ジェニーハイはバンドの理想形 高いミュージシャンシップが実現する音楽×エンタメの充実

ジェニーハイはバンドの理想形

 特筆すべきはやはり、メンバー5人のプレイヤビリティの高さ。複雑かつ多様なリズムを正確に刻む小籔、ピック弾きと指1本奏法を使い分けながら骨太のベースラインを放つくっきー!によるリズムセクション。さらに鋭利なギターカッティングでバンドを牽引する川谷、抜群の演奏技術に支えられたフレーズ(どんなに速いパッセージでも、すべての音がクリアに聴こえる)で楽曲に彩りを与える新垣の音が重なるアンサンブルは、きわめてスリリングだ。

 中心にあるのは、イッキュウの歌。tricotではギターボーカルを担当している彼女だが、このバンドでは基本的にハンドマイク。この複雑なメロディを上品に描き出すボーカルからは、シンガーとしてのポテンシャルの高さが伝わってきた。

 中盤では、“即興曲作りコーナー”も。観客からお題を募り、その場で曲を作るという、まるで音楽バラエティ番組のようなコーナーだ。まず川谷がコードを弾き、それに合わせて小籔とくっきー!がリズム、新垣がピアノのフレーズを乗せ、イッキュウが即興で歌を乗せるという趣向だが、出来上がる曲が驚くほど高品質。全員のミュージシャンシップの高さ(特に小籔のリズムに対する感度)に驚かされた。

中嶋イッキュウ
川谷絵音
新垣隆
くっきー!
小籔千豊
アイナ・ジ・エンド
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中嶋イッキュウ
川谷絵音
新垣隆
くっきー!
小籔千豊
アイナ・ジ・エンド
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 ライブ後半では、このバンドが持つ多彩な音楽性を実感できるシーンが続いた。“やる気なくてもよくない?”と訴えかける「グータラ節」、鋭利なリズムアレンジと抑制の効いたメロディが融合した「シャミナミ」、シックな響きをたたえた歌声が心に残る「プリマドンナ」、東京の夜景の映像とともに披露された、切なくも美しいミディアムチューン「東京は雨」。バンドスタイルの楽曲は、ほとんど演出を施すことなく、5人の演奏をそのまま聴かせるだけなのだが、それがとてつもなく面白く、興味深い。“バンド、現代音楽、お笑いを本職にしているメンバーが、前衛的にしてポップな楽曲を演奏して、歌う”ということ自体が、きわめて質の高いエンターテインメントになる。これこそがジェニーハイのライブの核だろう。

 「不便な可愛げ feat アイナ・ジ・エンド(BiSH)」では、今回のツアーで初めてアイナ本人が登場し、貴重なコラボレーションが繰り広げられた。ジャンルやシーンを超えた活動を続けている両者のセッションによって、フロアの熱気は一気に引き上げられた。「リハーサルのときに“こんなにカッコイイんだ”と思って、緊張してきちゃって。でも、ライブが始まると、みなさん、いつも通り面白い。こんなバンドはいないですよね」(アイナ)というコメントも、ジェニーハイの魅力を端的に評していたと思う。

 デビュー曲「片目で異常に恋してる」で本編は終了。アンコールでは新曲「ジェニーハイボックス」、切なくも愛らしいラブソング「まるで幸せ」を披露し、ツアーの最後を飾った。極めて音楽的であり、メンバーのキャラ立ちも抜群。テレビ番組の企画モノから始まったジェニーハイは、じつはバンドの理想形であり、この先の音楽シーンを先取りした存在なのかもしれない。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

ジェニーハイ公式サイト

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