有安杏果、ソロで発揮する独特な音楽センス ももクロ時代との対比から考える

 また、[Alexandros]の川上洋平のような人気アーティストから、音楽ファンに高く評価されている小谷美紗子など楽曲提供アーティストの幅も広い。メジャーデビューする前のOfficial髭男dism・藤原聡も楽曲提供している。提供作家は有安杏果が選びオファーしたアーティストばかりだ。彼女が普段から様々な音楽を聴いていることがわかる。

 提供楽曲でも、それぞれ歌唱や表現方法を変えている。小谷美紗子が提供した「裸」では小谷の歌い方にも通ずる歌唱方法、川上洋平が提供したロックナンバーの「Drive Drive」では荒々しく歌うことで楽曲のかっこよさを表現した。各曲をインプットして自身のものにしていることがうかがえる。多種多様な楽曲を歌唱した経験も、前述した力を抜いて歌詞の言葉をしっかりと伝える歌い方に繋がっているのだろう。

 2曲の新曲では、以前にも増して作詞作曲の個性が色濃く出ている。杏果だからこその表現方法が多い。〈24度目の春 来ました 何かのせいにするのは もうやめた〉という「サクラトーン」のフレーズや、「虹む涙」の〈ため息くらいそりゃ出るよなぁ〉というフレーズからも現在24歳の有安杏果の等身大の立場と気持ちが伝わってくる。2曲とも悩みや後悔を感じる暗い一面も垣間見得るが、それでも最後には前向きに進んでいこうという結論に向かう歌詞だ。それが有安杏果の現在の心情と重なっているように感じるため、歌詞の内容に共感したり感情移入してしまう。

有安杏果 – サクラトーン MV【Rec ver.】 Ariyasu Momoka -Sakura tone MV【Rec ver.】

 メロディの作り方も独特だ。基本的に日本語で歌のメロディを作る場合、一つの音符には一つの“文字”を乗せることが多い。しかし有安杏果は一つの音符に一つの“単語”を乗せるようなメロディを曲に含ませるのだ。サザンオールスターズのように日本語の発音を英語に近づけるような歌唱方法で一つの音符に一つの単語を乗せる方法もあるが、それとは違う方法を使っている。例えば「サクラトーン」の〈24度目の春来ました〉というフレーズでは「24度目」の部分を早口で詰め込むようにメロディに乗せている。「虹む涙」でも独特なメロディがある。〈新しい靴汚れた〉〈改札から出てみたら〉〈高層ビルよりも〉というフレーズは、歌というよりも台詞に近いその違和感が良い意味で引っかかりを作り印象に残るのだ。

 その独特なメロディは、有安杏果の伝えたいメッセージをより生々しく聴き手に届け、結果として他のJ-POPとは違う個性が生まれた。新曲から滲み出るシンガーソングライターとしての個性と魅力。それはアイドル時代を知らなかった人を魅了する個性であり、アイドル時代からファンは彼女の新しい一面を再発見できる個性に思う。

■むらたかもめ
オトニッチというファン目線で音楽を深読みし考察する音楽雑記ブログの運営者。出身はピエール瀧と同じ静岡県。移住地はピエール中野と同じ埼玉県。‬ロックとポップスとアイドルをメインに文章を書く人。
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