あさぎーにょ、WEAKEND WALKER、Vaundy……YouTube活用で注目高まる次世代表現者
新しい音楽を知るきっかけがYouTubeからであることが増えた昨今。映像必須の楽曲表現にいかにこだわるかがヒットの要素として見逃せなくなった。表現者サイドの注目ポイントは、いかにしてYouTube上の“次の動画”としてレコメンドされていくかが大事な時代だ。このレコメンドこそがファン予備群であるリスナーと楽曲との接点となるのだ。パソコン上では右側に、スマホ上では下に表示される独自のアルゴリズムによって提案されるオススメ枠。あなたもYouTube“次の動画”から新しいアーティストとの出会いに感動したことはないだろうか。
そんななか、Eve、ずっと真夜中でいいのに。、秋山黄色、YOASOBIなどのアーティストに顕著なように、イラストと連動したミュージックビデオの存在に注目が集まっている。イラストレーター=絵師が映像を手がけるというボカロ文化からの影響も大きいのだが、楽曲表現においてビジュアル展開の重要性は上がってきている。それと同時に楽曲カバーなどで注目を集め、YouTubeチャンネルをファンとのコミュニティーの場としてエンゲージメントを高めファンダムを構築するスタイルも広がっている。さらに、YouTuber的発想から生まれた、Vlog(ビデオブログ)と物語を融合した今までにない“短編映画”的な映像作品も誕生している。
パワーゲームな宣伝が通用しづらくなった現在。作品ファーストでYouTubeを活用した楽曲プレゼンテーションから生まれた最新事例。現在進行形で注目すべき、2020年の活躍が楽しみな次世代表現者を紹介しよう。
動画クリエイティブの評価高まる、あさぎーにょ
シンガー志望で上京し、オリジナリティを模索する過程でYouTubeへの動画投稿をきっかけに注目された、あさぎーにょ。今では日本を代表するYouTuberのひとりだ。米津玄師、Official髭男dism、RADWIMPS、あいみょんなどの歌ってみた動画や、ファッション、メイク、旅 動画が人気で、現在YouTubeチャンネル登録者数64万人を突破。Instagramのフォロワーも23万7千人というインフルエンサーである(どちらも1月20日現在)。投稿する作品の色使いがカラフルで、独特な世界観を放つコンテンツとしてのクオリティが非常に高い。
自身がプランナーとして参加するコンテンツスタジオ・CHOCOLATE Inc.が映画会社SPOTTED PRODUCTIONSと共同で立ち上げた微電影レーベル「37.1°」による制作で、昨年末12月27日にYouTube上で公開した短編映画動画『もう限界。無理。逃げ出したい。』が370万再生を突破するなど大きな話題となった。
日常的な動画であるVlogと物語を融合した今までにない新しい作品として、ITや広告業界含め次世代を感じるクリエイティブが評価された。結果、主題歌である「have a nice day」にも注目が集まった。音楽シーンでいえば、ライフスタイルを提案するシンガーソングライター的表現のアップデートといえるかもしれない。ラジオスター、ビデオスターならぬ、YouTubeスターの誕生だ。なお、自作もする彼女だが本作の詞曲は、元Awesome City Clubのマツザカタクミ、曲はコライトで、クラブミュージック界隈にも強いSASAKRECTのmaeshima soshiが参加している。歌声の憂いを含んだキュートさはもちろん、エレクトロでキラキラしたトラック、シンガロングしたくなるメロディの中毒性の高さが魅力的だ。
ネットネイティブ新世代バンド、WEAKEND WALKER
福岡出身、3人組バンドWEAKEND WALKERにも注目したい。2019年9月19日に結成されたばかり、今年1月15日に初作品「DREAM EATER」を配信限定でリリースした生まれたてのニューカマーだ。まったくのノンプロモーションながらiTunesチャート25位にランクイン。これまでTwitterやYouTube、TikTokでの人気曲のカバーをメインに、リスナーを獲得してきたSiN(Vo)、teppe(Gt)、taichi(Ba)によるドラムレスのクリエイター集団だ。現在は上京し、ルームシェアしながら創作活動を日々行っている。YouTubeでチャンネル登録者数229万人を超える爆発的人気を誇るマルチクリエイター、コバソロにもカバー動画でフックアップされコラボレーションしたことも話題だ。
注目すべきは初作品「DREAM EATER」の動画やアートワークを、人気イラストレーター焦茶が手がけたことだろう。ポップながらも毒っ気のあるシューゲーザー風味を感じられる独特な世界観に寄り添った没入度の高いビジュアル展開。さらに、サウンドプロデュースには『アイドルマスター』シリーズやDAOKOへの楽曲提供などでも知られるコンポーザー/DJのTAKU INOUEが参加している。リズムで音楽のジャンルが決まることが多いこの時代に、ジャンルの横断を可能とするためにもドラムレスとなっていることが、類稀なるビートセンスを持ったTAKU INOUEの参加からも伝わってくる。音像へのこだわりが耳に新しい。
なお、20歳になったボーカリストSiN はTwitterにてビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)「Bad Guy」をカバーしている点も気になるところ。モノクロのシルエット動画が印象的な映像はすでに16万再生を突破。他にも、BTS「Boy With Luv」、King Gnu「白日」、Foorin「パプリカ」カバーも人気だ。ライブでの表現力も高く、2020年要注目のネットネイティブな新世代バンドとして推していきたい。