「Haunter」インタビュー

トラックメイカー/シンガー yonkeyが語る、他者とのコラボで音楽を作る喜び 愛用機材の紹介も

 現在、日本のインディペンデントシーンにおける最重要人物の1人であるAAAMYYYをフィーチャーし、<LINE RECORDS>から、シングル曲「ダウナーラブ」でデビューを果たした22歳のトラックメイカー/シンガーのyonkeyが、早くも2ndシングル「Haunter」をリリースする。

 サンダーキャットや向井太一、ケロ・ワンなど多彩なゲストミュージシャンを迎えたデビューアルバム『Play.Make.Believe.』が話題となっている、大の日本好きアーティスト、Ace Hashimotoをフィーチャーした本作は、メロウでほんのりダークな色合いが特徴だった「ダウナーラブ」から一転、ポップでカラフルなメロディと、あたたかいグルーヴが心に染み入る楽曲に仕上がっている。昭和の歌謡曲をこよなく愛し、トラディショナルなソングライティングをベースに最先端のエレクトロ~ヒップホップを織り交ぜたyonkeyの楽曲は、今後ますます注目を集めること必至だ。

 ソロ名義での活動と並行し、高校時代の友人と結成したロックバンド・Klang Rulerでも精力的に作品を作り続けているyonkey。今回リアルサウンドでは、彼がトラックメイキング~ソングライティング時に愛用している機材類を紹介してもらいつつ、音楽に目覚めたきっかけやコラボレーションの楽しさ、歌謡曲への思いなどをたっぷりと語ってもらった。(黒田隆憲)

“核”はちゃんと持っていたい


ーー2歳の頃からクラシックピアノをやっていたそうですね。

yonkey:物心がついたときにはスクールに通ってピアノを弾いていました。始めた当時は、周りの幼なじみの子たちもやっていたんですけど、みんな辞めてしまって最終的に残ったのは僕だけでしたね。続けていくうちにどんどん楽しくなっていって、そのうちコンクールにも出るようになって。

ーースクリレックスを聴いてトラックメイキングに目覚めたそうですが、それまではずっとクラシックをやっていたのですか?

yonkey:途中からポップスに移行して、歌謡曲のジャズアレンジなどを弾いていました。基本的に楽譜を見て演奏しているだけで、曲作りみたいなことは全くやっていなかったんですけど、スクリレックスとかダブステップとか、その辺りの音楽を聴いた時にとにかく衝撃を受けたんです。最初、あまりの情報量に頭が追いつかなかったんですよ。それまで聴いていた、いわゆるJ-POPとは全く違う種類の音楽じゃないですか。「これは一体、どうなっているんだろう?」「この音はどうやって鳴らしているんだ?」と。それを、パソコンの音楽ソフトで解明しようと思ったのが18歳の頃でした。

ーー「作りたい」と思うより、「仕組みを知りたい」の方が先だったんですね。

yonkey:実はスクリレックスに出会う前に、海外のヒップホップにハマって毎日YouTubeでディグっていた時期もありました。エミネムやリル・ウェインなど、当時最先端のラッパーに夢中になっていたんです。言葉が理解できないのに「この曲、なぜか感動するな」とか、「この曲は情熱的だ」とか、言語以外で伝わってくることに感銘を受けたんです。邦楽はまず歌詞が先に来るから、どんな歌を歌っているのか、どんな感情を表しているのかがすぐ入ってきますよね。洋楽はそれがないぶん、音の響きや曲の展開などからドラマを想像できるのが面白いなって。

ーー映像にも興味があって、自分で動画撮影もしていたそうですね。

yonkey:小さい頃から映画が好きで、『レオン』とかリアルタイムではない作品を、お父さんに勧めてもらって観ていました。「暗殺者とかカッコいいな」みたいな気持ちって、中学生くらいだとあるじゃないですか(笑)。それで、中学生の頃に初めて買ってもらったスマホで映画を撮ってみよう、と。クラスのカッコいい人をキャスティングして、駐車場とかで撮影していましたね。

