通り普段着のままで“この場所、この時にしか歌えない歌”をあらかさまに表現してみせたのだった。

 ツアーの初日、“#渋谷すばる”はTwitterのトレンド入りし、SNSではグッズ販売に関する情報が飛び交っていた。この日の関東地方は季節外れの大雨と強風に見舞われていたが、幕張メッセには開演数時間前から観客が集まり、準備は万全。スタンディングの会場には「渋谷すばるの最初のライブをこの目で観たい」という期待で満ちていた。

 開演前のBGMは、オーティス・ラッシュ、サニー・ボーイ・ウィリアムソンIIなどのブルースナンバー。会場の照明が落とされ、打ち込みのSEとともについにライブがスタート。バンドメンバーの塚本史朗(Gt)、なかむらしょーこ(Ba)、Shiho(Dr)、山本健太(Key)、そして渋谷が姿を見せた瞬間、大きな拍手と歓声が沸き起こる。渋谷がギターをかき鳴らし、最初の楽曲「ぼくのうた」がはじまる。〈歌を歌わせて頂けませんか〉というサビに入ると同時にスクリーンに表情が映し出され、歓声がさらに大きくなる。

 さらに楽曲制作(宅録)の様子をテーマにした「アナグラ生活」、切ないラブソングかと思いきや、“パクチーが嫌い”というオチが付く「来ないで」、渋谷のブルースハープが鳴り響くアッパーチューン「トラブルトラベラ」(ベース、ドラムなどのソロ演奏にも大きな歓声が送られていた)、「幕張にお集まりの人間のみなさん!」という(ザ・クロマニヨンズへの愛が感じられる)煽りから始まった「ワレワレハニンゲンダ」などアルバム『二歳』の楽曲を披露。ブルース、ロックンロールを軸にしたシンプルなバンドサウンド、そして、まったく飾ることなく、どこまでも真っ直ぐで赤裸々な歌。冒頭から“渋谷すばるの音楽の在り方”をはっきりと示すステージが繰り広げられる。ギミックや演出に頼らず、爆音で音楽を叩きつけるスタイルも渋谷らしい。

 「どうもどうもどうも。後ろのほう、見えてますか。こちらは一切見えてません」と話し始めると、「お帰り!」「すばる!」という声が飛ぶ。ファンにとっても渋谷とっても待ち望んだライブであることは間違いないが、お互いの雰囲気はとても自然で、「とにかくこの場所を楽しみたい」という思いが感じられる。

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