「12 Sweet Stories」第10弾リリース「アニバーサリー」インタビュー
FUKI、「アニバーサリー」に込めた背中を押すメッセージ 「思いを伝えることでその日が記念日になる」
歌にどんな表情をつけるべきか
ーー今回はバッハのコラール「主よ、人の望みの喜びよ」がフレーズサンプリングされています。そのアイデアはどの段階で出たんですか?
FUKI:プリプロのときでした。有名なクラシックの曲をサンプリングするのはどうかっていうスタッフからの提案があり、「あぁ、いいかもね」ってみんな賛成して。ただ、「じゃあどの曲にしようか?」っていうところで、また悩みまくり(笑)。私もいろいろ考えたけど、ありきたりなカノンくらいしか思い浮かばなかったんですよね。結果的にはSHUちゃんが頑張っていろいろ探してくれて、このバッハのコラールになりました。
ーーきっと誰もが一度は聴いたことのある曲だと思うので、いいフックになっていると思います。
FUKI:うん。パッと聴いたときに、「あれ、この曲知ってる」って思っていただけるんじゃないかなと思います。こういう試み自体、私は初めてだったので、できあがったアレンジを聴いた時は感動しちゃいましたね。「おー!」って。
ーーで、そんなアレンジが固まった上でのボーカルレコーディングはいかがでしたか?
FUKI:いつもはだいたいピアノ1本のデモで歌入れをすることが多いので、逆に難しかったです(笑)。シンプルなトラックで歌うことに慣れちゃってるんでしょうね。
ーーアレンジが歌の表現を導いてくれることもありそうですけどね。
FUKI:そうそう。私もそれを想像していたから、きっといつもより歌いやすいんだろうなって思ってたんですけど、どうしても歌がアレンジに引っ張られちゃうというか。いやいや、もちろん引っ張られても全然いいんですけど(笑)、私の場合は引っ張られすぎちゃうんですよ。だからけっこう何回も歌いましたね。あ、でも、大きな違いもあったかな。私の場合、いつもは歌詞カードに細かくいろんな書き込みをしてレコーディングに臨むんですよ。「ここは上がる」みたいな感じで矢印を書いたり、込めるべき感情の方向性を文字で書いておいたり。でも、振り返ると今回の曲はその書き込みが少なかったような気がします。普段のように書き込んだものを目で確認しながら歌わずとも、音がちゃんと導いてくれるというか。そういう意味では歌いやすかったのかもしれないですね(笑)。
ーー実際の出来事から導かれた歌詞だけあって、ボーカルにもものすごく感情がこもっていますよね。いつも以上にグッとくる歌声だと思います。
FUKI:レコーディング中、ハリネズミちゃんのことを思い出して何度も泣きそうになってましたからね。「泣くなー!」「はいッ!」って言いながら歌いました(笑)。今回は2度繰り返すサビがワンセットになっているので、前半と後半で表現に起伏をつけたいなっていうこだわりはありましたね。2回目のサビでよりグッとくるように。
ーーひとつのサビの中でも、前半と後半で表情が大きく変わりますからね。そこも難しそうですよね。
FUKI:はい、まさに。後半のちょっとフロウっぽいメロの部分は比較的ニュアンスが出しやすいんですけど、問題は前半の方で。言葉数が少ない分、どう歌うべきなのかをすごく考えました。ここ最近、いつも歌録りに時間がかかったって言ってる気がしますけど(笑)、今回もめちゃくちゃ時間かかりました。最長記録更新です(笑)。
ーーいつも思うんですけど、ご自身から出てきたメロなのにそこまで苦戦するのはどうしてなんでしょうね?