ーーバンドを組んだのはいつ頃ですか?

yonkey:音楽を作り始めた18歳の頃、スクリレックスと同じくらいロックバンドも好きになってOasisやThe Beatlesをよく聴いていました。ビートルズはもちろん、オアシスも僕が聴き始めた頃には解散していたのですが、何かの機会に「Don't Look Back In Anger」を聴いてめっちゃ感動して。「俺もバンドやりたい!」と思って近所の幼なじみを集めて結成したのがKlang Rulerでした。同じ時期にUVERworldの武道館ライブを観にいったのも大きかったですね。

ーーKlang Rulerでは、どんな音楽をやりたいと思っていたのですか?

yonkey:今もそうなんですけど、僕はあまりジャンルとかにこだわりがなくて。ロックバンドだけ聴いてきたわけでもないし、クラシックもヒップホップも聴いてきたからこそ、あまりジャンルの壁とか意識せず、「カッコよければそれでいいじゃん」というマインドでいられたのかもしれないですね。

ーーバンドをやりつつ、一人でトラックメイキングにも勤しんでいたと。

yonkey:18歳でスクリレックスに衝撃を受けて以来、音楽を作りたいという衝動が止まらなくて。一人でいる時はとにかくトラックメイキングを勉強して、みんなといるときはバンドでギターやキーボードを演奏するという、まさに音楽漬けの日々でしたね。高校では先生も応援してくれて、「ノートPCを学校に持ってきていいよ」って言ってくれたので、みんなが受験勉強している中一人ヘッドホンして教室でも曲作りをやらせてもらえたんですよ。

ーー素晴らしい環境ですね(笑)。

yonkey:大学受験は途中まで勉強していて一応合格圏内にいたんですけど、音楽を勉強したい気持ちが強すぎて専門学校へ行くことにしたんです。親は最初反対していたんですけど、頭を下げて頼み込んでなんとか了承を得ました。今はすごく応援してくれていますね。他のメンバーも同じように、それぞれの親を説得してみんなで専門学校へ通うことになりました。若かったのもあるけど、迷いとか葛藤は全然なくて。「今やらなきゃ一生後悔するでしょ!」と思って突っ走りましたね。

ーートラックメイカーとしての活動とKlang Rulerとしての活動の両立について、どんなふうに考えていますか?

yonkey:最初の頃は全く考えてなかったというか、「トラックも好きだしバンドも好きなので両方やっちゃえ」みたいに、全く別物だと思って続けていたんですが、結構共通点があることに気がついたんです。バンドの方にも僕のトラックメイキングの感覚が反映されるようになってきたし、トラックメイキングの方にもバンドっぽい要素が増えてきて。いつの間にか境界線もなくなっていましたね。例えばトラックメイキングでもリリックにこだわったり、バンドでソングライティングしている部分を活かしたりすることで、バンドもやっている必然性も出てくるなと。

Klang Ruler - The Way You Are (Official Music Video)

ーーなるほど。

yonkey:ただ、そうなってくるとKlang Rulerがロックバンドのイベントになかなかブッキングしてもらえないし、呼ばれたとしても「このラインナップの中で、自分たちはどんな位置づけなのか、どんな風に見せていくべきか」を今まで以上に考えるようになって。そこは悩ましい部分であり、今後の課題だとも思っていますね。ジャンルにとらわれず、カテゴライズされない音楽をやっていくにしても“核”はちゃんと持っていたいというか。サウンドコンセプトを統一して、「yonkeyっぽいな」と思わせるようにしたいです。

ーー今の段階では、自分の楽曲のどのあたりに「yonkeyっぽさ」を感じていますか?

yonkey:トラックメイキングの部分でいうと、音色も豊富で、例えばオルゴールとかそういう可愛くてキラキラした音が鳴っているところですかね。バンドでは、サウンドは海外っぽくても日本語の歌詞が響くようなメロディをチョイスしているところなのかなと思います。

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