日向坂46が見せた東京ドームへと繋がるプロセス 新たな物語が幕を開けた『ひなくり2019』を振り返る

 日向坂46が12月17、18に幕張メッセ国際展示場4~6ホールにて『ひなくり2019~17人のサンタクロースと空のクリスマス~』を開催した。クリスマスモチーフを強く打ち出すこのライブは、全編を通じてコンセプチュアルであると同時に、今回の会場を効果的に活かしてみせた公演でもあった。

日向坂46

 “プレゼント工場”の美術セットがポップに作り込まれたメインステージで、「キュン」「ハッピーオーラ」を披露しながらライブは始まる。セットの各所でプレゼントを準備するさまをメンバーたちが表現しながらの遊びのある冒頭パートがまず、この『ひなくり2019』のコンセプト性を強く意識させる。

 もっとも、こうしたパートの内にもライブパフォーマンスとしての充実度がみえるのが現在の日向坂46の強みといえるかもしれない。冒頭でメンバーたちが着用するグレーパーカにブルーのオーバーオール衣装は、一見すればクリスマステーマとの相性を重視したスタイリングで、身体の動きをシャープにみせるためのものではない。けれども、袖と襟にあしらわれたファーは手足のポイントを指し示すアクセントになり、小気味よく揃う彼女たちのダンスをむしろ鮮やかに引き立てる。ガジェット感の強い背景のなかで、そこに埋もれない日向坂46の群舞の軽快な強さも印象付けられた。

 メインステージでの序盤パートを終えると、『ひなくり2019』はさらに会場全体を効果的に駆使してみせる。もとより、ライブ会場となった幕張メッセ国際展示場は、フラットな屋内スペースを広く使用できる場所だが、同時にそのフラットさや複数の角柱の存在ゆえに、客席として常に視界良好なわけではない。この広く平面的な客席を巻き込むようにして、日向坂46はパフォーマンスのスポットを会場内に遍在させてゆく。

 富田鈴花と松田好花がアコースティックギターを弾いてパフォーマンスする「まさか 偶然…」などでは、客席内の大きな角柱の各面にスクリーンを施しつつ、その柱を取り囲むように小さなステージを設えることで、視界を遮る障害物であったポイントに彩りのある舞台を築いてみせる。あるいは、セットリスト前半から終盤に至るまでトロッコで長い距離をたびたび移動し、広大な客席のなかにステージを随時登場させてみせる。空のサンタクロースと地上とをつなぐ公演全体の物語の進行と、それらステージの遍在とが絡み合うことで、平面の客席空間は彼女たちのいる“空”をそれぞれに眺めるような趣を生む。

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