スガ シカオ、“ヒトリシュガー”に溢れた音楽家としての本能と親密なコミュニケーション
中盤のハイライトは、みんな大好き「Progress」。正確にはkōkua名義の曲だが、もはやスガ シカオのライブ定番として欠かせない。手拍子と拍手でこの日一番の盛り上がりを見せた後、中盤のお楽しみ「カバーコーナー」へ。地方の会場では観客にカードを引かせて曲を決めていたらしいが、今日は人が多すぎるため「あらかじめ2曲選んできました」。しかし歌い始めたらやめられない止まらない、結局4曲歌ってしまったのも、音楽家としての本能だろう。曲はサザンオールスターズ「慕情」、水前寺清子「三百六十五歩のマーチ」、そしてLittle Glee Monster「ヒカルカケラ」、嵐「アオゾラペダル」のセルフカバー。どれもワンコーラスほどだが、リトグリや嵐とのエピソードを交え、リラックスして歌う様子がいかにも楽しげ。これも「ヒトリシュガー」ならではの、オーディエンスとの親密であたたかいコミュニケーション。
ステージにドラムセットとキーボードが運び込まれると、会場内のテンションが一気に高まる。東京公演のみのスペシャルゲスト、まずは森俊之(Key)と共に「発芽」を、続いて沼澤尚(Dr)を迎えて「アストライド」を。スガのデビューから数年を支えたバックバンド、The Family Sugarのメンバーでもあった二人との演奏は、言うまでもなくベストマッチング。アコースティックに合わせたメロウで繊細、ストイックで大人なプレイが素晴らしい。その「発芽」と、続けて歌った「ヤグルトさんの唄」は、『ACOUSTIC SOUL 2』収録の新曲。「ヤグルトさんの唄」はスガのお茶目な母親のことを、ユーモアと愛を込めて歌い込んだありがとうソングだが、かつてここまで素直な曲がスガ シカオにあっただろうか。時は流れ、良い意味で、スガ シカオも変わってゆく。
後半は、待ってましたのヒットチューンで一気にスパート。ずっと座っていたからそろそろ立って手を振り上げたかったんだよと言わんばかりに、総立ちの観客のノリも最高潮。イントロだけで大歓声が湧き上がった「ストーリー」は、バンドだろうとアコースティックだろうとその盛り上がりに上下なし。広いLINE CUBE SHIBUYAがライブハウスに見えてくる。翌26日、デビュー23年の記念日を迎える前祝いとも言うべき、それはそれは親密な2時間半のパーティー。
「24年目もがんがん飛ばしていきます。これからもよろしくね!」
残念ながらその後のツアー日程は、やむをえない社会事情の変化により流動的になってしまったが、これまで積み上げてきた「ヒトリシュガー」の価値は変わらない。早期のツアー再開を願いつつ、今は楽しい記憶をかみしめよう。スガ シカオの2020年は始まったばかり。お楽しみはこれからだ。