FUKI:ね(笑)。なんでか毎回苦労してしまいますね。自分から出てきたメロだから、上手に歌うことはできるんです。でも、音源になったときの聴こえ方というか、ニュアンスの部分でどうしても悩んじゃうんですよね。キー的な部分でもね、高いところはすごく歌いやすいんだけど、そのままつるっと歌ってもおもしろくないから、どんな表情をつけるべきかなっていつも考えてしまうし。毎回、ほんとにそこが課題ですね。
ーーそこはやっぱり歌に対して求めるものが作品ごとに上がっているからなんでしょうね。
FUKI:そうだと思います。前はガガッと感情だけ込めて歌っていればOKだと思っていたけど、今はただ感情を込めるだけじゃ納得がいかないというか。そこはプロデューサーであるEIGOさんの判断基準も上がってるし、私自身のこだわりもより強くなっているからだと思いますね。デビューからの約5年で、そこは徐々に、でも確実に変化してきているところなんじゃないかな。
ーーラストのサビではちょっとだけ節回しを変えて歌っているところがありますよね。そこが個人的にはすごく好きで。曲を聴いていると、そのポイントを待つ感覚があるというか。
FUKI:あぁ、良かったです。そこを待って聴いてくれていた人が「キター!」ってなってくれたらいいなと思っていたので、そういう感想はうれしい(笑)。そのポイントのためにその曲を聴くみたいな感覚が自分にもあったりするので。
ーーさらに曲の最後には、コラールに英語の歌詞を乗せたパートも用意されていて。いいエンディングですよね。
FUKI:普通に終わるのもアリだとは思ったんですけど、せっかくプロジェクトの集大成的な意味を込めて“アニバーサリー”をテーマに曲を作ったんだから、最後に何かもうひとつ要素を入れたいよねっていうことになって。フェイクを入れてみたりとかいろいろ考えた結果、バッハの曲をそのままなぞって歌っちゃおうってことになりました。ここ目当てに最後までじっくり聴いてもらえたら嬉しいですね。
ーーちなみにこの曲でサンプリングされたバッハのコラールは卒業式で流されることも多いそうなんですよ。そういう意味では、大切な友人のことを思う歌としても聴けるような気がしたんですよね。
FUKI:うん、そうですね。卒業っていうのは人生においても大きなアニバーサリーだと思うので、みんなと一緒に過ごした大切な日々のことを思い出すきっかけにしてもらえれば。そして、まだ学校に通っている人たちは、そのかけがえのない時間をより大事にしてもらえたらいいですね。私は学生時代をほんとにムダに過ごしてしまったタイプなので(笑)、そこは声を大にして言いたいです。もう一回やり直したいと思ってもムリだからね! って。
ーーでは最後に、次回の予告を。
FUKI:クリスマスとバレンタインデーでやり切った感が自分の中では強いんですけど(笑)、さらに思いを振り絞っていい曲を作りたいなと思っています。どんな曲がいいかなー。もう次が3月で、いよいよこのプロジェクトも終わりが見えてきましたからね。早い(笑)。だから、みなさん。毎日を大切に過ごしてくださいね、「アニバーサリー」を聴きながら(笑)。
「12 Sweet Stories」インタビュー
・第1弾「KISS.」
FUKIが語る「KISS.」への思いと12カ月連続リリースへの挑戦「大切なのはやっぱり“今”」
・第2弾「Our Love Story」
FUKIが語る、「Our Love Story」で得たものと「12 Sweet Stories」の充実
・第3弾「Long Distance」
FUKI、“遠距離恋愛”テーマの「Long Distance」で挑戦したこと「頑張る勇気を持ってもらえたら」
・第4弾『COVER FOR LOVERS VOL.1』
FUKI×TEE「12 Sweet Stories」特別対談 二人が語る「ベイビー・アイラブユー 」とラブソング観
・第5弾「オリオン」
FUKIが新曲「オリオン」を通して見つけた、“自分らしい歌”
・第6弾「FIRSTLOVE」
FUKI、“初恋の日”に贈る楽曲「FIRSTLOVE」で描いた“最初で最後の恋”
・第7弾「LOVE and CRY」
FUKI、リアルな恋愛観を表現した“お揃い”の一曲 「LOVE and CRY」インタビュー
・第8弾
FUKI、“クリスマスイブ”に「ラストシーン」を歌う理由 「向き合いたくないラストに目を向けて」
・第9弾
FUKI×SHUが語り合う、制作の中で生まれた信頼関係とカバーに臨む思い「毎回新しい扉が開く感覚がある」
■リリース情報
「アニバーサリー」
発売:2020年2月5日(水)
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